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「選手」ではないのに「選手」のよう 44歳イチローの超異例契約の不思議

5/17(木) 9:00配信

産経新聞

 どの世界でもヒーローとかレジェンドと呼ばれる人物には“謎”とか“疑問”があまたあるのが常だが、メジャーのレジェンド、イチローも例外ではない。引退しないまま球団フロントという前代未聞の契約をマリナーズと結んだことで、さらなる謎が加わった。「2001年、不可思議な選手はやってきた。そして今また始まる。特別な選手のための、特別な環境となった」(USA TODAY紙)などと、全米メディアは“解明”に躍起になっている。

 メジャー野手最年長選手、44歳のイチローは5月3日に事実上の戦力外通告を受け、今季今後の試合に出場しないことが発表された。球団会長付特別補佐という肩書ながら引退ではなく、ユニホームを着てチームに同行、試合中にベンチ入りできない以外は、これまで通りで過ごすことも認められた。100年をはるかに超えるメジャーの歴史の中でも前例がない、異例中の異例となったイチローの処遇。それ以降、全米メディアは理解に懸命だ。

 AP通信は「マリナーズはイチローをベンチ入りできる25人枠からもメジャー枠の40人枠からも外し、選手契約を解除した。ただ、引退という言葉は適当ではない。この先、マリナーズの選手として戻る機会は閉ざされていないからだ」と不思議な契約内容を説明した。

 来年3月20、21日、マリナーズはアスレチックスの主催で開幕シリーズ2試合を東京ドームで行う。すでにディポトGMは、「イチローが来年の開幕にユニホームを着ている可能性は非常に高い」と公言している。その理由として「日米のレジェンドがその場にいないというのは考えられないだろう。マイナス面が大きすぎる」と語った。

 「USA TODAY紙」も「球団フロントなのに物事の決定権はない。選手に戻る可能性を残すからだ。異例の契約になったのは、明らかに来年の東京での試合を見据えてのもの」と解説する。

 出場となればイチローの凱旋でもあり、話題性満載の中で“引退試合”になるかもしれない。イチロー、マリナーズともウインウインの特別契約なのだろう。

 今季はチームに帯同して練習するものの試合には出られないことになったイチロー。スタジアムでどんな生活を送っているのか。

 MLBの公式ホームページ(HP)は「新しい役割を演じているはずのイチローだが、以前と何も変わっていない」というタイトルで、「球団会長付特別補佐としてフロント入りしたわけだが、試合前にはこれまで通り、体を動かし、バッティングし、外野を守っている。クラブハウスでも選手時代と同じロッカーが残る」と、“その後”の球場での1日を説明。

 「唯一違っているのは、試合中ダッグアウトにイチローの姿がないことだけ。クラブハウスか練習場でもモニターを見ている」。規則でメジャー枠の25選手以外は入れないからで、イチロー自身、「大きな違いだね」と笑う。5月8日にパクストンがブルージェイズ相手にノーヒットノーランを達成した瞬間には、ベンチ裏から真っ先にグラウンドに飛び出してきた。

 さすがに公式HPもちょっと疑問に感じたようで、「何も変わらないイチローが、チームにどんな影響をもたらしているのか」と記した。球団の答えは「イチローの発表をした5月3日の試合、マリナーズは勝っただろう」だったが、説得力に欠ける。まだまだ“謎解き”が進められそうな雰囲気だ。

 マリナーズがイチローと異例の契約を結んだ背景には、1977年創立という浅い歴史から、後生に残るものが乏しいという現実があった。野球殿堂入りした関係者も、偉大な足跡を残した選手の背番号を永久欠番にするケースも少ない。メジャー屈指の“宝物”イチローのプライドを守るとともに大切に処遇することは、球団の価値アップにつながることが大きいようだ。

最終更新:5/17(木) 9:00
産経新聞