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<北朝鮮内部>南北対話で韓国に傾き始めた民心 金正恩政権に脅威か

5/28(月) 9:17配信

アジアプレス・ネットワーク

◆南北会談喜んだ北の民衆

4月27日の南北首脳会談から4週間余り、北朝鮮各地に住む取材協力者から、住民たちの南北会談への反応が続々届いている。現段階では、南北会談に対して歓迎と期待の声が圧倒的に多い。

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「皆、大喜びでした。涙を流す人もいました。関心が高くて、大概の人は労働新聞に出た共同宣言文を詳しく読んでいましたね」
北東部の咸鏡北道会寧(フェリョン)市に住む労働党員の男性はこう言う。

普段は金正恩氏を三代世襲だと厳しく批判する両江道(リャンガンド)の女性も
「市場でも、道を歩いていても、南北会談の話で持ち切りでしたね。私も、金正恩(キム・ジョンウン)元帥が板門店を越えて文在寅(ムン・ジェイン)大統領と握手した時は目頭が熱くなりました」
と振り返る。

平壌と他の地方都市の人々にも訊いたが、金正恩―文在寅会談については肯定的な意見がほとんどだった。と同時に、一様に口にするのが、暮らしの改善と韓国への期待である。

◆韓国が豊かにしてくれる

「南北会談が成ったので、これで朝鮮も経済開放に向かうのではないか。韓国は経済発展しているので支援してくれるはずなので我々も豊かになれると期待している」(会寧市の女性)

「板門店会談のニュースを見て、『これは南と統一まで行くかも。韓国が助けくれるはずだ』と喜んでいる人が大勢いた。制裁で絶不調のビジネスも韓国のおかけでよくなるのでは」(平壌市の男性)

「同じ民族だし経済も発展しているから、中国ではなく韓国と貿易ができれば素晴らしい。統一したら(暮らしは)どれだけ良くなるだろうか」 (前出の両江道の女性)

咸鏡北道の茂山(ムサン)郡は、主要輸出品である鉄鉱石の産地だ。経済制裁で昨年末から中国への輸出が完全に止まり、郡全体が苦境に陥っている。鉄鉱山の労働者には給料も食糧配給もまったく出なくなり、食い扶持を他所に求めて職場を離脱する人が続出している。茂山郡の取材協力者は次のように言う。

「鉱山の労働者は、山に入って山菜を採って売り、糊口を凌いでいる有様だ。南北会談のニュースを見て、心から喜んでいました。韓国の支援受けられるので鉱山も発展するはずだ、とにかく早く統一して欲しいと、口々に言っている」

板門店共同宣言では、南北の戦争状態の解消、平和、非核化の進展が謳われたが、それを成果だと話す人はいなかった。一般民衆にとって、軍事的、政治的な敵対関係に因る脅威よりも、困難で不自由な暮らしが続くこと、制裁で悪化する一方の経済の方が切実なのだろう。それを韓国に解決してほしいと期待しているわけだ。

一方、北朝鮮の非核化措置や、米国との会談については、国営メディアで触れてはいるものの、5月27日時点で住民を対象にした説明や政治学習も特段に行われていないようだ。

「地域の学習会で幹部が、『金正恩元帥様がたった一人で、巧みな外交術によって世界中の帝国主義や強大国を相手にしておられる』と、さらりと短く説明しただけだった」
と会寧氏の党員の男性は述べた。

今後、交流拡大で韓国との接触面が増えていくと、北朝鮮の民心が韓国に傾く可能性がある。文在寅大統領の評価も高まるだろう。それは、金正恩政権にとって新たな難題として浮上することになるだろう。(カン・ジウォン/石丸次郎)

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