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【EDIX2018】カギは「学校導入」プログラミング教材展示の今

5/17(木) 13:00配信

リセマム

 年々高まるプログラミング教育への注目。2020年からの学習指導要領において、小学校で必修化されることが決定されて以来、教育現場での最大の関心は「どの教材をどのように導入し、活用するか」という点にある。その傾向は、2018年5月16日から東京ビッグサイトで開催されている「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」でも見られた。

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 「EDIX(エディックス)」は、教育業界における業務支援システム、ICT機器、デジタル教材、eラーニング、各種学校向けサービスなどが一堂に展示される、教育分野では国内最大級の専門展。「セキュリティゾーン」「学校業務支援ゾーン」「教材・教育コンテンツゾーン」「eラーニングゾーン」「ICT機器ゾーン」「学びNEXT みらいの学びゾーン」の6つに分かれ、出展企業・団体が最先端の学校関連教材・サービスを紹介している。

プログラミング教材展示の中心地「学びNEXT」

 そのうち、STEM教育やAI・ロボット、EdTech(エドテック)やプログラミング教材が集うブースが「学びNEXT みらいの学びゾーン」。2016年の第7回EDIXで新設されたゾーンで、毎回、盛況のようすを見せている。

カギは「学校導入」 提示情報に変化

 展示が盛り上がる一方、来場者からは「教材やサポートが多々あることはわかったが、何をどのように教育現場に落とし込めばよいのかわからない」という悩みの声があったのも事実。情報過多に陥り、混乱ののち会場をあとにした自治体や関係者もいたようだ。展示者としても、いかにして来場者に導入イメージを持ってもらうか、という点が商談成立の鍵になる。

 しかし、過去出展に伴う課題や、進む教育改革の波を受け、今回の「学びNEXT みらいの学びゾーン」では教師向け指導案や指導書、導入の手引きや導入事例を示した冊子を用意するブースが目立った。導入予算やオプションプランを具体的に掲示し、予算と突き合わせて検討ができるように配慮しているブースもある。前回の開催から1年が過ぎ、教育現場のプログラミング教育に対する興味関心はもはや必須のものになりつつある。そういった事情も踏まえ、第9回EDIX内の「学びNEXT みらいの学びゾーン」では、学校導入を打ち出したプログラミング教材が多くみられた。

導入推進、今後は対象年齢拡大か

 展示されているプログラミング教材について、いくつかのブースのようすを紹介しよう。

アーテック

 アーテックは小学校向けプログラミング教材「アーテックロボ」を展示している。学研エデュケーショナルと共同で展開している「もののしくみ研究室」の紹介展示に加え、今回のブースでは小学校の「総合的な学習の時間」「算数」「理科」の授業に寄り添う教材展示を強化していた。「理科」の授業なら、ロボット組立てとプログラミングを通じ、光や電気回路を学ぶ仕組みを作れるキットを展示する、という具合だ。教材には教師向けの指導書が付き、指導書に沿って授業を進めればプログラミング初心者の先生も問題ない。小学校導入を支援する施策としては、これまでの1か月無料お試しに加え、団体向けレンタルも本格的にスタートする。

画像:「アーテックロボ」に付属する指導者向けの説明書
 同社は現在、おもに幼児向けのプログラミングロボット「alilo(アリロ)」の展開を計画中。動作にPCやタブレットは不要。イラストの描かれたカードを用いてゴールまでaliloを導く、アンプラグドプログラミング教材だ。本体のみは19,980円、指導者向けの提案書付きを26,800円(いずれも税込)で、2018年6月から展開予定だという。

Bee-Bot

 同じくアンプラグドプログラミング教材を展示し、小学校への導入をねらうのが、Bee-Bot(ビーボット)のブース。Bee-Botは、アメリカやイギリスなど、世界各国で導入されているハチ型の知育教材だ。Bee-Botの背中にある矢印ボタンや一時停止ボタンでコマンドを入力し、「GO」ボタンを押せば入力どおりに行動を開始する。経路を考え(設計)、入力から出力まで、コンピューターへの命令を組み合わせる行為が「プログラミング」であるという、一連の動作を学ぶことができる。

