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日本初のミリオンセラーを達成した井上陽水のアルバム『氷の世界』

5/19(土) 18:00配信

OKMusic

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回は井上陽水の名盤『氷の世界』をピックアップ!

今でこそ、井上陽水の名前を知らない音楽ファンはいないだろうが、1972年の時点では陽水もまだ若手だったため、熱心なファン以外には知る人ぞ知る存在であった。しかし、彼の4枚目のアルバムとなる『氷の世界』が73年の終わりにリリースされると、どんどん売上げが伸び、2年経った頃には日本初のミリオンセラーを達成し、一躍、彼の名は全国にとどろき、大スターの仲間入りを果たすことになる。100週以上もベストテン内にあり、ロングセラーになりミリオンセラーにもなったというわけだ。これは、本作が極めて優れた作品であるからこそ成し得た成果だと言えるだろう。現在のJ-POP界では、リリース後(もしくは予約で)爆発的に売れるものの、半年ほどで忘れられるものが少なくない。長い間チャートに残る作品は、一生付き合っていけるほどの秀逸なものが多いが、中でも『氷の世界』は群を抜いているので、ぜひ聴いてみてほしい。
※本稿は2014年に掲載

1970年代初頭の日本は、どんな雰囲気であったか…

まずは『氷の世界』が出た73年頃の日本が、どんな時代であったのかを少し説明したいと思う。70年代初頭は、日本人の価値観そのものが変わりつつあった時代である。70年の「万国博覧会」「よど号ハイジャック事件」、71年の「朝露自衛官殺害事件」「山岳ベース事件」(ただし、発覚したのは72年。「あさま山荘事件」の犯人逮捕によって)、72年の「あさま山荘事件」など、国民の大きな関心を集めた事件が多かった。これらは戦後(1945年終戦)に起こった権力と反権力の抗争が、70年代に入っても未だに継続していることの証しであった。

ところが、72年の「あさま山荘事件」と、その発端となった「山岳ベース事件」が明るみになるにつれ、全国民がその事件の凄惨さに戦慄することになる。12名の学生運動の仲間(殆どが大学生)をリンチで殺すという事件は、反権力の立場を擁護していた人だけでなく、運動に関わっていた人までもが“学生運動家=殺人者”という認識を持つに至り、世間から完全に見離されることになるのだ。

また、73年には「第1次オイルショック」が起き、それまで経済成長を続けていた日本にとっては大打撃となった。これらの数々の事件が一般大衆に与えた影響は計り知れず、大いなる閉塞感が日本全体を包むようになっていく…。

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最終更新:5/19(土) 18:00
OKMusic