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金利40%、アルゼンチン経済危機

5/25(金) 18:06配信

ニュースソクラ

ペソ急落、国民の間にもドルへの資産逃避広がる

 国際金融市場でアルゼンチン・ペソの急落に注目が集まっている。約1年前には1ドル=15ペソ前後だったのが、22ペソ台まで下げた。

 同国中央銀行はペソ防衛のため4月下旬から外為市場に介入して50億ドルものドル売り・ペソ買い介入を実施したものの、全く効き目はなかった。このため、中銀は政策金利を矢継ぎ早に引き上げてペソ防衛に動いた。

 4月27日に27.25%から30.25%まで引き上げ、5月4日に3%引き上げて33.25%とした後も、翌5日に一挙に40%へと再々引き上げに追い込まれた。ペソは4日に1ドル=22.25ペソの最安値を記録した後、5日の利上げの後はさすがに21ペソ台に戻している。

 アルゼンチンで記憶に新しいのは、昨年6月に15年ぶりに国際資本市場へ鮮烈な復帰を成し遂げたことだ。このとき、アルゼンチン政府は27.5億ドルの100年債を発行して、応募倍率は3倍を超えた。

 世界的に超低金利が続く中で、年利7.9%という利回りが投資家にとって大変な魅力に映ったからだ。アルゼンチンはこの200年で8回、最近10年でも5回のデフォルトを起こしているにもかかわらず、世界的な超低金利が続く中で、投資家の利回り選好の強さを物語るものでもあった。

 しかし、100年債は、流通市場ではわずか5か月前に105セントを付けていたものが86セントまで価格は急落(金利は上昇)して投資家は多大の含み損を抱えるに至った。今年1月に発行された42.5億ドルの10年債もわずか4か月で92セントの急落している。

 このような通貨暴落の背景は、ここ数か月で海外からの投資意欲が急速に衰えたことである。同国経済は、ポピュリズムの権化ともいえるフェルナンデス政権を打倒したマクリ大統領の下で漸進主義的に経済の正常化を目指したが、依然として20%を超える高インフレが続き、経常収支の赤字は昨年で300億ドル(GDP比で4.2%)に達している。

 とくに世界有数の農業国である同国が未曽有の干ばつ被害に襲われ、大豆、トウモロコシをはじめ、ハードカレンシー入手の最大の武器であった農産物輸出が壊滅的な影響を受けてしまったことが大きい。財政赤字も同4.3%という対外収支との双子の赤字を抱えている。

 ここにFRBの利上げ予想、米ドルの上昇が加わり、海外投資家もアルゼンチン投資に慎重になったわけである。さらにアルゼンチン国民も17年前の1ドル=1ペソの固定平価時代からペソの暴落を見続けてきて、為替リスクには鋭敏になっており、今回も預金を米ドルに転換する動きが目立ってきたようだ。

 2015年12月に成立したマクリ政権は約2年半を経ても、慎重な経済運営等から依然として50%近い支持率を誇る。歴代のペロニスト政権が前フェルナンデス大統領の時代の経済失政に国民が懲りたことが影響している。ペロニストは選挙のたびに苦杯をなめており、マクリ政権が直ちに崩壊することにはならないであろう。

 一方でマクリ政権が漸進主義改革路線を取らざるを得ないのは、税制改革や社会保障支出、補助金削減を性急に行えば、一般国民からの支持を得られないからに他ならない。このため国際金融市場で起債した資金を財政ファイナンスに継続的に充てる必要に迫られている。

 すでに同国の公的対外債務残高は1,000億ドルを超えているが、今後も借換え資金の調達などで多額の起債が必要となる。中央銀行が自暴自棄ともとられるような外為市場の介入、急速な利上げをとってきたことはマクリ政権が掲げた漸進主義的な経済運営に赤信号がともりつつあることを示すものである。

 アルゼンチンは現在、2016年のマイナス成長から緩やかな景気回復局面にあるが、ペソ防衛のための緊縮的な金融政策や資本流出が続けば、経済は急速に悪化していくであろう。アルゼンチン政府・中央銀行は一般国民ないし海外投資家の「期待形成」を阻害するような経済のマネージメントを改めることが肝要である。

 冒頭に国際金融市場がアルゼンチンの動きに注目している、と述べたのは米国FRBの利上げ予想の高まり、米国長期金利の上昇とそれに伴う米ドルの強含みは、新興国通貨全般に下落圧力の増大を生んでいるからに他ならない。アルゼンチンの金融危機がトルコ、ロシア、メキシコ、ポーランドなどの問題国に波及しないかを恐れている。新興国の株式相場、債券相場はすでに全般的に軟調推移している。

 国際金融協会(IIF)によると、海外投資家による新興国債券への投資額は18年に入り、1~3月の390億ドルから4月にはわずか5億ドルへと大幅に縮小している。新興国の借入金利のベンチマークとなるロンドン・インターバンク市場金利(LIBOR)も、新興国に対する不安も手伝って10年ぶりの高値となる2.36%まで上昇した。低金利の米ドル資金を借り入れて高利回りの新興国通貨に投資する、というキャリートレードの意欲は急速にしぼんでいる。

 新興国は政府も企業も経済の活況が続く中で、米ドル建て借入を増やしてきた。もし、米国債利回りと米ドルの上昇が続けば、新興国の中央銀行は、通貨防衛と資本流出阻止のためにアルゼンチンのように急激な金利引き上げを迫られる怖れがある。国際金融危機は過去のアジア危機など例のように伝播する可能性が高く、今後ともアルゼンチンの動向からは目を離せない。

最終更新:5/25(金) 18:06
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