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外科医も“恐怖”だった食道がん 今は内視鏡だけの治療で完遂も

5/18(金) 14:00配信

デイリースポーツ

 食道癌(がん)…。私のように20年以上前に外科医だった医師が聞くと、ゾッとする言葉の一つでした。今もそうですが、私が医師になった頃は、食道癌がんは命がけの手術の一つでした。

 患者さんの主治医になると1カ月は病院から出られなくなることは珍しくなく、手術日には、泊まり込みに備えて新しいパンツを30枚以上用意して臨みました。

 60代以上の男性に多く、喫煙、飲酒、熱い食事や繰り返す逆流性食道炎が危険因子とされていて、コップ1杯程度のビールで顔が赤くなるフラッシャーと呼ばれる人たちも危険とされています。食道には胃や大腸と違い漿膜(しょうまく)という膜がないため、進行すると簡単に周囲の重要な臓器である気管、肺、大動脈、肺静脈、肺動脈、椎体などに浸潤してしまうのです。

 また、癌は食道の内側から発生し、表層近くに血管やリンパ管が発達しているので比較的早期に肺、肝臓などに転移しやすい。愛煙家、愛飲家はぜひ気を付けて、1年に一回は内視鏡検査を欠かさないで頂きたい。

 怖い話をつづってきましたが、最近は医療機器の発達により特殊な光線を食道にあてることで、早期食道癌の発見が容易となってきました。早期なら内視鏡だけの治療で完遂することがあり、食道癌といえども恐くはなくなってきました。

 内視鏡手術も進歩しており、以前なら不可能だった広範囲に及ぶ早期食道癌でも内視鏡的切除が可能な“達人”も増えています。以前はお腹、胸、首の3箇所を開けて施行する大手術でしたが、最近は小さな穴からカメラを入れ最小限の侵襲で終了させることができる施設も増えています。

 抗がん剤、放射線治療の手法も大幅に改善されているので、予後の改善にも期待を寄せたい疾患の一つです。

 ◆谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで「町医者の独り言」を連載中。

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