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<大阪・住吉>反差別の魂、沖縄へ 交流センターの母子像

5/18(金) 14:10配信

毎日新聞

 ◇解体避け移転

 今年度中の解体が決まっている大阪市住吉区の「市民交流センターすみよし北」(旧住吉解放会館)の外壁に取り付けられた巨大な母子像が、沖縄に移されて保存されることになった。彫刻家の金城実さん(79)=沖縄県読谷村=が約40年前、地元住民たちの部落差別解消への思いを背負って制作した像だ。住民たちは別れを惜しみつつ、「これからは沖縄差別の解消に向けたシンボルにもなってほしい」と願う。【大久保昂】

 像は子どもを抱いて差別と闘う母親の姿をかたどり、「解放へのオガリ」と名付けられている。オガリとは地元の言葉で「叫び」の意味。高さ12.3メートル、幅7メートル、重さは約3トンに達するとされる。

 制作のきっかけは、被差別部落の生活環境の改善などを目指す同和対策事業特別措置法の施行(1969年)だ。この地区では同法に基づき、住民が町づくりに参加する形で公共施設や住宅の整備が進んだ。その中で「公共施設の壁に文化の象徴のようなものを作れないか」という声が上がった。沖縄県出身で、奈良県大和高田市を拠点に活動をしていた金城さんに協力を依頼した結果、母子像の制作が決まった。

 金城さんはアトリエを構えて泊まり込み、住民の意見を取り入れながら制作を進めた。夜な夜な酒を酌み交わし、沖縄の女性が見せ物として展示された「人類館事件」(1903年)や沖縄戦のことを話してくれた。住民の矢野直雄さん(70)は「金城さんとの交流を通じ、沖縄が受けてきた差別や『文化とは何か』ということについて、多くの住民が学んだ」と振り返る。

 こうして完成した母子像は77年2月、解放会館の壁面に掲げられた。近くの保育所に長年勤めた木本久枝さん(83)は像を見上げる度に、識字教室の仲間や差別解消のために闘った地域の先輩たちを思い出すという。「像にはみんなの魂がこもっている。私はあの像に育てられた」

 しかし、大阪市の行財政改革のあおりで母子像は危機に直面する。交流センターは2015年度末に閉鎖され、取り壊しが決まった。「地域のシンボルを何とか後世に残したい」。住民たちは沖縄に戻って創作活動を続ける金城さんの意見も聞き、沖縄に移して保存することにした。

 母子像は既に同センターから取り外され、近く沖縄に向けて送られる。木本さんは「元気なうちに必ず、沖縄に会いに行きたい」と話している。

 住民らは沖縄への移設費用として800万円を目標に寄付を募っている。部落解放同盟大阪府連住吉支部(06・6674・2521)。

最終更新:5/18(金) 16:14
毎日新聞