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近鉄がフリーゲージトレイン開発推進へ 京都~吉野間で直通列車を運転か

5/15(火) 18:07配信

乗りものニュース

近鉄特急「全路線」が直通可能に

 近畿日本鉄道(近鉄)は5月15日(火)、軌間可変電車(フリーゲージトレイン=FGT)の開発を推進すると発表しました。京都~橿原神宮前~吉野間などでの直通列車の運行を目指します。

【写真】フリーゲージトレインの試験車両

 FGTは、車軸に取り付けられた車輪を左右にスライドさせることで、2本のレール幅(軌間)が異なる路線でも直通できる車両です。近鉄は軌間の異なる路線を複数運営しており、大阪線や京都線、橿原線などは新幹線と同じ1435mmの標準軌ですが、南大阪線や吉野線などはJR在来線と同じ1067mmの狭軌となっています。

 近鉄は大阪阿部野橋~吉野間で観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」を運転するなど、世界遺産に認定された吉野山への観光輸送を強化してきましたが、京都~吉野間を京都線、橿原線、吉野線経由で直通する列車は運転されていません。これは京都線と橿原線の軌間が標準軌であるのに対し、吉野線は狭軌のため。橿原線と吉野線が接続している橿原神宮前駅で列車を乗り換える必要があります。

 このため近鉄は、軌間の統一や複数の軌間に対応した線路(3線軌)への改造など、直通運転に向けた「さまざまな解決方法を模索」してきたといいます。近鉄は今回、FGTの開発推進を決定。6月22日付けの役員異動にあわせ、同社の総合研究所にFGT開発推進担当役員を就任させることにしました。

 FGTが実用化した場合、京都~吉野間での直通運転が可能になります。さらに近鉄は「当社の特急ネットワークの全路線において直通運転が可能になります」「大阪・京都・奈良・名古屋・伊勢志摩・吉野などの各観光拠点が直通運転でつながることで、大きな荷物を持つインバウンドのお客さまをはじめ、快適かつ便利に鉄道の旅をお楽しみいただくことができるようになります」とし、ほかの区間でも直通運転を行う可能性を示唆しています。

低速運転なら導入可能と判断か?

 日本ではこれまで、国土交通省や鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が中心になり、新幹線と在来線の直通列車用としてFGTの研究が進められてきました。2022年度中には九州新幹線・西九州ルート(長崎新幹線)の武雄温泉~長崎間が開業することから、在来線(長崎本線など)と長崎新幹線の両方に乗り入れて博多(福岡市博多区)~長崎間を直通する特急の運転が考えられてきたのです。

 しかし、FGTの試験車両は高速域での走行試験で車軸に傷がつくなどのトラブルが発生し、開発が大幅に遅延。車両の製造コストや維持コストも高くなると見られ、導入自体が難しくなってきました。

 こうした状況のなかで、なぜ近鉄はFGTの開発推進を表明したのでしょうか。近鉄の広報部は取材に対し「これまで研究や調査を行ってきて今回の発表に至ったというわけではありません。これから勉強をしていくという段階です」と話し、現在のFGTの開発状況を踏まえた上での判断かどうか、明確にしませんでした。

 ただ、高速走行試験でトラブルが発生したということは、逆にいえば低速域ではトラブルが発生しにくいともいえます。現在のFGT試験車両は最高速度を270km/hとしていますが、近鉄線の最高速度は130km/h。新幹線ほど速く走るわけではありませんから、FGTを導入できるかもしれないと考えたのかもしれません。

 近鉄は今後について「国土交通省とも相談させていただきながら、他の鉄道事業者や鉄道車両メーカーなどとともに、フリーゲージトレインの実用化に向けた検討を進めていきたいと考えています」としています。

草町義和(鉄道ライター)