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映画『フロリダ・プロジェクト』が不幸を不幸として描かない理由

5/11(金) 11:08配信

BuzzFeed Japan

取材前に映画の宣伝会社から紙を渡された。これから取材するショーン・ベイカー監督が何度も聞かれ、飽きている質問のリストと、その回答だった。「あなたはなぜマイノリティーを撮り続けるのか」が最も飽きた質問だという。大手新聞の記者はほぼこの質問を聞くそうだ。
【BuzzFeed Japan / 徳重辰典】

ただ、ベイカー監督の最新映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(5月12日公開)は、“社会問題“と肩肘張らず、万人が見れる、そして見て欲しい映画だ。

「今、厳しい現実を描くことが重要とは思わなかった。その辺りは観客がインスピレーションを得て、映画を見た後にググればいいこと。そういう気持ちになってもらえればいい」

監督は映画について、こう語る。

この映画はかわいくて、かわいくて、ちょっとつらい。

舞台はアメリカ・フロリダのオーランド。「夢の国」ディズニー・ワールドのすぐ側にある安モーテルで暮らす6歳のムーニー(ブルックリン・キンバリー)、そして若い母ヘイリー(ブリア・ヴィネイト)の物語だ。

ベイカー監督にとっては、全編iPhoneで撮影し、トランスジェンダーの娼婦の一日を描き話題となった『タンジェリン』に続く作品となる。

着色料たっぷりの菓子のようなギフトショップに、アイスクリームの甘さ。自然の匂いと冒険譚。そしてフロリダの青い空。まるでインスタグラムのフィルターをかけたような世界の中で、ちょっぴりやんちゃなムーニーは友達とハイウェイ沿いを闊歩し、空き家を探検し、いたずらを仕掛ける。

ディズニーワールドには行けないけれど、ムーニーの毎日は楽しさでいっぱいだ。アメリカの話だが、ゲーム『ぼくのなつやすみ』のように、懐かしい夏の日で満ちている。

母のヘイリーは「ヒドゥン・ホームレス(隠れたホームレス)」と呼ばれる、社会的信用がなく家が借りられないため、モーテル暮らしする人々の一人だ。

もともとストリッパーだったが、客への性的サービスを拒否して、今は水増しした香水を観光客に売っている。

モーテルは一晩38ドル。ひと月計算で考えれば決して安くないが、定職のないヘイリーたちにはここしか居場所がない。

言動は決して褒められたものではないヘイリー。けれど、ムーニーにとってはいつも味方の優しい母親。香水売りだって、子供のムーニーにとっては楽しい日常だ。

そんな親子を、モーテルの管理人ボビー(ウィレム・デフォー)は何かと世話をやく。

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最終更新:5/11(金) 16:47
BuzzFeed Japan