ここから本文です

<全国新酒鑑評会>金賞数で福島6連覇 挑戦重ね史上初

5/18(金) 10:19配信

毎日新聞

 酒類総合研究所(東広島市)が17日に発表した「全国新酒鑑評会」の審査結果で、福島県は広島県と並んでいた受賞銘柄数日本一の連続年数を史上初の6年連続とした。県内では福島第1原発事故による根強い風評被害に悩まされている中での快挙だけに、県や酒造業界は消費拡大の材料としたい考えだ。【湯浅聖一、岸慶太】

 県内からは31銘柄が入賞した。このうち金賞を受賞したのは兵庫県と同じ19銘柄(13市町村)で、前回より3銘柄減った。国権酒造(南会津町)が11年連続で受賞したほか、東日本酒造協業組合(二本松市)と名倉山酒造(会津若松市)も10年連続と記録を伸ばした。東日本酒造協業組合は県が把握している2002年度以降では県内最多の15回目。

 県庁では、記念パネルがお披露目され、内堀雅雄知事は「厳しい状況の中で、蔵元のみなさんは苦労しながら、全国、世界で認めてほしいとの強い思いで挑戦を重ねてきた」とたたえた。県酒造組合の新城猪之吉会長は「福島県の品質力の素晴らしさを改めてもう一歩表現できたなと思っている」と喜んだ。

 JR福島駅前の県観光物産館(コラッセふくしま)では受賞銘柄が振る舞われた。埼玉県ふじみ野市から単身赴任している一般社団法人職員、小林庄次郎さん(57)=福島市桜木町=は「福島の酒はコメや水などがはっきり味に出て、どれも間違いない。土産物で持って行くとみんなに喜ばれる」と笑顔で話した。

 6連覇の背景には、県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターの存在がある。酒米やこうじ、温度管理などを詳細に分析してデータ化するなど、仕込みのマニュアルを作って蔵元に伝えてきた。県酒造組合も清酒アカデミー職業能力開発校を創設して担い手を育成してきた。

 また、1995年にはこれまで横のつながりがなかった県内約30の蔵元が研究会を発足。情報交換しながら技術力の向上に努めた。県酒造組合で技術委員長を務めた経験がある国権酒造の細井信浩社長は「ハイテクプラザ、清酒アカデミー、研究会の三つがうまく機能して6連覇につながった。今後は培った技術を生かして各蔵元がどう個性を出し、消費拡大に結びつけるかが課題」と話した。

 ◇全国新酒鑑評会

 1911年に日本酒の品質や製造技術の向上を目的に始まった国内最大規模の清酒鑑評会。前年の7月以降に製造された新酒が対象で、杜氏(とうじ)や国税庁の鑑定官らが味や香りを審査し、入賞酒を決める。このうち特に優秀な銘柄には金賞が贈られる。酒類総合研究所と日本酒造組合中央会(東京都港区)の共催。106回目となる今回は全国から850銘柄が出品され、入賞は421銘柄、金賞は232銘柄だった。

 ◇金賞受賞銘柄と蔵元

銘 柄    製 造 場   市町村

金水晶  金水晶酒造店    福島市

廣戸川  松崎酒造店     天栄村

雪小町  渡辺酒造本店    郡山市

三春駒  佐藤酒造      三春町

東豊国  豊国酒造      古殿町

人気一  人気酒造      二本松市

奥の松  東日本酒造協業組合 二本松市

会津中将 鶴乃江酒造     会津若松市

名倉山  名倉山酒造     会津若松市

会津宮泉 宮泉銘醸      会津若松市

弥右衛門 大和川酒造店    喜多方市

笹正宗  笹正宗酒造     喜多方市

國権   国権酒造      南会津町

田島   会津酒造      南会津町

榮四郎  榮川酒造磐梯工場  磐梯町

萬代芳  白井酒造店     会津美里町

學十郎  豊国酒造      会津坂下町

一生青春 曙酒造       会津坂下町

又兵衛  四家酒造店     いわき市

 ◇「一つ一つ手抜かず」11年連続金賞 国権酒造

 南会津町の国権酒造は、大吟醸酒「國権」で11年連続の金賞受賞を果たした。細井信浩社長(46)は「今年は酒造りに苦労しただけに杜氏(とうじ)や蔵人はホッとしていた」と喜んだ。

 1877年創業。出品作は35%まで精米した兵庫県産の山田錦を奥会津の清らかな水で仕込み、1年間ゆっくり熟成させた。華やかな香りと、柔らかくきめ細かな口当たりが特長だ。

 今年は過去10年で最も金賞の自信がなかったという。通常より酒米が溶けやすく、味に切れがなくならないか不安だったからだ。仕込み水を調整し、酒米を硬めに蒸すなど、例年以上に気を使った。細井社長は「受賞は紙一重。一つ一つの作業に手を抜かず、丁寧に仕込む姿勢が結果につながったのではないか」と話す。

 東日本大震災後は風評被害もあって県内の日本酒には厳しい状況が続く。細井社長も香港のレストランで、客に「なぜ福島の酒を飲ませるのだ」と言われたことがある。しかし、震災から7年が過ぎ、「いつまでも風評のせいにするのは違うような気がする」とも話す。

 「各蔵元に実力がないと6連覇はできない。これからもお互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、消費者に喜んでもらえる酒を造りたい」。さらなるレベルアップを誓った。【湯浅聖一】

最終更新:5/18(金) 10:19
毎日新聞