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日本初のセクハラ訴訟、渦中にいた弁護士がいま問いかけること

5/16(水) 6:04配信

BuzzFeed Japan

平成へ元号が変わった1989年の夏、日本で初めてセクハラ被害をめぐって法廷で争った裁判が起こされた。「セクシュアル・ハラスメント」という言葉が流行語大賞(新語部門)になるほど注目を集めた事件から約30年。社会は変わったのか。1989年の裁判で代理人を務めた角田由紀子弁護士に聞いた。【BuzzFeed Japan / 伊吹早織】

初めての「セクハラ訴訟」

日本におけるセクハラ訴訟の第1号となった1989年の裁判は、福岡の出版社に勤めていた女性が男性編集長から「男遊びが激しい」「取引先と不倫している」などと私生活に関する悪評を流され、のちに解雇された事件だった。

提訴した当時はまだ「セクハラ」という言葉が日本で使われ始めて間もない頃。弁護団はアメリカの事例を参考にしつつ、既存の法律でセクハラの根底にある性差別を指摘する方法を模索した。

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当時は前例もセクハラに関する法理論もなかったから、民法709条の「不法行為」を使ったの。他人の権利や利益を侵害した人は、それによって生じた損害を賠償する責任があるというもの。

性的な悪評を流すことも、人格権を侵害する不法行為だと主張した。セクハラを禁止する法律がない中で、ある意味苦肉の策でした。

弁護士仲間には「どうやって立証するんだ」と訝しがられました。アドバイスをもらっていたアメリカの弁護士にも「言葉のハラスメントは一番難しい。セクハラ訴訟の第1号になるんだから、勝てる事件を選べ」と言われましたね。

でも、来た事件で勝つというのが私たちだから。同様の被害を受けた元社員らの証言を集め、尋問を通じて、加害者の男性や会社が女性を性的な対象として見下していたことを明らかにしました。

この事件に限らず、性的な言葉で貶めるセクハラの根底にあるのは、性差別だと訴えたんです。

1992年4月に出た判決は、ほぼ完全勝訴。裁判所は私たちがあげた15の事実のうち12を認め、男性と出版社に165万円の損害賠償を命じました。

重要なのは、加害者個人だけでなく、使用者である会社の責任もちゃんと認定されたことなの。この判決が、日本におけるセクハラ対策の方向性を定めるものになったから。

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最終更新:5/16(水) 6:08
BuzzFeed Japan