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パレスチナ袋小路 対決…ハマスを住民も批判/対話…打つ手ない自治政府

5/18(金) 7:55配信

産経新聞

 【エルサレム=佐藤貴生】パレスチナ自治区ガザの大規模デモは、住民らのイスラエルに対する厳しい敵意を改めて示した。ただ、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスにとって、今後の武力闘争に活路が開けたわけではない。一方、ヨルダン川西岸の自治区を統治するパレスチナ自治政府はイスラエルと和平交渉を行ってきたが、国家の実現に向けた前進はみられない。米大使館のエルサレム移転は、パレスチナの「強硬路線」も「対話路線」も、袋小路に陥っていることを浮き彫りにした。

 ガザのデモは、14日に60人、15日に2人が死亡したが、16日の死者は伝えられず、沈静化の兆しもある。

 イスラエル建国翌日の1948年5月15日に第1次中東戦争が始まり、故郷を追われたパレスチナ民族の悲劇「ナクバ」(大惨事)。デモはそれから70年になるのに合わせ、3月から行われてきた。

 イスラエルが国際的な非難を浴びた点では、ハマスの一定の目的は達せられた。しかし、イスラエルや米だけでなく、欧州もハマスを「テロ組織」に指定している状況に何ら変わりはない。

 住民がハマスをどれほど支持しているかも不透明だ。ハマス当局者は16日、死者62人のうち50人は自分たちのメンバーで、一般人は12人だったと述べた。ガザに住む男性は「2人の子供にはデモには絶対に行くなと教えている。ハマスは自分たちの目的のために住民を見殺しにしている」と話していた。

 反イスラエルの強硬姿勢を貫くハマスと対照的に、ヨルダン川西岸ラマラを拠点とするパレスチナ自治政府は、イスラエルとの和平協議を進めてきた。

 しかし、協議は2014年に中断したままだ。アッバス議長は米大使館の移転を批判し、米主導の和平協議を拒否しているが、その間にもイスラエル側は「不可分の首都エルサレム」の既成事実化を進める見通しで、ハマス同様、欧州などの国際世論に訴えるしか手がないのが実情だ。

 そもそも、自治政府の懐に入る年間1億ドル(約110億円)以上の輸入関税の徴収は、イスラエル側が代行している。11年には送金を止められたこともあり、財政基盤からして脆弱(ぜいじゃく)だ。

 アッバス氏は83歳の高齢で権力基盤は弱く、議長選は長らく実施されていない。パレスチナ人からは「彼には何もできない。イスラエルのやりたい放題だ」といった批判の声が聞こえてくる。

 ラマラで不動産会社に勤めるファリードさん(48)は、「私たちはヨルダンに渡り海外旅行にも行け、外国で金を稼ぐこともできる。ガザとは環境がまったく違う」と話した。

 この言葉通り、イスラエルはガザをヨルダン川西岸から切り離して遮断し、「兵糧攻め」にする戦略を続けるだろう。一方で、自治政府も手も足も出ない状況に追い込まれている。エルサレムを首都とするパレスチナ国家の建設。その悲願と現実の隔たりは大きくなるばかりだ。

最終更新:5/18(金) 7:55
産経新聞