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【SUPER GTインタビュー】横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー 藤代秀一氏に聞く

5/17(木) 8:08配信

Impress Watch

 日本を代表するレースとなるSUPER GTの足下を支えているタイヤメーカーが横浜ゴムだ。上位クラスのGT500クラスでは3台、下位クラスのGT300クラスでは実に22台もの車両にタイヤを供給しており、合計で25台と年間エントリー44台(GT500クラスが15台、GT300クラスが29台)のうち約57%にタイヤを供給。4つのタイヤメーカーがある中でこの数字だから「SUPER GTの足下を支えている」という表現が決して過言ではないことを証明している。

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 2017年の横浜ゴムは4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)がGT300クラスのチャンピオンを獲得する活躍を見せた。GT500クラスに負けず劣らず、GT300クラスの競争も激しくなる一方で、2年連続でチャンピオンを獲得した横浜ゴムとしても決して安穏としていられる状況ではない。そうした横浜ゴムのSUPER GTでの活動について横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー 藤代秀一氏に話を伺った。

■2018年SUPER GT 横浜ゴム装着車両

・GT500クラス
16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐組)
19号車 WedsSport ADVAN LC500(国本雄資/山下健太組)
24号車 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/高星明誠組)

・GT300クラス
0号車 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)
2号車 シンティアム・アップル・ロータス(高橋一穂/加藤寛規組)
5号車 マッハ車検 MC86 Y's distraction(坂口夏月/平木湧也組)
7号車 D'station Porsche(藤井誠暢/スヴェン・ミューラー組)
9号車 GULF NAC PORSCHE 911(久保凜太郎/石川京侍組)
10号車 GAINER TANAX triple a GT-R(星野一樹/吉田広樹組)
18号車 UPGARAGE 86 MC(中山友貴/小林崇志組)
22号車 アールキューズ AMG GT3(和田久/城内政樹組)
25号車 HOPPY 86 MC(松井孝允/坪井翔組)
26号車 TAISAN R8 FUKUSHIMA(山田真之亮/川端伸太朗組)
30号車 TOYOTA PRIUS apr GT(永井宏明/佐々木孝太組)
34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3(道上龍/大津弘樹組)
35号車 arto RC F GT3(ナタウッド・ジャルーンスルカワッタナ/ナタポン・ホートンカム)
48号車 植毛 GT-R(田中勝輝/飯田太陽組)
50号車 EXE AMG GT3(加納政樹/安岡秀徒組)
52号車 埼玉トヨペットGreenBraveマークX MC(番場琢/脇阪薫一組)
60号車 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3(吉本大樹/宮田莉朋組)
87号車 リーガルフロンティア ランボルギーニGT3(佐藤公哉/元嶋佑弥組)
88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(平峰一貴/マルコ・マッペリ組)
117号車 EIcars BENTLEY(井出有治/阪口良平組)
360号車 RUNUP RIVAUX GT-R(田中篤/青木孝行組)
777号車 CARGUY ADA NSX GT3(横溝直輝/木村武史組)

 冒頭でも説明したとおり、GT500クラスで3台、GT300クラスで22台の車両に対してタイヤを供給しており、SUPER GTのフィールドにおいては最大勢力になっている。GT500クラスの体制は2017年と同じで、レクサス、日産、ホンダにそれぞれ1台ずつ。特に16号車 MOTUL MUGEN NSX-GTに関してはドライバーも含めて体制が継続されており、2018年の活躍に期待が持てる。2016年2勝の24号車 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R、2016年初優勝をした19号車 WedsSport ADVAN LC500には期待の新人となる高星明誠選手、山下健太選手がそれぞれ加入しており、新体制で臨むシーズンとなる。

 GT300クラスに関しては例年どおり多数のユーザーチームを抱える体制となる。他メーカーが3~4台にしか供給していないのに比べると、横浜ゴムは22台に供給しており、一番の懸念は勝ち星やポイントが分散してしまって、チャンピオン争いで競り負けるということだろうし、車両のバラエティが多いので、車両に合わせたタイヤというのがなかなか投入しにくいということにある。そうした中で、2016年、2017年ときちんとチャンピオンを獲ってきているので、そこはさすがGT300クラス最多チャンピオン獲得を誇る横浜ゴムとも言える。

■2017年はミク号がチャンピオンを獲得したGT300クラス、開幕戦でも表彰台独占と好調なスタート――2017年のSUPER GTのシリーズはいかがでしたでしょうか? 特にGT300クラスの方はチャンピオンを2年連続で獲得しましたが……。

藤代氏:2017年のGT300クラスに関してはグッドスマイル 初音ミク AMGがチャンピオンを獲得しましたので、結果だけを見ればよかったと言えると思います。しかし、内容を見るとGT300クラスも競争が激化しており、非常にギリギリの戦いだったと自己評価しています。非常に高いチーム力と車両側のパフォーマンスに助けられたという側面があって、決して余力があったというわけではありません。ただ、開発という意味では、GT500クラスほどはテストができていないので、GT500クラスで培っている要素だったりをGT300クラスにも積極的に投入していっています。

 また、これも例年のことですが、横浜ゴムは多数のユーザーチームを抱えていまして、どこかのチームの車両だけに特化できないという状況にあります。本当はそういうことも検討しないといけないとは思っていますが、やはり多くのチームのご期待にも添わないといけない状況ですので、全体的な底上げを常に狙っています。

――GT500クラスに関してはいかがでしたでしょうか?

