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シンガポール航空の機内食は、なぜおいしいのか?

5/11(金) 20:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

機内食は、あまりおいしくないというイメージがある。だが、シンガポール航空は別だ。

同社は、最も優れた航空会社であることを示す数々の賞を受賞している。こうした賞の審査基準には、機内食も含まれる。エコノミークラスでも。

画像で見る機内食作りのリアルな光景

シンガポール航空の機内食とワインは、種類の豊富さ、クオリティともに抜群。

ネットフリックス(Netflix)のドキュメンタリー・シリーズ「Mega Food」によると、シンガポール航空は初めて機内エンターテインメントや選べる機内食を導入した航空会社で、1日に約5万食を提供している。同社のA380便では、50種類以上のメニューから選ぶことができる。冷凍食品は使われていない。

なぜそのようなことが可能なのだろうか?

(※全ての写真は記事上部のリンクからご覧になれます)

シンガポール航空は世界最大の機内食会社ゲートグルメと契約している。ゲートグルメはスイスのチューリッヒ空港の敷地内に本社を構え、世界中に122のキッチンがあり、年間2億5000万食を調理している。

「メガ・フード」は、リージョナル・エグゼクティブ・シェフのオリバー・フィッシャー(Oliver Fischer)氏をはじめとするゲートグルメのスタッフが、シンガポール航空の機内食を作る様子を取り上げた。

シンガポール航空の機内食ができるまでの詳細と秘密を見てみよう。

ゲート・グルメは30人体制で機内食を用意する。わずか5時間で、満席の便なら1500食を揃えなければならない。洋食、アジア料理、特別メニューがあり、それぞれに調理チームと秘伝のレシピがある。

食文化をしっかり守るために、レシピには香辛料や食材の正確な分量が記されている。1つのミスやレシピを無視することで、1度に33ポンド(約15キロ)もの食材が無駄になってしまうこともある。

調理が最も難しいのは、フィッシャー氏によるとエスニック料理。宗教上の理由で制限される食材もあるためだ。「文化についての深い理解が必要」と同氏は語った。

週平均で約1300ポンド(約590キロ)の牛ヒレ肉、200ガロン(約760リットル)以上のクリーム、9万6150個のロールパンを使う。ほぼ全てのメニューがここで作られている。

シンガポール航空の機内食メニューは、1、2カ月ごとに変わる(地域によって異なる)。新メニューの開発には、1~3カ月かかる。

開発キッチンでは機内と同じコンベンション・オーブンを使い、機内の状況をシミュレートする。唯一シミュレートできないのが機内の低い空気圧。空気圧の変化で、塩味と甘さを感じにくくなる。さらに機内での再加熱も塩分を減少させる。そのため、味付けにパンチを効かせている。

機内食は再加熱ができるもので、かつ衛生的でなければならないと同社マネジャー、ヘルマン・フレイダンク(Hermann Freidanck)氏は語った。つまり完全に調理されておらず、再加熱してもパサパサにならないもの、ただし、生では駄目。絶妙のバランスがあると同氏。最高級の魚のように再加熱に向かない食材もある。そのためシンガポール航空では、魚なら、より脂がのったものを選ぶなどの工夫をしている。

香りも重要なポイント。フォンデュやラクレットはおいしいかもしれないが、香りの問題で機内では出せない。キャベツの香りも不快感を与える恐れがあるため、湯通しする。また色の薄いキャベツを選ぶようにしている。

調理後は、4時間、食べ物が10℃以下になるまで冷ます。衛生上の理由で、急速に冷まさなければならない。細菌は27~60℃で最も急増するためだ。4時間たっても冷めない場合は、処分してやり直す。

1日に使用するカトラリーは7万点。ナイフ、フォーク、スプーンの洗浄には特別なカトラリー用食洗器を使用。洗剤ではなく、ミネラルと水で全てピカピカにする。手作業で使用済みのトレーを分類したり、流れ作業のラインの中で洗ったり、カップ、皿、カトラリーを分類したりする。別のラインでは、洗い終わったカトラリーを次のフライト用に包装する。

盛り付けチームは、料理を正確に同じ量に取り分ける。わずか45分で1500食を盛り付ける。その際、料理はずっと15.5℃以下に保たれていなければならない。

さまざまな理由から、細心の注意を払って取り分ける。まず何よりも、隣の乗客と差があってはならない。また、航空会社には厳しい重量制限があり、1オンス(約28グラム)でも無視できない。さらに、1回のフライトで1500食を作るとなると、1人にスプーン1杯分増えるだけでもコストアップにつながる。

座席によって機内食のパッケージは異なる。エコノミークラスでは、アルミホイルで包み、加熱して、そのまま提供する。ビジネスクラスとファーストクラスでは、ソースとそれ以外は別になっており、分かれた状態で客室乗務員が温める。そして提供する直前に皿に移す。盛り付けはマニュアルに沿って注意深く。

安全のため、客室乗務員は乗客とは異なる食事を取る。機長と副機長も同様で、さらに機長と副機長はそれぞれ別メニュー(2人が同時に食中毒などにならないように)。機長と副機長のメニューは、甲殻類も禁じられている。

[原文:http://www.businessinsider.com/how-airplane-food-is-made-for-singapore-airlines-2018-4]

(翻訳:Ito Yasuko/編集:増田隆幸)

最終更新:5/11(金) 20:28
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