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【佐藤優徹底解説:激動する北朝鮮問題】金正恩の“対話路線”は本物か

5/18(金) 12:11配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

五輪参加表明で韓国に恩を売った北朝鮮

浜田:北朝鮮はなぜこのタイミングで、対話という「選択」をしたのでしょうか?トランプ氏の経済制裁や圧力が効いたと思われますか。

佐藤:むしろ韓国ファクターです。南北首脳会談開催発表のタイミングをチェックしてみてください。発表の直前に韓国の文在寅大統領の後継者といわれていた安熙正(前忠清南道知事)のレイプ疑惑が報道され、大ニュースになっていた。そのタイミングで北朝鮮が(南北首脳会談の開催を)発表したことで、レイプ疑惑のニュースが飛んだ。これは明らかに文在寅政権への助け舟です。金正恩氏はずっとこういうタイミングを計っていたんです。

直接的なスタートは、今冬の平昌五輪で金正恩氏の妹、金与正氏がペンス米副大統領に会いたいと言った時です。結局、北朝鮮側がドタキャンして会談は実現しなかった。でも、北朝鮮は最初からドタキャンするつもりだった。なぜならロイヤルファミリーである与正氏が交渉で失敗するわけにはいかないからです。単に瀬踏みをしたかった。この件で、アメリカには少なくとも北朝鮮と対話する意思があるということがわかったのです。

浜田:与正氏は、正恩氏にとってどういう位置付けですか。

佐藤:2013年に刊行された正恩氏の著作集に、彼の書いた手紙が掲載されています。そこには、人の血は遺伝しても思想は遺伝しない、と書かれています。これは、血筋と正しい思想、その二つを持っていないとだめだということです。

また、正日氏が2001年にロシアを訪問した際、極東連邦管区大統領全権代表のプリコフスキー氏に対して、正恩氏と与正氏には政治的適性があると話したそうです。今の北朝鮮はその見立て通り、正恩氏が指導し、与正氏がそれを助けています。おそらく、冒頭で言った金正恩体制も、この二人が協力してつくったものでしょう。血筋と思想の両方を持つ与正氏は、正恩氏と一体と見ていいと思います。

(構成・宮本由貴子、写真・今村拓馬)


佐藤 優(さとう・まさる):作家、元外務省主任分析官。1960年東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。85年外務省入省。在ロシア連邦日本国大使館勤務後、対ロシア外交の最前線で情報収集・分析のエキスパートとして活躍。主な著書に『国家の罠-外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞)『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)など。最新刊は『十五の夏』。

宮本由貴子 [ライター・編集者] and 浜田 敬子 [Business Insider Japan]

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最終更新:5/18(金) 12:11
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