画像:なんともかわいらしいBee-Bot。軽くて持ちやすい
 Bee-Botの日本代理店「Terrapin Japan(テラピンジャパン)」の中許氏は、Bee-Botを通じて「ロボットは人が動かしている」という根本の仕組みを伝えたいとコメント。プログラミングスキルそのものではなく、先生や仲間との協働作業を通し、Bee-Botを通じた「教養」の向上に寄与できればと期待を寄せた。国内では埼玉県戸田市などの小学校教育現場での導入実績を持つ。

ワイズインテグレーション、ナチュラルスタイル

 ダンボール製ロボットのプログラミング教材…と聞けば、「ソビーゴ」を思い出す教育関係者もいるだろう。ワイズインテグレーションとナチュラルスタイルの共同出展ブースでは、自分で組み立てた段ボールロボットをプログラミングで動かす教材「ソビーゴ こどもロボットプログラミング」や、ブロックとアプリによるプログラミング教材「ソビーゴ こどもブロックプログラミング」、「こどもパソコンIchigoJam」を展示している。ソビーゴを使った導入実績として、東京都八王子私立浅川小学校で実際に行った授業例を紹介しているので、通常授業のヒントを得るのによさそうだ。

画像:2018年度中に展開予定のアプリによるプログラミング環境
 「ソビーゴ こどもロボットプログラミング」についてはさらに、2018年度中に展開予定のアプリによるプログラミング例も参考展示中。これまではキーボードを利用したプログラミングが必要だったところ、アプリを通したプログラミングを可能にすることで、ロボットプログラミングの対象年齢を未就学児以上に拡げるねらい。おもに小学生を対象に展開してきた同教材の対象年齢を拡大し、ソビーゴシリーズ内での段階的学習が可能になる見込みだ。なお、アプリ内の命令ブロックは、タッチするとBASIC言語ではどのように示すのかが表示される。ビジュアルプログラミング言語とプログラミング言語の連携も意識した作りだろう。

優良教材

 技術家庭科など、ものづくりを中心とした教育教材の製作・販売を行う、埼玉県春日部市の企業。手のひらサイズの小さなコンピューターが今ほど一般的でなかった2012年から、教育教材として計測制御学習教材「Allmay(オールメイ)」を提供してきた。現在提供されている「Allmay2」は、Allmayをさらに使いやすく改良した新モデルで、簡単なプログラミングで計測制御を学ぶことができる。ピン端子の光センサーが付属しており、光を感知すると明かりが点灯したり音楽が鳴ったりと、さまざまなものづくりに応用できる教材だ。価格は1個1,620円から。

画像:優良教材が提供する「Allmay2」
 ブースでは、3Dプリンタで作成したネコ型ケースを被せたオリジナルライトのほか、Allmay2を活用した教具例を多数展示中。「技術科」「家庭科」「美術・図工」授業への教材提供を行ってきた知見から、現場教員からの専門的な質問にも丁寧に答えていた。プログラミングは生活を豊かにする手段のひとつであるという、プログラミングそのものの意義を感じるには、日常に用いることのできるものづくりに携わることが近道。高度IT社会の仕組みと、それを支える技術を子どもたちに伝えるきっかけとなるヒントを得ることができそうだ。

コルグ

 littleBitsと共同出展。「littleBits(リトルビッツ)」は、楽しみながら創造力やプログラミング的思考を育む電子工作キット。ハンダ付けや配線、専門的なプログラミング知識は必要とせず、誰でも気軽に楽しむことができる。数ある家庭向け販売を行っているロボット・プログラミング教材のなかでも、スター・ウォーズの「R2-D2」を組み立てるキット「DROID INVENTOR KIT」に見覚えのある者は少なくないだろう。

画像:「R2-D2」さまざまな姿の
 littleBitsの国内輸入代理業務を行い、販売やワークショップを展開するコルグによると、「R2-D2」というキャラクターをもとにした教材でありながら、利用者がその姿や形を自由にデザインしてよい、というのはディズニーライセンス商品のなかでもめずらしいこと。ブース内にはアート系学生が創作したゴミ箱型「R2-D2」やペン立て型「R2-D2」、日本人形版「R2-D2」など、多数の作品が展示されていた。プログラミング後の方法も提示することで、たとえばプログラミング活動で作成したロボットを、次は図工や美術の時間でペイントしたり、改造したり、という教科横断型の教材としての利用可能性を感じた。ブース内ではこのほか、音楽への導入例も展示されている。

