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<漫画喫茶殺人>フロア内追い回し刺す 名古屋

5/18(金) 19:02配信

毎日新聞

 名古屋市中区錦3のビル9階にある漫画喫茶で客の愛知県尾張旭市井田町3、銀行員、大竹智之さん(35)が刺殺された事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された住所不詳、無職、稲田府見洋(ふみひろ)容疑者(22)は大竹さんに言いがかりをつけて襲い、数分間にわたりフロア内を追い回して頭や背中などを多数回刺していた。愛知県警中署への取材で分かった。

 稲田容疑者は「むかつくことがあり、誰でもいいから刺してやろうと思っていた。ささいな物音でもいらいらして限界にきてやった」と供述しているという。大竹さんと面識はなく、中署は通り魔的事件とみて容疑を殺人に切り替え、当時の精神状態も含めて詳しい経緯を調べている。

 捜査関係者によると、大竹さんは資格取得に向けた勉強のため漫画喫茶に来ていた。

 稲田容疑者は17日午後8時20分ごろ、漫画喫茶の店内で大竹さんを殺害しようと考え、持っていた果物ナイフ(刃渡り15センチ)で頭などを刺したとして現行犯逮捕された。

 中署によると、稲田容疑者は同日午後6時ごろ、大竹さんは同8時ごろに客として入店し、一つ空けて隣同士の個室(ブース)を利用していた。

 稲田容疑者はいきなり大竹さんのブースの扉を開けて「物音がうるさい」と言いがかりをつけ、果物ナイフで刺した。店内の防犯カメラの映像などから、稲田容疑者はブース外の通路を身を守りながら逃げる大竹さんを追いかけ、襲っていた。

 大竹さんは頭や首、背中、胸など上半身を中心に多数回刺されたり切られたりしていて、司法解剖の結果、死因は出血性ショックと判明した。

 稲田容疑者は福島県出身で最近、名古屋市に来た。逮捕当時、所持金は2万円程度で、酒は飲んでいなかった。逮捕直後は「自分が死ねなくて、むかついて刺した」と供述したが、その後は「1週間ほど前に現場近くで果物ナイフを拾い、誰でもいいから刺そうと思って持ち歩いていた」などと話し、「世の中が嫌になった」との趣旨の話もしているという。【井口慎太郎、駒木智一】

 ◇家族に気を使い、資格の勉強

 殺害された大竹智之さんは、1月に購入したばかりの新居で身重の妻と2歳の長男と3人で暮らしていた。8月に第2子が生まれる予定で、小、中学校で同級生だった友人の男性(35)は「順風満帆の人生を歩んでいたのに……」と言葉を詰まらせた。「まじめで正義感の強い性格だった」と振り返り、「事件の一報を聞いたとき、誰かの身代わりになって犠牲になったと思った」と話した。

 男性によると、大竹さんは子育て中の妻や子どもに気を使い、仕事後に資格の勉強をする時は、自宅ではなく漫画喫茶を利用することが多かった。小学生のころから野球を続け、現在も男性と一緒に地域の草野球チームに所属し、キャッチャーとして中心を担っていた。試合に長男を連れてきた時、「この子にも野球をやらせたい」と語る笑顔が忘れられないという。

 大竹さんは亡くなったが、チームは20日の練習試合を予定通り行う方針だ。男性は「あいつなら『絶対に試合をしろ』と言うはずだと、みんなで話し合って決めた」と述べ、目に涙を浮かべた。【竹田直人】

最終更新:5/18(金) 23:22
毎日新聞