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アメフトのタックルで怖いけが…認知機能障害にもつながる「脳振盪」

5/17(木) 12:24配信

読売新聞(ヨミドクター)

整形外科医 大関信武

 アメリカンフットボールの試合で、日大の選手が関学大のクオーターバックに悪質なタックルをして大けがをさせ、問題となっています。激しいコンタクトのあるスポーツでは、選手生命に関わる事態もありうるだけに、選手の安全と健康を守ることに最大限の配慮をしなければいけません。アメリカンフットボールなどのスポーツで、最も注意しなければいけないけがの一つに「脳振盪(のうしんとう)」があります。

 脳振盪と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか。私は学生時代の約10年間、ラグビーをプレーしていましたが、頭をぶつけて試合中の記憶をなくしたことが一度だけあります。20年ほど前の話です。当時はヤカンの水を頭にかけて、プレーに戻れそうなら戻る、という時代でした。

 しかし、脳振盪への対応の仕方は、昔と今とでは大きく変わっています。発生頻度は異なっても、あらゆるスポーツで生じる可能性があるものですから、スポーツに関わるすべての方に知っておいてほしいと思います。

 大学ラグビー選手のケースです。

 <大学3年生のF君。ポジションはフランカーで鋭いタックルが持ち味です。練習試合でタックルに行った際、入りどころが悪く相手の膝が頭を直撃。しばらく起き上がることができず、そのまま退場となりました。腕や脚の動きに問題はなく、記憶もはっきりとしています。頭痛があるほか、少し気分が悪く吐き気を伴っています。>

 脳振盪は、頭部の外傷後に出現する一過性の神経機能障害で、頭蓋内に明らかな出血を認めないものの、一時的に脳の活動に障害が出ている状態です。コンタクトプレーが多いラグビーやアメリカンフットボールなどで頻度が高いのですが、柔道、バスケットボール、野球、サッカー、スノーボードなど、どのスポーツでも発生しうるものです。また、直接的な頭部への衝撃だけで生じるのではなく、脳が揺さぶられれば生じます。

意識や記憶に問題がなくても…

 脳振盪の症状は多様で、頭痛、めまい、気分不快、意識消失、健忘、吐き気、 嘔吐(おうと) 、バランスの障害、反応の鈍さ、見当識障害(時間、場所、人などが分からなくなった状態)などがありますが、これらすべての症状が出るわけではありません。また、「意識がなくなったら脳振盪」ということではなく、意識や記憶に問題がなくても脳振盪のケースがよくあります。

 医療関係者がいない場合、現場で脳振盪かどうかの判断は容易ではありません。競技によっては「SCAT3」という脳振盪の評価ツールが用いられます。2016年にベルリンで行われた第5回国際スポーツ脳振盪会議では、これを刷新した「SCAT5」が提案されています。

 また、日本臨床スポーツ医学会・脳神経外科部会からは「頭部外傷10か条の提言」(第2版)が出されており、脳振盪の評価の仕方が分かりやすく書かれています。ぜひ、一読をお勧めします。

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