藤代氏:GT500クラスに関しては2017年に車両の規定が変わって、横浜ゴムの強みが弱みになるのではないかと懸念していましたが、残念ながらそのとおりの展開になってしまいました。2017年の新しい空力規定ではレスダウンフォースになり、荷重が減っています。タイヤに荷重がかかっていない状況では、タイヤの機能や構造など弊社の強みが逆に仇になることは否定できません。

 シーズン前のテストではこれが出なかったのですが、シーズンが始まるとそれが出てきてしまいました。2016年にシーズンで3勝できた背景には、2014年規定の車両が熟成されてダウンフォースがかなり出ていたので、その状況に上手く対処できたことが要因でした。しかし、2017年規定ではそれがレスダウンフォースになった結果、横浜ゴムの強みが弱みになってしまいました。そうした状況を一生懸命直そうと、チームと一体になってテストをしてきました。シーズンオフのテストではクルマの方もダウンフォースが増えており、タイヤの方でも改善が進んでいます。それを克服したとは言えない状況ではありますが、タイヤとクルマの進化で相乗効果ができていると思います。

――2018年シーズン、岡山の開幕戦での評価はいかがでしたでしょうか?

藤代氏:GT300クラスの方は表彰台独占になり、まずはほっとしています。しかしレース内容に関しては、結果的に表彰台は独占したものの、課題はあると考えているので、今後も気を引き締めて開発を続けていけないと思いを新たにしました。

 GT500クラスの方は24号車が6位、19号車が9位、16号車が10位という結果になりましたので、これまであまり得意ではないとされてきた岡山ではわるくない結果だったと評価しています。

――2018年シーズンの開発のテーマはどこにありますか?

藤代氏:開発のテーマは2017年と同様で、2017年に課題となっていた荷重変動や温度変化の特性を、ピーキーな状態からなだらかにしていくことです。SUPER GTの場合はタイヤの作動温度レンジを、温度変化に合わせていくことが重要になってきます。

 タイヤはどうしても事前に作りますから、想定している温度から外してしまう場合がある。そういう時でも、裾野が広ければ対応できるシーンが増えます。そういうことをどんどん広げていかないといけない。

 GT500クラスで言うとダウンフォースを上手く使って走ることが重要になります。うちのタイヤはダウンフォースを安定して得ることができるのですが、姿勢変化の時に課題があり、そこを上手く押さえ込んでいくことが重要になります。

■市販タイヤ向けに開発したサイドウォールフィンをGT500クラス用タイヤに採用
――GT500クラスのタイヤではサイドウォールにフィンが付いています、あれはどういう意味があるのでしょうか?

藤代氏:すでに市販タイヤ用の技術としてモーターショーなどでも発表している技術になります。流体シミュレーションで、空気抵抗の低減、揚力を低減する効果があり、その結果としてダウンフォースが増すという効果があると分かり、導入しました。当初は、FRの19号車と24号車向けのタイヤで導入したのですが、セパンテストで16号車でも効果があると分かり、現在は全車で採用しています。

――この技術は市販タイヤでも導入される可能性があるのでしょうか?

藤代氏:元々は市販タイヤ用として開発された技術です。弊社の研究開発部門が開発し、すでに特許となっています。

――これは金型の形状でこうしたフィンを形成しているのですか?

藤代氏:そのとおりです。

――GT300クラス用のタイヤでもこうした技術が投入される可能性はあるのでしょうか?

藤代氏:GT300クラスに関しては、いくつかの課題があります。GT300クラスの場合は車種ごとにエアロが異なっており、効果があるかないかはそこに依存してきますので、あれだけのバラエティがあるGT300クラスにすぐ導入するというのは難しいと考えています。

――今シーズンの横浜ゴムのモータースポーツ活動を教えてください

藤代氏:日本では全日本スーパーフォーミュラ選手権、全日本F3選手権などのトップカテゴリーにワンメイク供給しているほか、Bライ競技(ラリー、ダートラ)やカート、草の根のモータースポーツなどにも幅広くタイヤを供給しています。グローバルにはFIAワールドツーリングカーカップ(WTCR)、ニュルブルクリンク24時間レースなどに参戦するチームなどにもタイヤを供給したりという活動を行なっています。

――最後に今シーズンの目標を教えてください

藤代氏:GT500クラスは2017年1勝もできなかったので、まずは1勝で、できれば複数回を狙いたいです。特に2018年はADVAN 40周年になりますので、それにふさわしい成績を残したいと考えています。GT300クラスに関してはやはりシリーズチャンピオンを狙いたいです。GT300クラスでは下位カテゴリーでヨコハマタイヤで育ってきた若手ドライバーがステップアップして、各チームで活躍していますので、そうした新しい力も借りてシリーズチャンピオンを目指していきたいです。

Car Watch,笠原一輝,Photo:安田 剛

最終更新:5/17(木) 8:08
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