ここから本文です

心の深層をさらけ出した『ジャックスの世界』こそ、真のアンダーグラウンド作品だ!

6/2(土) 18:00配信

OKMusic

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回はジャックスの『ジャックスの世界』を取り上げる。リーダーだった早川義夫は時代や流行に媚びることなく、自らの心の声に耳を傾け、人間の懊悩や煩悶を歌で表現した天才だ。天才によって生み出された奇妙なこの作品は、演奏技術が高いとか歌が上手いとか、そういうレベルにはなく、聴く者すべてを圧倒し戦慄させる「異形」としか言いようのない名盤である。
※本稿は2014年に掲載

新しい音楽を発信し続けた、当時の深夜ラジオのインパクト

60年代後半、日本のポピュラー音楽シーンは大きくふたつに分かれていた。ひとつはポップでキャッチーな要素を持つ、歌謡曲やグループサウンズに代表される商業的な成功が見込まれる音楽。そして、もうひとつは政治的もしくは実験的な要素が強いフォークやロックの一部と、フリージャズ等に代表されるような商業的に成功するかどうかが見込めない音楽だ。しかし、現在とは違って(今のメジャーレコード会社は“売れる”見込みのある作品でなければリリースしない)、当時の音楽界は個性ある大きな才能を持ったミュージシャンが雨後のタケノコのように出てくる黎明期であったから、大手レコード会社も新しい才能の発掘に躍起になっていた。

そんな中、深夜ラジオのDJらは自身の柔軟な耳と、リスナーである若者たちとのコミュニケーション力を駆使して(今ならパソコンやケータイで簡単だが、当時はハガキと電話のような手間と時間のかかるツールしかなかった)、メジャーであろうがインディーズであろうが、面白い(良い)音楽はどんどんオンエアしていった。大手レコード会社の社員も深夜ラジオは必ずチェックしていたと思う。その証拠にフォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」(’67)やジャックスの「からっぽの世界」(’68)は、ともに深夜ラジオで注目を集めたシングル曲である。どちらも、インディーズ(自主制作)から発信され、しばらく経ってから大手レコード会社が再発(もしくは再録音)していることからも、僕の言っていることは理解してもらえるだろう。事情はよく分からないが、この2曲がどちらも最終的に東芝からリリースされているのは、この会社に鋭い社員もしくは優秀なブレインが存在したことは間違いないだろう。

ジャックスの1stアルバムとなる本作『ジャックスの世界』に先立ってリリースされた「からっぽの世界」は、その歌詞に差別的表現があり、いつしか放送禁止になっていた。公の場でかかることはなくなったものの、その過激な音楽性もあって、熱心なファンは彼らを追い求めることになり、1年後の1969年に解散が決まる頃には、すでに彼らの名前は伝説になろうとしていた。

1/3ページ

最終更新:6/2(土) 18:00
OKMusic

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