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〈時代の正体〉市批判、ネットで続々「ヘイト防止指針」巡り形骸化懸念各地で

5/15(火) 5:02配信

カナロコ by 神奈川新聞

【時代の正体取材班=石橋 学】川崎市のヘイト対策の阻止を公言する人種差別扇動者、瀬戸弘幸氏が6月3日に市教育文化会館(川崎区)で講演会を計画していることが明らかになって2週間余り。市は「情報収集中」として会館の利用可否の判断に至っていない。インターネット上では不許可を求める声だけでなく、市の対応への批判が各地に広がっている。公的施設でのヘイトスピーチを防ぐ全国初の施策であるガイドラインへの注目の高さが背景にある。

 〈公的施設でこの集会を開く許可を与えたら、川崎市は差別を肯定する都市ってことになる〉

 ツイッターに投稿されたつぶやきは、東京五輪・パラリンピックに向けて多様性の尊重を掲げる市のスローガンを引き、こう続く。

 〈かわさきパラムーブメントどころじゃないし、社会全体へのマイナスだ〉

 判断次第で一自治体にとどまらない影響があるからこその懸念だ。

■広がる批判
 当初は「川崎市を応援してヘイト集会を止めよう」といったトーンが目立ったが、会館館長が判断材料の情報収集を怠っていたことが明らかになり、批判が増え始めた。

 〈「情報収集」なんかその気になればすぐできる。ヘイトを手助けするのか? 許されないよ〉

 〈外見だけよくしたって、内情はサボタージュと不勉強〉

 〈館長のサボタージュとその不作為に対して甘々な対応の川崎市。非常にまずい状況です〉

 〈当局者が差別者を許さないという対応を取れていないというだけでお粗末であり、それでどこが反差別なのか〉

 辛辣(しんらつ)な指摘もしかし、制度的にヘイトを防止するガイドラインの尊さを知るがゆえ。会館や関係部署に適切な対応を求めるよう、呼び掛けは続く。

 〈仏作って魂入れず。入れるのは市民の力。条例や法律の内実を社会に定着させるのは私たちの仕事〉

 電話やメールをしたことを伝えるツイートも相次ぎ、その一人、東京都渋谷区の長島結さん(47)は「人権施策の先進自治体とされる川崎市でいきなり形骸化するようでは、あとに続く自治体に悪影響が出る」と案じる。

 現在、同区に対し、条例の改正などヘイト対策を求めて働き掛けている長島さんだが、やはり札幌市でヘイトデモが続く北海道在住の母親にも川崎の現状が届いていたという。「母も川崎市に電話した。SNS(会員制交流サイト)を使えない世代を含め、関心が全国に広がっている」と感じている。

■事実に反し
 一方、差別扇動を繰り返す瀬戸氏の講演会計画への非難やガイドラインによる規制に関して、「憲法違反」「言論弾圧」といった事実に反する書き込みも散見される。

 ガイドラインは差別的言動を「許されない」とするへイトスピーチ解消法に基づく施策だ。権力による恣意(しい)的で過度の規制を避けるため、学識者でつくる第三者機関に意見を聴いて最終決定する仕組みも取り入れている。

 市人権・男女共同参画室は「ガイドラインにも明記されている通り、憲法で保障される表現の自由に抵触しないよう配慮しながら運用に当たっている」と説明する。

 特定の民族に対して「出て行け」などと人間の存在を否定し、「死ね、殺せ」と殺害までもあおり、平穏な地域社会を破壊するヘイトスピーチが憲法で守られる正当な表現行為であろうはずがない。

 ツイートが短く本質を突く。

 〈地域に暮らす人々のために尽くすのか。あるいは、差別を垂れ流すためだけにやってくる確信犯に間違った自由を与えるのか。警備云々(うんぬん)でなく、真剣に地方自治体の行政能力を問われる〉

 ここ川崎では、5年にわたり野放しのまま14回も繰り返されたヘイトデモに対し、千人規模の人々が結集し、路上に体を横たえ、その行く手を阻んできた。もうこれ以上、抗議に声を枯らし、体を張る必要がないようヘイト防止策は制度化されたはずだった。

 機能することなく、許可されれば-。

 〈直接囲む〉

 再びの、やむを得ない市民力の行使もささやかれ始めた。