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スーパーの空き地で出会った野良猫 「あのこ」なの?

6/5(火) 15:02配信

sippo

 夏の終わりになると、野良猫の「あのこ」は、ぱったりと姿を見せなくなった。

「縄張りを変えたのかな」「どこかの飼い猫になったとか」「まさか、事故か病気で……」と、ツレアイと2人でさまざまな憶測をしていたある日の夕方、近所のスーパーに行くと、裏の空き地に、茶色い猫がたたずんでいるのが目に入った。

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「『あのこ』じゃない?!」と私たちが揃って声を上げると、猫はこちらへ近づいてきた。足元まで来ると「なあー」と鳴き、その場にコロンと転がり、寝そべった。 

「久ぶりだねー、お前はどこにいたの?」と言いながらツレアイは腰を落とし、猫のあごや背中をなで始めた。「かわいいねー、ほら、なでてあげなよ」と私を促した。

 私はとまどっていた。猫をなでた経験が皆無に等しいため、なで方がわからない。それ以上に驚いたのは、“きれい好き”で、外出のたびに手を洗うツレアイが、相好を崩して猫をなでている姿だった。

「野良猫に触ったりして、不潔ではないのか?」という疑問が頭をもたげたが、そういう人間がなでているのだから、害はないのだろう、と考えた。

 彼の真似をし、恐る恐る猫をなでてみた。あごの毛は柔らかく、背中はすべすべとしていて、猫という生き物は温かいのだな、と思った。猫は体をくねらせると、ゴーゴーと、軽いいびきにも似た音をどこからともなく立てはじめた。これが、猫が喜んでいるときに発する「ゴロゴロと喉をならす」音だということを、はじめて知った。

 しかし、なでているうちに、どうやらこの猫は「あのこ」ではないことがわかってきた。柄は似ているが、顔が小さいし、からだつきもやや華奢だ。何より、人とは一定の距離を置いているようだった「あのこ」に比べると、ずっと社交的で顔つきも穏やか。やはり、別の猫だった。

 この猫にはその後、ほぼ毎日のように空き地で会った。こちらが足を止めると、必ず気づき、声を発して走り寄ってきて、私のすねやふくらはぎに顔をこすりつける。そのたびに、私はしゃがんで猫をなでた。

 スーパーでの買い物を終えて出てくると、待っていたかのように近寄って来る。またなでる。この一連の行動のせいで、私の夕方の外出時間は長引いた。そして用もないのに毎日、夕方になるとスーパーに出かけては空き地のところで立ち止まり、猫の姿を探すようになった。

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最終更新:6/5(火) 15:02
sippo