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「ダイアナ元妃の悲劇」教訓に国民の王室へ変革

5/18(金) 7:55配信

産経新聞

 英国のヘンリー王子と米女優、メーガン・マークルさんとの結婚には紆余(うよ)曲折もあった。英王室がアフリカ系米国人の血を引き、離婚経験のあるマークルさんを迎え入れた背景には、離婚と非業の死で英王室の権威失墜を招いたダイアナ元妃の悲劇を教訓に新時代に合わせ変革しようという狙いがある。英国社会は白人至上主義が根強いだけに、ヘンリー王子夫妻の誕生は「変化の激震をもたらす」(デーリー・テレグラフ紙)との期待も高まる。

 2016年秋に交際が発覚した当初から反対論が噴出した。マークルさんが(1)アフリカ系米国人の母親と欧州系米国人の父親の「バイレイシャル(異人種間、特に白人と黒人の混血児)」(2)離婚歴がある(3)宗教が「英国国教会」ではなくカトリック(4)女優で年上、米国人-などの理由からだ。

 特に英王室がこだわったのが肌の色だったとされる。英国は移民を受け入れ、多文化共生が進む社会だが、英国社会には支配階級を中心に大英帝国時代からの白人至上主義が厳然と残る。

 最終的に女王がヘンリー王子の結婚を受け入れたのは、ダイアナ元妃の悲劇があったからだとされる。英王室は古い伝統と慣習にこだわり、チャールズ皇太子の結婚相手に、初恋の相手のカミラ夫人ではなく、貴族で若く、恋人の噂もなかったダイアナ元妃を選んだ。その結果、離婚とダイアナ元妃の痛ましい事故死につながり、国民の英王室離れが加速した。

 ヘンリー王子は広報を通じて16年11月、マークルさんについて一部報道が人種差別的だと非難する異例の声明を発表した。

 人種差別に立ち向かう姿は、母親、ダイアナ元妃の教育が影響しているとの見方がある。ダイアナ元妃は、王子らをファストフード店などに連れ出し、ホームレスの慰問にも同行させた。

 またダイアナ元妃自身、エイズウイルス(HIV)感染者と握手したり、紛争地域の地雷撤去に参加したりして、弱者に差別なく手を差し伸べた。

 ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)精神をヘンリー王子が引き継ぎ、人種や国籍の違いや離婚歴の障害を乗り越え、母親がなし得なかった「国民の王室」への改革を、自身の結婚で完遂しようとしているようだ。

 英世論調査会社ユーガブが昨年11月に調査したところ、王室に入る人物が「(白人ではない)異なる人種」を69%が認め、「英国人以外」を79%、「離婚歴あり」を78%がそれぞれ認めるとの結果が出た。英国民も、2人の結婚を前向きに受け止めているようだ。

 ダイアナ元妃とマークルさんの伝記を出版した英王室に詳しい作家のアンドリュー・モートン氏は、ヘンリー王子の結婚により「英国は多文化イメージが促進され、長年守ってきた抑圧的な英王室の伝統を放棄し、新風を吹き込むだろう」と指摘。英メディアは「英王室と支配階級の在り方に大きな変化をもたらす」と論評した。 (ロンドン 岡部伸)

最終更新:5/18(金) 7:55
産経新聞