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20歳の女性DJが、戦場となった故郷のラジオで伝えたこと

5/18(金) 6:03配信

BuzzFeed Japan

「国を持たない世界最大の民族」を襲う暴力

20歳のディロバン・キコは小さなラジオ局のDJ。街を歩いてはさまざまな情報を取材し、朝の番組で話す。

彼女が普通のDJとちょっと違うのは、イスラム過激派の攻撃で廃墟となったシリアの故郷コバニに踏みとどまって取材と放送を続けてきた、ということ、そしてラジオ局は、自分たちが手作りで立ち上げたものだ、ということだ。

コバニは、シリア最北部の街。シリアの公用語アラビア語では「アイン・アル・アラブ」と呼ばれる。「コバニ」はこの街に暮らす人々、クルド人が話すクルド語での呼び名だ。

ディロバンもクルド人で、アラビア語とクルド語を話す。ラジオ放送はクルド語だ。シリア第二の都市アレッポにある名門のアレッポ大学で社会学を学び、将来の夢は教師になることだった。しかし、シリアの内戦でアレッポの街は崩壊して勉強どころではなくなり、コバニの街は戦闘で破壊された。【BuzzFeed Japan/貫洞欣寛】

5月12日からドュキュメンタリー公開

5月12日から日本公開が始まった「ラジオ・コバニ」(http://www.uplink.co.jp/kobani/)は、コバニで生きるディロバンの日々を追った、ドキュメンタリー映画だ。


監督はクルド人のラベー・ドスキー氏。クルド人はシリア、イラク、トルコ、イランなどにまたがって広がる民族で人口約3000万人。独自の言語と文化を持つが、その居住域がいくつもの国に分割されていることから、「自らの国を持たない世界最大の民族」と言われる。

イラクでもシリアでもトルコでも、少数民族として差別を受けたり、独立や自治を求める運動を弾圧されたりして辛酸をなめてきた点が共通している。シリアではクルド人は人口の1割を占め、主にコバニなどトルコやイラクとの北部国境地帯に暮らしている。戦乱や弾圧から逃れ、日本で難民申請をしている人もいる。

監督はイラクのクルド人

ドスキー監督はイラク北部ドホーク出身で、1996年にオランダに移住した。イラク北部は現在、クルド人によるクルド地域政府がつくられ、強力な自治権だけでなく独自の軍事組織ペシュメルガを持ち、アラブ人が多数を占めるイラク中南部からは半ば、独立した状態にある。

1991年の湾岸戦争と2003年のイラク戦争で、イラクで独裁を続けたアラブ人によるフセイン政権が力を失ったことで、自治の獲得が可能になった。

シリア北部では、2011年以降に激化したシリア内戦でアサド政権が支配力を失ったことからクルド人が自治を始めた。コバニは、その主要都市の一つだ。
コバニは2014年秋から2015年1月にかけて、世界的な注目を浴びた。イスラム過激派「イスラム国(IS)」の戦闘員らに占領されたからだ。私(貫洞)も当時、取材のため訪れた一人だった。

この街はトルコとの国境となっているシリア北部の要衝。ここを占領すれば人員や物資の搬入が容易になるうえ、シリア北部のクルド人居住地域を分断できる。

それだけにISの攻勢は激しく、2014年9月には一度陥落し、多くの市民がトルコや周辺地域に逃れた。米軍の空爆支援やイラク北部のペシュメルガの派兵を受け、シリアのクルド人組織YPGがISの掃討戦に乗り出し、翌年1月26日に再奪還した。ドスキー監督は、この戦闘のさなかにトルコから密入国してコバニに入り、取材を続けてきた。2014~16年の取材期間中、監督のコバニ入りは計九回にのぼる。

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最終更新:5/18(金) 9:39
BuzzFeed Japan