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台湾、“アジアの虎”をはるかに超えた存在へ

5/18(金) 15:42配信

EE Times Japan

 もはや台湾を「アジアの虎*)」とは呼べないだろう。「虎」という呼び方には、否定的な含みもあるからだ。だが、今や絶滅危惧種となってしまったトラとは異なり、台湾は、急速な経済成長によって、エコノミストが「アジアの虎」と好んで呼ぶ国の1つとなった。そして現在、同国は先端技術のエコシステムにおいて、これまで以上に中心的な役割を果たすようになっている。

*)1950~1990年代に急速な工業化を遂げ、さらに、非常に高い成長率を維持した韓国、シンガポール、香港、台湾の4国を「アジアの4頭の虎」と呼んだ。

 世界最大の半導体ファウンドリーであるTSMCをはじめ、エレクトロニクス産業の著名なプレイヤーの中には、台湾に本社を置く企業がいくつかある。Foxconnや、電子部品の主要な販売業者であるWPG Holdingsも、台湾を“故郷”と呼んでいる。機器メーカーにとっても、台湾はPCB(プリント基板)の主要な供給元である。さらに、台湾には、スマートフォンやデスクトップPC、ノートPC用ディスプレイの最大のサプライヤーの1つであるAU Optronicsも拠点を置いている。

 急速に変化する環境の中、また、他のエレクトロニクス大国との競争に直面する中、台湾が21世紀をさらに深く進んでいくには、継続的な協業関係が不可欠だ。

●中国からの圧力

 皮肉なことに、台湾は、台湾経済の直接的な受益者である中国からのプレッシャーにも直面している。中国の電子部品組み立て分野やサプライチェーンにおける優位性の一部は、台湾企業によって生じたものでもある。台湾企業が最先端のファウンドリーサービスを武器に、半導体市場に深く参入していった背景には、中国が既に組み立てや生産分野で主導権を握っていたことがある。

 現在、そして今後数年間の台湾を支える礎は、政府や民間セクターの歴代のリーダーたちによって、何十年も前に築かれたものである。

 かつてのリーダーたちは、台湾を世界トップレベルの経済国の1つとして繁栄させるため、地政学的な障壁の克服に挑んだ。さらに、台湾は主要な天然資源に恵まれていないため、技術分野に不可欠な専門知識を開発することへと舵を切った。

 やがて台湾は、TSMCの創設者であるMorris Chang氏をはじめとする、先端技術のリーダーたちが期待した以上の成功を遂げた。Chang氏は米国スタンフォード大学と米国マサチューセッツ工科大学を卒業後、TSMCを設立し、同社を世界トップの半導体サプライヤーに育て上げた人物である。

 Chang氏は、87歳を迎える1カ月前となる2018年6月に、TSMCでの地位を離れる予定である。Change氏の引退は、台湾をエレクトロニクス大国に作り上げた“古参兵たち”の時代の終わりを告げる出来事だといえよう。同国のエレクトロニクス産業の新たなリーダーたちは、Chang氏がTSMCを設立した30年前に克服したものとは、少し違った課題に直面している。

●台湾の現在の課題

 台湾の現在の課題は、中国による支配への対抗策を見つけることと、中国以外の競合先を払いのけることである。中国はエレクトロニクスのサプライチェーンで強い影響力を持つようになったが、実はその“立役者”の1人が台湾だった。台湾や日本、欧米諸国が、巨額の資金や多くの専門知識を中国に投じたことによって、中国はエレクトロニクスの製造拠点に姿を変えた。

 台湾にとって、中国は難問そのものだ。その爆発的な成長の恩恵を受けると同時に、その犠牲にもなっているからだ。

 外部からの圧力に加えて、台湾の人口構成も問題視されている。出生率が比較的低く、人口における老年層の比率が高まっていることから、国際競争力が損なわれる恐れがあるからだ。台湾はそのようなハードルを懸命に克服しようとしているが、国際通貨基金(IMF)によると、アジア経済地域の他の国々も同様の問題に直面している。

 IMFは、最近発表したレポートの中で「アジア経済地域の国々の多くは、高齢化に伴う生産性の伸びの鈍化を含め、重大な中期的課題に直面しており、構造改革が求められている。中には、構造改革に加えて、財政支援が必要な国もある。世界経済がますますデジタル化する中、一部の新しい技術には、真の変革をもたらす力があるが、同時に新たな課題を生み出してもいる。アジアは、デジタル革命の多くの側面で既にリーダーとなっているが、最先端にとどまり、技術的進歩から最大限の利益を得るには、情報通信技術、貿易、労働市場、教育といったさまざまな領域での政策対応が必要となる」と述べた。

 台湾はこれまで、IMFが推奨する政策変更を積極的に実行してきた。恐らく、台湾が次のフェーズへと移行する中で期待できる最大の利益は、経済の弾力性だろう。加えて、TSMCのChang氏をはじめとする重鎮たちが、彼らの“資産”を新世代のビジネスリーダーへと確実につなげ、維持してもらうために、次世代の人材育成に意欲的に取り組もうとしていることも、台湾に大きな利益をもたらすはずだ。

最終更新:5/18(金) 15:42
EE Times Japan