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【SUPER GTインタビュー】日本ミシュランタイヤ モータースポーツマネージャー 小田島広明氏に聞く

5/17(木) 6:08配信

Impress Watch

「SUPER GTに参戦しているのはコンペティションがあるからだ」と日本ミシュランタイヤ モータースポーツマネージャー 小田島広明氏は、ミシュランがSUPER GTに参戦しているのはほかのタイヤメーカーと技術力で勝負できるからだと説明する。その言葉のとおり、SUPER GT、特に上位カテゴリーとなるGT500クラスに関してはミシュラン、ブリヂストン、横浜ゴム、ダンロップ(住友ゴム工業)と4つのブランドが競合している非常に厳しいカテゴリーになっており、毎戦毎戦熾烈な競争が繰り広げられている。

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 その中でもミシュランは、日産自動車のワークス車両となる23号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)、2018年から参戦を開始した3号車 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(本山哲/千代勝正組)の2台にタイヤを供給しており、近年では2011年~2012年の2年連続、そして2014年~2015年の2年連続と、この7年間で4回のシリーズチャンピオンを獲得するなどの実績を残している。

 そうしたミシュランの小田島氏に、2017年のSUPER GT活動の評価、そして2018年の見通し、課題、目標などについて話を伺った。

■2018年SUPER GT ミシュランタイヤ装着車両

 2018年のミシュランタイヤ装着車は2017年と同じで、2台のGT-Rとなる。しかし、2017年まで46号車を走らせていたMOLAが撤退することになったので、その替わりにGT300クラスでFIA-GT3のGT-Rを走らせていたNDDP RACING with B-MAXがGT500クラスの3号車としてGT-Rを走らせることになり、2台のGT-Rというくくりでは同じながら、チームの中身は完全に変わっている。

 ドライバーが2017年の46号車の2人と一緒なので何も変わっていないように見えるが、チームメンバーは入れ替わっているため、そうした新チームがどの段階で完全に回るようになるかが鍵になるだろう。

■タイヤ開発競争が激しくなっているSUPER GT。だからこそミシュランは参戦する――2017年シーズンを振り返ってどうだったでしょうか? 2017年シーズンは最終戦のツインリンクもてぎで1勝、23号車がランキング2位という結果でした。

小田島氏:2017年の前半戦は、冬場のテストからパッケージとしてまとまりが足りていなくて、他メーカーのタイヤを採用する競合チームのパッケージに総合力で劣っていて、キャッチアップが難しかったです。それがSUGOのレースからクルマが改善されて、タイヤ側の開発も加速していった結果、最終戦は勝利で終われて、チャンピオンから2点差の2位まで追い上げることができたことは大きな意味がありました。

 というのも、最終戦のツインリンクもてぎのレースでは勝ったのはもちろん重要ですが、ポールポジションを取って、しかもコースレコードも出したという意味で絶対的な強さを見せることができた。これまで「ツインリンクもてぎのレースではミシュランはあんまりよくないよね~」という声もあるから、そういう姿を見せられたことは大きな意味があったと考えています。

――2017年シーズンで一番印象に残ったレースはどこですか?

小田島氏:鈴鹿1000kmですね。一度12位まで下がった後、2位まで上がってくることができた。このレースは温度が変わりやすいレースだったので、そこでどんな温度域でも競争力があるということを示せたのは大きかっただけに、(レース中のアンセーフリリースでドライブスルーペナルティが出され、同一周回の中では最下位になってしまったことが)もったいなかったですね。

――ここ最近のレースでは、温度域をきちんと探し当てたタイヤメーカーがメリットを得ているように見えます。レースの気温が予想できない以上、ちょっとしたギャンブルのようになっている印象もありますが……。

小田島氏:決してギャンブルをしている訳ではありません。きちんとした温度域のウィンドウの中でタイヤを作り込んできています。しかし、若干の得意不得意がでてしまう部分はある。特に温度が2℃ないしは3℃変わっただけで状況は全然変わってきてしまう。

 実際に岡山では我々も苦労していましたが、暖まりに関してはブリヂストンさんの方が苦労していた。特に開幕戦のような寒い時期に行なわれるレースでは、温度に関してはナーバスになるのは毎年のことですが、それでも2018年の岡山のレースは我々はベストなチョイスができていたと考えています。

――SUPER GTのタイヤ開発競争は非常に先鋭化しているように見えますが、どうなのでしょうか?