近藤科学

 ラジコンやロボット関連機器の製造、販売を行っている電気機器メーカー。KXRロボットキットを使用した「KXRロボティクス入門カリキュラム」の展示を行っている。KXRロボットには、国産サーボモータが搭載されている。サーボモータが通常のモーターと異なる点は、制御(プログラミング)によって回転速度を変えたり、回転に角度を付けることができるモータのこと。サーボモータを搭載したロボットの動きはなめらかで、まるで人間の手足に近い「関節」を持っているかのようだ。


 ロボットの組立てにはドライバーなどの工具を用い、プログラミングは進度に応じオリジナルの環境とArduino(アルディーノ)を使う。Arduinoは電子工作やものづくりに利用されるマイコンボードで、大人でも工業製品のプロトタイプを作る際に用いることがあるという。

 学校向けの「KXRロボティクス入門カリキュラム」は、週1回90分の実施を想定した一括セットを用意。ひとつのキットだけで、6通りのロボット制作が適う。着実にステップアップできるよう工夫した無理のないカリキュラムが組まれており、メカニカルなハード(ロボット)組立てと、ソフトウェア(制御)の両方を段階的に学べる教材だ。まったくの初心者から、本格的な機械工学やロボディクスを志す者まで、幅広い層の要求に応える教材といえるだろう。利用目的に応じた分割販売も行う予定で、年間での利用はもちろん、課外授業や夏休みといった限定的な期間や、今あるプログラミング教材の発展としての導入にも対応する。

 指導テキストは、購入後に発行されるアカウントを用いてPDFファイルをダウンロードすれば利用可能。発売は2018年6、7月ごろを見込む。修理パーツや補修パーツの別売りも行い、紛失や故障にも備える。対象年齢は小学校高学年から高校生まで。

 「学びNEXT」はこのほか、UEIエデュケーションズによる自学自習方式で学べる独自のプログラミング学習教材や、スイッチエデュケーションによる教育向けマイコンボードmicro:bitの展示など、多数のプログラミング教材にあふれている。

企業も注目、プログラミング「で」何を学ぶか

 5月16日から18日まで開催される第9回EDIXは、学校と企業がお互いに「学校現場に導入するにはどうするか」という、同じ“設計図”を用いて話す場になるだろう。実際に、参加者はどのような思いで足を運んでいるのだろうか。

 第7回EDIXから毎年訪れているという埼玉県公立小学校教諭の男性は、EDIX、特に「学びNEXT」を目的に来場している理由を「最先端の教材を知っておきたいから」だと語る。「地域内の情報交換だけでは、話題にのぼる教材が偏る。全国的にはどういった教材を使って、どのように活用しているのか、参考とするためになるべく来ています」と語っていた。導入可否に関わらず、導入事例やほかの学校の取組みはやはり、気になるもの。多数を一度に比較できる点にメリットを感じているとのことだった。

 学校はもちろん、塾・スクール経営者の姿もある。仙台市内で小中学生、高校生を対象にプログラミングスクールを運営する「Nozomiプログラミング&Webスクール」代表取締役の仲沢浩則氏は、開催初日の「学びNEXT」専門セミナーに登壇した帝塚山小学校の池田節校長による講演を受け、EDIXを巡りプログラミング「を」学ぶのではなく、プログラミングで何ができるか、という点を探りたいと述べる。仲沢氏はプログラミングを通した地域活性化も追求しており、子どもたちの可能性を拓くヒントを得たいと期待を語った。

 学校へのプログラミング教育導入という、教育関係者が総出で取り組む大掛かりな改革。これからの展示会はさらに、導入を支える地域や保護者とのつながりも意識した事例が出てくるかもしれない。日々めまぐるしく変化するプログラミング教育動向について、情報収集網を張り巡らせておく必要がある。

《リセマム 佐藤亜希》

最終更新:5/18(金) 14:14
リセマム

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