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“多頭飼育・共食い”の環境を生き延びた子猫 保護され幸せに

5/12(土) 14:30配信

sippo

 ペットを過剰飼育するあまり面倒を見切れなくなる「多頭飼育崩壊」が後を絶たない。室内は荒れ放題になり、飼い主は困窮。家庭崩壊へと追い込まれていく--。現在は新しい家族と暮らす1歳のオス猫「しんのすけ」くんも、2017年5月、多頭飼育崩壊が起きた東京都内のとある家庭から救出された1匹だ。

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 現場でもともと飼われていたのは、純血種のアメリカン・ショートヘアのオスとメスが1匹ずつだった。が、不妊・去勢手術を受けさせないまま自然繁殖が繰り返され、猫が増え続けた。飼い主が手術を避けた理由は、「子猫がかわいいことが先にたったから」だった。

 糞尿のにおいが立ち込め、壁や家具がボロボロになった室内から猫たちを救出したのは「NPO法人ねこけん」。これまでに何度も多頭飼育崩壊の現場から猫を救出してきた保護団体だ。今回のケースでは、飼い主本人からの「子猫たちはかわいい。けれど家族は精神的に限界に近づいている。助けてほしい」という要請を受けて、レスキューに向かったという。

 救出時、現場にいたのは46匹。汚れたキッチンの引き出しの中や、壊れた家具と壁との隙間からも、猫たちが次々と発見された。

 繁殖が繰り返される中で、1匹のメスが脱走して屋外のノラ猫と交配して自宅で出産したという。毛色の遺伝子の働きから、日本のミックスに多いトラ柄は、アメショに多い渦巻き状のしま模様よりも、優先的に現れやすい。よって、現場でもキジトラやキジ白の猫が多数生まれていた。

 ねこけんの代表・溝上奈緒子さんは「成猫の数に対して子猫が少なく、違和感を覚えた」と話す。飼い主に話を聞くなかで、救助を行うまでの間に多くの子猫が成長を遂げられないまま命を落としていたことがわかった。

狭い空間に子猫の亡きがら

 ――原因は、猫どうしによる「共食い」だった。

 猫の世界では、交尾をしたい目当てのメスが子育て中の場合、オスが子猫を攻撃する“子殺し”をすることがある。メスを子育てから解放し、再び発情を促すためだ。

「子殺しと同時に、生き延びようとする本能から子猫を食べていたとも考えられます。狭い空間に40匹を超える猫。えさの奪い合いが起きていたはずですから」と溝上さん。飼い主と同居の娘さんからは「成猫が子猫を食べる瞬間を見た」と聞いたという。

「頭だけがない子猫がそこら辺に転がっていたそうです。飼い主のご家族は、幾度も同じ光景を目の当たりにしてきたのでしょう。子猫の亡きがらを前に、どれほど悲しみ、つらい思いを抱いてきたのか」。

 生まれて間もない子猫は、成猫に食べられないようにと飼い主の寝室に隔離されていた。成長すればもとのリビングへ戻されていたが、その前にねこけんが救助した子猫の1匹が、しんのすけくんだった。

 レスキューから1カ月後、ねこけんが開催する譲渡会を通じて、しんのすけくんは新しい家族に迎えられた。

「どんな場所で育っていても、悲惨な目にあった経験があっても関係ない。譲渡会でフィーリングがあった子だから」と語るのは、現在の飼い主、駒田きみ子さん。長男の妻、稚春さん(23)とともに当時をふり返る。

「譲渡会にいた時のしんちゃん(しんのすけくん)の名前なんだったっけ?」

「たしかアメトリー…」

「ううん、違う違う!」

「アメリーだっけ?」

「あ、アメニーだ!」

 友人どうしのように会話する嫁姑。2人とも、とにかく明るい。

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最終更新:5/12(土) 14:30
sippo