小田島氏:今まで以上にタイヤメーカー間の差が小さくなっていると考えています。以前はミシュランはココが得意、ブリヂストンさんはここが得意みたいな優位性がある程度はっきりしていたのですが、だんだんとそれがなくなってきていて、どちらも高いレベルで安定してきている。その中で、小さな優位性がレースの結果を左右している、そうした状況になってきていると理解しています。

――そうした厳しい競争の中で参戦を続けて行くのは大変なことではないのでしょうか?

小田島氏:我々も、そしておそらく競合他社もそうだと思いますが、どこも全力で開発している。しかも、そのレベルは世界のレースでも類を見ないくらい高いレベルになっていて、各社の開発の過程で生じていた特性みたいなモノが見えないくらい高いレベルになって、本当にちょっとした差だけで競争している。そうしたレベルになっています。しかし、だからこそミシュランにとっては挑戦しがいがあるレースですし、競合他社を含めて競争できる環境にあるからこそミシュランはSUPER GTに参戦し続けているのです。

■2018年の目標はGT-Rの中でのトップシーズンとミシュラン装着車のシリーズチャンピオン――2018年シーズンの体制についてはどう考えておられますか?

小田島氏:2018年シーズンの体制ですが、台数は2017年と同様ですが、1台(3号車)はドライバーは同じながらチームのオペレーションは変わっています。もちろんニスモがチームに情報をシェアしていくので、その点は2017年と変わっていませんが、チームはGT500に挑戦するのは初めてなので、そこを我々としてもしっかりカバーしていくことが大事だと考えています。

――2018年シーズンのSUPER GT以外のモータースポーツ活動に関して教えてください

小田島氏:ポルシェのポルシェ カレラカップ 、ポルシェ GT3 カップチャレンジ、マツダのGLOBAL MX-5 CUP(ただしブランドは傘下のBFGoodrich)などにワンメイク供給しているほか、グローバルにはMotoGP、フォーミュラ E、WEC(世界耐久選手権)、WRC(世界ラリー選手権)などに供給しています。特にフォーミュラ Eは市街地レースとして非常に盛り上がっており、今後日本でも開催されるといいなと期待しています。WECとMotoGPに関しては日本でのレースが10月に行なわれるので、こちらもぜひご注目頂ければ。

――開幕戦の結果ですが、23号車が5位という結果でした。この結果に満足はされていますか?

小田島氏:満足かと言うと、一定の満足はしています。日産という同じ車両で戦うタイヤメーカーとしては最上位の2位が取れたはずですが、ペナルティなどの影響があって5位になりました。計算上はペナルティがなければ別の展開があっただけに残念な結果だったということもできます。ですが、実はシーズンインの前に岡山で何位になれるかと言うことを予想しているときは、5位だろうという予想があったので、そこは当たっていたので一定の満足という表現になります。これから先、ウェイトなどのことを考えるとこの5位はわるい結果ではありません。この先の(2016年に開幕戦と第2戦で連勝してハンデウェイトが最大になってから苦戦した)ウェイトのことをなどを考えると、クルマにとってもタイヤにとっても厳しいシーズンが続いてしまうことを考えると、岡山での5位という結果はわるくないと考えています。

――最後に2018年シーズンの目標を教えてください

小田島氏:2018年シーズンの目標はこれまで同じで、タイヤメーカーとしてはGT-Rの中でのベストになり、スポーティングとしてはミシュランタイヤ装着のGT-Rがチャンピオンになるということです。2017年も序盤あれだけ厳しい、厳しいと思われていた中でも、最後は2ポイント差まで詰め寄ることができました。2018年は2017年よりもよいスタートが切れているので、最終的にチャンピオンが取れるように努力を続けていきたいです。

 こうした小田島氏の言葉を裏付けるように、このインタビューの後に行なわれた第2戦富士の決勝レースで、ミシュランタイヤ装着の23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが見事優勝した(レースレポートはこちら)。しかし、小田島氏の「タイヤメーカー間の差は小さくなっている」という言葉を裏付けるとおり、2回のピットストップを挟んで3つあったスティントのうち、前から2スティントはブリヂストン装着車がリードし、最後のピットストップ時にタイヤの暖まりのよさを武器にした23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが速いアウトラップで差をつけるというレースになった。

 その意味で、SUPER GTが非常に高いレベルでのコンペティションが行なわれていることは疑いの余地がなく、これからウェイトハンデが重くなっていく中で、それにどう対処していくかがミシュラン陣営にとっては課題となるだろう。

Car Watch,笠原一輝,Photo:安田 剛

最終更新:5/17(木) 6:08
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