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HPVワクチン薬害説を支える論文撤回 英科学誌が「不適切」と判断した2つの理由

5/18(金) 12:25配信

BuzzFeed Japan

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を予防する「HPVワクチン」。世界中の研究で安全性や効果が明らかになっているにもかかわらず、日本でほとんどうつ人がいなくなったのは、健康被害への不安が未だに払拭されていないからだ。

その不安を後押ししてきたのが、日本の一部の医師が提唱している仮説「HANS(HPV関連神経免疫異常症候群)」だ。ワクチンの成分が脳内に異常をもたらし、神経や免疫系に悪影響を与えているとする仮説で、薬害を訴える人の一部が理論的な支えとしている。

そのHANSのメカニズムを解明するとして東京医科大学などの研究グループが書いたマウス実験の論文が、掲載していた英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」によって今月11日、撤回された。

同誌は、「実験手法が研究目的に対して適切でない」と撤回理由を示しているが、著者らは撤回に同意していない。

一方、論文掲載以来、問題を指摘してきた北海道大学のがんの疫学者、シャロン・ハンリー氏らは撤回を歓迎しつつ、「この論文が予防接種プログラムに与えたダメージによって、日本や世界の現世代の女子たちが被った将来の健康リスクは重大で致命的だ」と強く批判し、掲載誌の論文評価の甘さも指摘している。

そもそも、英科学誌が撤回を決断した理由とは何なのか。
【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】

論文はマウス実験でHPVワクチンの脳への影響を検討

撤回された論文は以下のものだ。

「Murine hypothalamic destruction with vascular cell apoptosis subsequent to combined administration of human papilloma virus vaccine and pertussis toxin(HPVワクチンと百日咳毒素の併用投与後の血管細胞アポトーシスによるマウス視床下部破壊)」

2016年11月11日に公開され、1年半後の今月11日に撤回された。

東京医科大学医学総合研究所講師の荒谷聡子氏が筆頭著者で、HANS提唱者の同研究所元所長で難病治療研究振興財団理事長、西岡久寿樹氏や同研究所教授の中島利博氏らが共著者として名を連ねている。

研究は、HPVワクチンと百日咳の毒素をうったマウスと、対照群を比較する形で行われた。

その結果、ワクチンや百日咳毒素をうったマウスでは、運動機能や反射に異常が見られ、脳にも損傷が確認されたとした。そして、「これらのデータは、HPVワクチンに感受性のある被接種者が特定の環境要因の下でHANSを発症する可能性があることを示唆している」と結論付けている。

脳は有害となる物質が血流によって入り込むのを防ぐために、「脳血液関門」という関所のような場所で、脳内に入る物質を選り分ける。生命活動を維持する司令塔となる脳がダメージを受けては生物は生きられないからだ。

実験では、この脳血液関門から薬液を人工的に通すためにHPVワクチンに加え百日咳毒素を投与したとしている。また、ワクチンは0.1ミリリットルを5回、計0.5ミリリットル投与している。

このワクチンのマウスへの投与量は、人に接種する3回のうちの1回分だ。体重40キログラムの少女に換算すると通常の1000倍の投与量という。

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最終更新:5/19(土) 5:59
BuzzFeed Japan