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【佐藤優徹底解説:激動する北朝鮮問題】金正恩の“対話路線”は本物か

5/18(金) 12:11配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

これまで核とミサイルでアメリカや近隣諸国を“脅し”続けてきた北朝鮮が、突然対話路線に転じたのはなぜか。

【関連画像あり】佐藤優徹底解説:激動する北朝鮮問題

ここに来て、北朝鮮側は南北高官対談を急遽中止し、「米朝首脳会談の中止」までほのめかしている。一体彼らの対話路線はどこまで本物なのか。

作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏に北朝鮮情勢を徹底解説してもらう2回目は、金正恩氏の狙いについて。

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「変節」ではなく「戦略的選択」

浜田敬子BIJ統括編集長(以下、浜田):佐藤さんは今の北朝鮮をどうご覧になってますか。なぜ北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、ミサイル・核外交から一転、「対話外交」に、そして非核化に“転向”“変節”したのでしょうか?

佐藤優さん(以下、佐藤):それは、金正恩体制が確立されたということです。象徴的なのは、2018年の元日の国民向けのテレビ演説で金正恩氏が背広を着て出てきたこと。そこには金日成・金正日のバッジがなかったのです。要するに父・金正日(朝鮮労働党総書記)や祖父・金日成(国家主席)の遺訓政治から脱却し、「フリーハンド(自由裁量)」でやっていくと宣言したのです。フリーハンドには、核兵器を作って大陸間弾道ミサイルを作るという選択肢もあれば、それを廃絶するという選択肢もあるということです。

浜田:なるほど。最後まで強硬路線で体制を維持するという選択肢と、大胆に妥協するという選択肢があったと。そう考えると、今回は「変節」というよりは「選択」ということになりますね。

佐藤:そうです。金正恩氏が戦略的に選んだということです。私が2017年から何度も強調して言っていることですが、世界は制裁と圧力の時代はすでに終わり、対話と妥協の時代に入ったのです。金正恩氏もトランプ大統領もこの基本文法に従っているということです。

浜田:いつの段階から金正恩氏は、その選択肢を考えていたんでしょうか。

佐藤:遅くとも2014年には考えていたと思います。彼の戦略的な“目”や、情報を分析する能力・判断力はとても優れています。

浜田:異母兄である金正男氏など親族を殺害し、朝鮮人民軍幹部を処刑にして、「非常に残虐な人間」という印象もありますが。

佐藤:精神に変調をきたしている人間は、一つのシステムを長期間維持することはできません。金正恩氏の「残虐性」には自らの権力基盤を強化するという合理的計算があります。

もう少し掘り下げて、金正恩氏の内在的論理を考えてみましょう。73年前の日本の「國體(国家の在り方)」を考えるとわかります。1945年8月15日の玉音放送によって日本の戦争は終わりました。諸外国は日本がそういう終わり方をすんなりと受け入れられるか危惧していました。「日本民族が歴史に残ればいい」と考えて、最後の1人までが神風攻撃の延長線上で徹底抗戦を続けるのではないかと。でも日本人はそんな道は選ばなかった。そういう感覚とそれほど離れてはいません。

ただし気がかりなのは彼の責任感についてです。例えば日本の政治家やトランプ氏は、人類を何千人何万人と巻き添えにするような核戦争を起こしてはならないという責任感を持っています。彼にそれがあるかどうかは分かりません。

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最終更新:5/18(金) 12:11
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