ここから本文です

東海第2事故、広域避難計画 5キロ圏脱出に30時間

5/13(日) 13:44配信

茨城新聞クロスアイ

日本原子力発電東海第2原発(東海村白方)の過酷事故に備え、半径30キロ圏の自治体が策定を進める広域避難計画。茨城県が過去に実施した避難シミュレーションによると、全国最多の人口が影響し、交通規制などを実施しなければ、5キロ圏の住民が5キロ圏外に出るまで30時間近くかかるとの結果も出ている。避難時間の短縮は容易でなく、試行錯誤が続けられている。

シミュレーションは、事故後直ちに避難を始める5キロ圏(PAZ)の住民約8万人を対象に、2014年に県の広域避難計画が定める避難ルートに基づき行われた。翌15年には、これに交通規制などの対策を加えた場合の避難時間をシミュレーションした。
自家用車での避難を前提に、1台当たりの乗車人数を2・5人に設定。避難指示が出ていない5~30キロ圏(UPZ)の住民の6割に当たる約54万人が自主的に避難することも前提条件に入れた。
14年分の解析によると、PAZの住民の9割が5キロ圏外に避難を終えるまでに要した時間は、全域が5キロ圏に入る東海村で29時間、市域の一部が5キロ圏の日立市は28時間、ひたちなか市が27時間30分と、丸1日以上かかった。対象人口の少ない那珂市は3時間だった。



翌15年の解析では、交差点での交通規制や警察官による誘導に加え、交通渋滞が予想される常磐自動車道日立南太田インターチェンジ周辺での逆走規制を条件に追加。東海村とひたちなか市の一部で避難ルートを変更し、あらためてシミュレーションした。
その結果、東海村と日立、ひたちなか両市の5キロ圏外への避難時間は、何も対策を取らない14年分の解析と比べ、半分程度まで短縮された。
講じた対策はあくまで想定シナリオで、解析結果は計画立案に生かす参考情報だが、県原子力安全対策課は「避難時間をさらに短縮するため、今後もさまざまな手段を検討していきたい」としている。
原発に近く、最も緊急度の高い5キロ圏(PAZ)の住民が速やかに避難するには、5~30キロ圏(UPZ)を含む周辺住民の行動が鍵を握っている。



国の指針では、5キロ圏の住民は放射性物質の放出前に避難を始めるが、5~30キロ圏の住民はまず屋内にとどまり、放射線量に基づき避難することになっている。
ただ、東京電力福島第1原発事故の際、まだ避難指示が出ていない自治体から自主的に避難した人の割合は最大で6割に上った。県のシミュレーションでも同様の事態を前提条件として設定している。
こうした5~30キロ圏の“影の避難”が増えるほど交通渋滞は激しさを増し、5キロ圏の避難時間は伸びることになる。県のシミュレーションでも日立市内の国道6号や245号、水戸市内の国道6号で比較的長時間の交通渋滞が予想された。
同課は「今の制度の周知を図り、UPZ圏の自主避難の割合はなるべく抑えたい」としながらも、「『逃げるな』とは言えない」と苦しい胸の内を明かした。
(戸島大樹、三次豪)

【原発5キロ圏住民の5キロ圏外への避難シミュレーション結果】
東海村・3万6400人 日立市・2万8300人 ひたちなか市・1万4500人 那珂市・900人
■(1) 県の広域避難計画に基づき避難した場合
(東海村)29時間
(日立市)28時間
(ひたちなか市)27.5時間
(那珂市)3時間

■(2) (1)に交通規制などの対策を加えた場合
(東海村)14.5時間
(日立市)14.5時間
(ひたちなか市)16.5時間
(那珂市)1時間

【参考】(2)の条件で30キロ圏外への避難時間
(東海村)15.5時間
(日立市)15時間
(ひたちなか市)19時間
(那珂市)2時間

※各値は対象者の9割が避難を終える時間を示す。5~30キロ圏住民の6割(54万人)が自主避難すると設定

茨城新聞社