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夏目前、強毒「ヒアリ」警戒…国内初確認から間もなく1年、住宅地にも

5/18(金) 15:03配信

読売新聞(ヨミドクター)

 強い毒を持つ南米原産の「ヒアリ」が国内で初めて兵庫県内で確認されてから間もなく1年。これまでは港湾などで早期発見・駆除され、定着していないとみられるが、今月9日には大阪府内の住宅地で女王アリ1匹の死骸が見つかった。今後、気温が高くなり、繁殖が活発になる時期を迎えることから、環境省などは警戒を強めている。

■届いた家電製品から女王アリ、中国で紛れ込んだ可能性

 「インターネットで見たヒアリとよく似たアリがいる」

 9日、環境省近畿地方環境事務所(大阪市)に輸入業者から1本の電話があった。同府八尾市の顧客が自宅に届いた家電製品の段ボール箱を開けると、中から体長約7ミリの女王アリ1匹の死骸が見つかった。数日前まで生きていたとみられる。箱は中国・広東省で厳重に梱包(こんぽう)されており、中国で紛れ込んだ可能性があるという。

 国内の住宅地でヒアリが見つかったのは初めて。女王アリは一度に1000個以上の卵を産むため、生きていれば大量発生につながった可能性もあった。環境省の担当者は「野外に逃げ出して繁殖したら住民の生活に影響を及ぼす恐れがある。輸入した荷物と一緒に住宅地へ運ばれるリスクがあることを再認識した」と危機感を募らせる。

■12都府県の港湾周辺などで…

 初めてヒアリが見つかったのは昨年5月26日。広東省から神戸港へ届いたコンテナの中で500匹以上が発見された。昨年は12都府県の港湾周辺などで計26例を確認。少なくとも8例で女王アリが見つかった。7月には福岡市博多区で作業員1人が左腕を刺される軽症を負った。

 一方、地面での巣は見つかっていない。国立環境研究所(茨城県つくば市)の五箇(ごか)公一・生態リスク評価・対策研究室長は「重いコンテナを置く港湾周辺は頑丈に舗装された場所が多く、ヒアリは巣を作ることができなかったのだろう」とみる。

■環境省、自治体向けに見分け方講習

 南米原産のヒアリが北米へ生息域を拡大したのは、米国経済が大きく成長した20世紀前半。米国では農作物や電気設備の配線を食い荒らされるなどの被害が相次ぎ、年間の経済被害は数千億円規模とされる。近年、アジアの経済発展とともに、米国との交易が増えた中国などへ広がった。

 環境省は今年度、ヒアリなど外来生物の対策費として6億5000万円を計上。全国68港湾で生息状況を調査し、自治体職員らを対象に見分け方などの講習を開く。

 外見だけでは識別が難しいため、国立環境研究所はDNAを利用して約2時間でヒアリかどうかを判断できる手法を開発。今月から自治体に検査器具の試験配布を始める。昨年の26例のうち、少なくとも16例は中国からのコンテナを通じて侵入していることから、同研究所は今夏、中国から研究者を招いてヒアリ対策を議論する。

 兵庫県立大の橋本佳明准教授(アリ学)によると、中国では約15年の研究でヒアリを駆除できる「毒餌」を開発し、根絶に成功した地域もあるという。橋本准教授は「日本だけでの対策には限界があり、主要な貿易相手国との情報共有などが不可欠だ」と強調する。

 環境省は、疑わしいアリを見つけた場合の相談ダイヤル(0570・046・110)を、火曜と木曜を除く午前9時~午後5時に開設。刺された時は20~30分は安静にし、体調が急激に悪化したら速やかに受診する必要がある。

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【ヒアリ】 南米原産の赤茶色のアリ。働きアリは体長2・5~6ミリ。腹部に毒針があり、刺されると焼けるような痛みを感じることから「火蟻」と書く。気温が30度を超えると繁殖が活発になる。ハチと同じ毒の成分を含むため、ハチに刺された経験がある人は強いアレルギー反応を起こす恐れがあり、注意が必要。2005年に施行された外来生物法で特定外来生物に指定された。