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中韓首脳来日、真の魂胆は日本の円 恫喝に屈した韓国、トランプ攻勢に悩む中国

5/11(金) 16:56配信

夕刊フジ

 【お金は知っている】

 今週、東京に集まった中国の李克強首相、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が安倍晋三首相と会う目的が北朝鮮対策だと考えるのは甘い。真の魂胆は通貨スワップ合意だ。中韓とも、日本の円資金がのどから手が出るほど欲しい。

 興味深いのが、韓国経済新聞の社説「醸成されつつある韓日通貨スワップ再開の雰囲気」(5月7日付日本語電子版)である。スワップ協定は韓国側の慰安婦合意の不履行をみて、日本側は交渉を拒んできた。同社説は「南北首脳会談、米朝首脳会談の開催をきっかけに日本国内で『ジャパンパッシング』に対する懸念が強まり、日本が通貨スワップ再開に前向きな態度を示す可能性がいつよりも高まった」と期待する。蚊帳の外に置かれことを恐れる日本はこの際、韓国との関係改善に努めるだろうと思い込んでいるようだ。日本の通貨当局からの円資金融通を渇望する余りの幻覚なら、ちょっと笑える。

 韓国は昨年10月、中国に頼み込んで人民元とウォンのスワップ協定を結んだが、北京当局によって取引が統制されている人民元は使い勝手が悪い。円ならドルやユーロなど主要通貨と自由に交換できる。

 日本を早急にスワップ協定に引きずり込みたいと焦る理由は、米トランプ政権の通商政策にある。韓国は米韓自由貿易協定の破棄をちらつかせるトランプ氏の恫喝(どうかつ)に屈して、「為替条項」盛り込みに同意した。同条項によって韓国は為替市場への介入ができなくなる。外資と輸出依存度が極端に高い韓国は外貨の融通を受けて市場波乱に備えなければならない。

 中国もやはりトランプ攻勢に悩まされている。対米貿易黒字の大幅削減に加え、知的財産権侵害がとがめ立てられて広汎な中国製品に制裁関税が適用される。当局によってがんじがらめに規制されている金融市場の自由化・開放も迫られている。しかも、国内の企業や投資家は規制の網の目をくぐって巨額の資本を外に逃す。「米中貿易戦争勃発」ともなれば、外資を含め動揺が広がり、資本逃避が加速し、通貨危機に陥る不安が生じる。

 グラフは中国の外貨準備を海外からの対中直接投資と対比させている。外貨準備は2015年に急減した後、昨年から徐々に回復しているように見えるが、直接投資との差はわずかである。中国の外準は直接投資を通じて流入する外貨を繰り入れる「上げ底」構造にあり、いわば外資によって支えられている。外資の流入が細り、逃げ出せば、外準が空洞化しかねない。

 もちろん、年間4200億ドル(約45兆7400億円)に上る対外貿易黒字も外準の源泉だが、大半を占める対米黒字は2000億ドルの削減を迫られている。外準が3兆ドル以上あろうと見かけだけで、金融市場危機には対応できそうにない。頼みは日本のカネだ。

 沖縄県の尖閣諸島問題などを受けて13年に失効した日中通貨スワップ協定の再開に向け、北京は李首相訪日に乗じて、水面下で対日懐柔工作に懸命なのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

最終更新:5/11(金) 16:56
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