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【前田大志 インタビュー】誰の中にでもある“ひとり”を感情のままに歌っていきたい

5/20(日) 13:17配信

OKMusic

自分の中に確かにある孤独を歌にして、聴いている人の心に寄り添いたい。でも、不確かなことは歌いたくない。そんな真っ直ぐすぎるシンガーソングライター、前田大志が5カ月連続で無料配信を始める。今の心境を、信念を、じっくりと訊いてきた。

──前作のアルバムをリリースしてから1年半が経ちましたね。

はい。その時よりも作れる音楽が鮮明になってきたからこそ、次にリリースする曲は、自分らしさをもっと提示したいという想いで制作しました。

──その“自分らしさ”とはどんなものだと思いますか?

誰の中にもある“ひとり”の部分です。僕自身、誰かと一緒に騒いでいる時も、どこか俯瞰で自分のことを見ている瞬間があるんですよ。その時に感じる冷たい感触や感覚を切り取っています。

──まさにその想いが、6月から5カ月連続で無料配信される楽曲に表れていますよね。特に、1曲目の「明日」や2曲目の「ライブハウス」は、日常の中であふれている景色の中にあるけれども、あえて選ばないような言葉が詰め込まれていて、ドキッとしました。

ありがとうございます。きっと誰の中にも“ひとり”の部分があると思うんですよ。そういう部分にすっと入り込むような音楽を作りたいですよね。

──どんな時に曲を作っているんですか?

僕は基本的に心が沈んでいる時に曲を作るんです。ドン底まで沈んだ感情って曲にしていくうちに浄化されていって、出来上がる頃にはプラスよりプラスな感情にかわるんです。ライヴでそれらの曲を歌うと聴いてくれた人も同じ感情になってくれたりして、それがまた僕にとっての救いになるんですよね。

──ということは、曲は全て感情から生まれるからこそギミックは使っていないんですね。

まったく使っていないですね。「こうすれば気持ちよくなる」っていうギミック的なものもあるかとは思うんですが、それをやってしまうと歌っている時に気持ちがどうしても入りづらくなってしまうんです。だからこそ、エモーショナルに曲を作ることを大事にしています。

──ちなみに音楽的なルーツはどんなところにあるのでしょうか?

実は僕自身、音楽をあまり聴かないんです。それよりも映画や絵画を観てインスピレーションを受けることがすごく多いんですよ。特に「明日」は北野 武監督の映画『HANA-BI』を何度も観ていた時期にできました。ハッピーエンドではないし、大袈裟な希望もない。でも、観終えたあとはなぜか心が前を向いている。そういう”現実味の強い救い”みたいなものが色濃く出ている曲だと思います。

──その流れで「ライブハウス」を聴くと、確かに音楽的というよりも、映像的に感じます。

「ライブハウス」は1stアルバムをリリースしてから出会った人たちとの人間関係の中で出てきた言葉や描写がすごく多いんです。

──ものすごく伝えたいことがあふれている曲ですよね。

はい。僕が歌で生きていこうと決めてから、切磋琢磨してきた仲間が年月とともにどんどん減っていったんですよ。でも悲しいかな正直音楽を辞める気持ちも分かるし、まだまだ続けたい想いもある…そんな思いに揉まれながら”歌”への想いを綴ったのが”ライブハウス”です。

──きっと共感する人は多いと思いますよ。先ほどからお話を聞いていると、音楽に対してものすごくストイックな方だというイメージがあるのですが、プライベートではどんなタイプなんですか?

友達には“スーパーポジティブ”って言われます(笑)。

──嘘でしょ!?(笑)

本当です(笑)。考え方もそうですが、基本的にはものすごく弾けているんですよ。ただ、気分の浮き沈みが激しいんです。なので、気持ちが沈んだ時にだけ音楽と向き合い、その気持ちを歌詞と曲にしているんです。だから、ライヴを観に来てくれた人が物販で実際の僕と話すとそのギャップに驚く人が多いんです。

──あはは。

でも、僕は決してネガティブな曲を歌っているとは思っていないんですよ。それよりも本当のことを歌っていきたいんです。

──本当のこと?

はい。例えば“きっと明日は晴れるさ”と歌えたら一番気持ちが良いと思うんですが、実際晴れるかどうかは分からないじゃないですか。そういう不確かな希望に寄っかかってしまっていないかなっていうのはいつも考えてます。

──それが前田大志の信念なんでしょうね。

そうですね。僕のライヴに足を運んでくれている人は、ただ楽しみに来ているというよりも、物事の本質を気付きに来ているようなことがあると思っていて。僕の歌で、心のもやもやが嘘のない希望に変わってくれれば本望です。

──そして、3曲目となる「君の家からすぐのコンビニ」はこれまでの2曲とは違う、人間味のあるほっこりとした曲で、また違う印象を受けました。

この曲は慕情のないラブソングを書きたいなと思って書いたんです。こういったメッセージ重視ではない、絵画をさらりと観るような曲も“僕らしさ”だと思っているんです。他の2曲が濃いカツ丼なら、この曲は前菜。ずっと濃いカツ丼は食べ続けられないと思うので、こういった曲も楽しんでもらえたらと思います(笑)。

──このバラエティー豊かな曲たちが楽しめるライヴはぜひ体感してもらいたいですね。

はい。僕のライヴを観て帰る時に、“あー、楽しかった”だけだったら歌うたいとしては負けだと思っているんです。もちろんそう思ってもらえるのは素敵ですが、それよりもライヴハウスを出たあと。その後も次の日も次の年も聴いてくれた人の一歩一歩を変え続けるか。そこで勝負していきたいですね。

──現在制作中の2曲はどんな曲になりそうですか?

この3曲とはまた違うテーマから作った曲になります。合わせて5曲、全て無料リリースというのは別にリスクだと思っていなくて。でもお金の代わりに、いいと思ってもらえたら誰かにこの音源を渡してもらえたらなと思ってます。そして、ライヴに来てもらえたらそれが僕にとって最高のリターンなので。そうならざるを得ない完成度だと思っています。

取材:吉田可奈

OKMusic編集部

最終更新:5/20(日) 13:17
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