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理工系で唯一の「指定国立大学」になった新学長は何を思う

5/25(金) 11:22配信

ニュースイッチ

益東工大学長インタビュー「財源確保のトップセールスに立つ」

 国公私立の設置形態の違いを超えた再編が政府で議論されるなど、大学改革のステージはますます高くなっている。新年度に就任した各大学の学長インタビューから、次の一手を見ていく。学部・大学院を「学院」に統合した教育改革など、東京工業大学は第二の建学と位置付ける変革のまっただ中にある。3月には理工系で唯一、世界最高水準の研究・教育・社会貢献を担う「指定国立大学」になった。総合大学と異なる経営強化や社会対話について益一哉学長に聞いた。

 ―全学の年間予算450億円に対し、基金100億円と運用益年5億円を掲げるなど、指定国立大での積極策に驚きました。
 「世界の学長が集まる場に出向き、各大学の財源確保の認識の強さを改めて感じた。本学では田町キャンパス(東京都港区)の再開発で年10億円の収入を確保する。産学連携支援の子会社設立により、教員人件費における運営費交付金の依存も減らしていく」

 ―科学技術について社会と対話する組織を置くのも意外です。
 「ここでは教育改革の一環で文化人の教員を多く迎えた『リベラルアーツ研究教育院』が、シンクタンクとして機能する。我々に対する社会の評価が高ければ、外部資金は集まる。私がトップセールスに立つ」

 ―プロボスト(総括理事)制の導入も関係あるのだとか。
 「学長が大学のビジョンを学外に語って資金を集め、プロボストが学内運営に責任を持つ役割分担だ。権限委譲で会議の重複を減らすことは各部局でも可能で、これにより教員の研究・教育にかける時間を増やしたい」

 ―前職の科学技術創成研究院長で、四つの付置研究所を同院に統合しました。
 「小さな部局ごとの人事や予算で動いていたのが、統合により教員数は約180人、全学約1080人の6分の1の規模になった。研究者が競い合い、研究テーマの融合や新分野開拓などダイナミックな変化を起こせる」

 ―改革は教員が世代交代しないと完成しないといわれますが…。
 「マインドを変える手法は、対話に尽きる。現場の空気を吸い、異なる意見を聞いた上で、何をしたいのか学長が語り続けるしかない。教育改革も1期生がまだ研究室配属されておらず、大半の教員は変化を実感していないが、効果を信じて発信し続ける。チーム力がやや弱いという本学の欠点を変えていきたい」

【略歴】
益一哉(ます・かずや)82年(昭57)東工大院理工学研究科博士課程修了、同年東北大電気通信研究所助手、93年助教授。00年東工大精密工学研究所教授、16年科学技術創成研究院長、18年学長。兵庫県出身、63歳。

<記者の目>
 研究院長時代に、研究所組織がどう見られているか数十人の教員の声を聞いて回ったという。対話重視は研究テーマ変更で新たな学会へ参加し、違いを実感した経験がきっかけだ。半導体の研究者としての産学連携の経験も豊富だ。ステークホルダー(利害関係者)に支持されたトップダウンを期待したい。
(日刊工業新聞科学技術部・山本佳世子)

最終更新:5/25(金) 11:22
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