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<バス路線廃止・減便問題>岡山市のバス9社が初協議へ

5/18(金) 9:48配信

毎日新聞

 人口減少社会を迎える中、疲弊した交通事業者によるバス路線の廃止・減便が止まらない。岡山市でも公共交通のない不便な地域が生まれている。一方、人口が集中する中心部では事業者間の競争が激しい。争いは、大規模な路線の廃止届提出やストライキにも発展し、市民に不安を与えたばかりだ。縮小する日本社会で、市民の足をどう確保していくのか。その具体的な計画を作る市の会議が21日、初開催される。【林田奈々】

 「ここは陸の孤島じゃ」。そう語る住民の口ぶりには、諦めがにじんでいた。岡山市中心部から車で1時間ほどの同市東区久々井(くぐい)地区。小高い山に囲まれ、瀬戸内海に面するこの地域の人口は約300人。65歳以上の割合を示す高齢化率は40%を超える。地域には商店や病院が無く、生活のためには移動手段が不可欠だ。だが、唯一の公共交通機関であるバスは2方面に1日1本ずつしかない。

 ◇免許返納後困る高齢者

住人の男性(75)は「便利が悪いから、若者は次々に出て行く」と嘆く。自身は運転免許を返納しており、年上の知人の車に乗せてもらって用を済ませている。「いずれみんな車に乗れなくなる。将来が不安だ」と語った。別の住人男性(72)も6年前、病気がきっかけで免許を返納した。同居する娘が仕事が休みの時に連れ出してもらうが、「土日は病院や市役所が休みだし、バスを使うにしても帰りはタクシーに乗らざるを得ない。年金暮らしじゃ病院にはとても行けない」とため息をつく。

 前町内会長の出井(いでい)吉夫さん(76)はこう話す。「これからは車に乗る人と、運行する人が連絡を取り合い、必要に応じて走らせる公共交通を考えていかないといけないのではないか」

 一方、市中心部に目を転じると、事業者が激しく競争する。同市中区高屋から国道250号を通り、JR岡山駅に向かう区間は宇野バスと岡電バス(両備グループ)がほぼ同一路線を走る。朝のピーク時の便数は1時間に十数本。沿線には県営住宅や高校などがあるため、利用者は比較的多いが、片方が運賃を下げればもう一方も追随するという価格競争も起きた。JR岡山駅-表町(同市北区)地区間を走る路線バスと路面電車は1999年、各社一斉に区間運賃を100円に引き下げた。現在もこの水準が維持されている。

 2002年に路線バスの参入規制が緩和された直後には、参入合戦も起きた。03年、中鉄バスが岡山駅-岡山空港間で運行するリムジンバスに岡電バスが参入したのだ。このことなどをきっかけに、中鉄バスと両備グループが互いの既存路線に参入し合うようになる。乗客の多い岡山駅や岡山空港で客引きをする状況まで競争が激化したが、両者は06年、発端となったリムジンバスを共同運行にすることや重複路線から撤退することで合意。争いはようやく収まった。

 そして最近も、両備グループの主要路線である岡山西大寺線とほぼ同一区間に、八晃運輸が新路線の認可を申請したことから新たな争いが勃発した。両備グループは激しく反発し、「抗議のため」として県内を走る31路線の廃止届を提出する事態に。その後、廃止届は撤回されたが、ストが実施されるなど市民の足に影響を与えた。

 こうした中、市は21日、市内で路線バスを走らせている全ての事業者9社を集め、「市公共交通網形成協議会」を初めて開く。

 この協議会は、14年に改正された地域公共交通活性化再生法に基づくものだ。交通の問題は地域によって異なる。このため自治体が地域の交通課題を明らかにし、望ましい将来の交通体系を示す「地域公共交通網形成計画」を策定できるようになった。計画は、交通事業者や地域住民らが一つのテーブルに付く協議会で作られる。計画を実現するため、具体的な再編内容などを示す「再編実施計画」の策定も可能だ。

 ◇広島市は16年に

 広島市では16年に交通網形成計画を策定。都心における重複路線の統合▽郊外を走る路線バス車両の小型化▽地域主体の乗り合いタクシーの導入支援--などに取り組むとした。今年3月には、都心の路線を効率化するために循環線を新設することを記した再編実施計画を作っている。

 岡山市の21日の協議会は、交通網形成計画策定に向けた第一歩となる。大森雅夫市長は「これから高齢化が進んでいき、人口も減少していく。車を運転できない人も出てくる中、公共交通は岡山市にとって重要な課題だ」と話している。

 ◇進む路線廃止・減少 全国的な問題に

 岡山市の調査によると、1994年から2016年までの間に市内で合計約110キロのバス路線が減っている。運行頻度別にみると▽15分に1本程度の路線が79キロから54キロ▽30分に1本程度が75キロから69キロ▽1時間に1本程度以下が306キロから226キロ--といずれも減少している。今年3月には、中鉄バスが同市の高松・一宮地区を走る3路線の休止届を提出した。

 路線バスの弱体化は全国的な問題だ。国土交通省によると、2007年度から16年度までに全国で合計約1万4000キロのバス路線が廃止されている。【林田奈々】

最終更新:5/18(金) 9:48
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