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外国人技能実習、貧困軽減に貢献 帰国者1000人超を追跡、課題も指摘 ラタナーヤカ佐賀大研究員

5/9(水) 10:18配信

佐賀新聞

 外国人が日本で知識や技術を習得する「外国人技能実習制度」について、佐賀大学経済学部の客員研究員ラタナーヤカ・ピヤダーサさん(66)が帰国後の実習生への調査をもとに、制度がアジアの貧困軽減につながっているとする研究結果をまとめた。違法な時間外労働などの権利侵害が問題になる中、「制度がアジアに貢献していることを世界に示したい」と成果を英語で書籍化した。

 2014年度から4年間、実習生や受け入れ企業、現地の送り出し機関などに聞き取りやアンケートを実施した。実習生は、中国やインドネシア、タイなど7カ国の千人以上を対象に、実習期間中の状況と帰国後の生活実態まで追跡した。帰国後の生活実態の調査事例はほとんどないという。

 帰国したベトナム人実習生のうち、7割以上が所得水準、食品や衣類の消費、生活状況が「高度に改善した」と回答。ほとんどが日本での研修とは関係ない活動をしているが、ラタナーヤカさんは「日本で得た知識と資金をもとに新たな経済活動を始め、実習生と家族の生活水準は大きく改善している」と分析する。

 また、教育水準や日本語能力が高くない低所得者でも働きながら日本の技術を学ぶことができるという制度の特徴を挙げて「人材育成に貢献している」と指摘。「学んだ知識と、それを経済活動につなげる資金が、貧困を軽減する最も重要な手段となる」と話す。

 日本人の労働倫理に触れたことによる感化についても言及している。中国、ベトナム、カンボジアの実習生の多くが、「時間を守る」「社会の中で他者を尊敬する」などの意識が高まったと答えた。

 一方で、制度が抱える課題も浮かび上がった。日本語能力の低さもあって実習生への技術移転がほとんど行われずに単純労働者として扱われており、制度が日本の労働力不足解消の手段として使われている実情が明らかになった。ラタナーヤカさんは「実態に合わせて設計し直すことが必要」と問題提起する。

 佐賀大のサーリヤ・デイ・シルバ教授も研究に協力し共同で執筆。英語版約300冊は国内外の大学などの図書館に寄贈しており、今夏には日本語版を出版する予定。

最終更新:5/9(水) 10:18
佐賀新聞