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「夫婦別姓」選べず離婚…司法が掲げる「家族の一体感」って? 姓を戻す決断、理解してくれなかった妻

6/9(土) 7:02配信

withnews

 夫婦同姓に抵抗しようとして、家族との関係が悪化してしまうことがあります。都内の私立中学・高校講師の男性(34)は、この春から家族と別れて暮らしています。きっかけは妻の姓への改姓と、ペーパー離婚でした。(朝日新聞記者・田中聡子)

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12年間の結婚生活「ただただ、無駄な時間」

 「ただただ、無駄な時間を費やしただけだったのではないか」

 男性は12年間の結婚生活をそう振り返る。

 結婚当時は大学院生だった。結婚に反対していた妻の両親から条件として出されたのは、「あなたが名前を変えなさい」。想定外だったが、「すぐに法律が変わって、元に戻せるだろう」と楽観していた。

 日本が夫婦同姓を義務付けていることについて、国連から是正勧告があり、国会では夫婦別姓も選べるようにする民法改正の発議が何度も起こっていた。「戸籍だけなら」。妻の姓で婚姻届をだした。

本当の名前、どんどん奪われていく

 だが、変えてみると「戸籍だけ」ではすまなかった。

 就職活動の面接などで、「元の姓を使い続けたい」と申し出るたび、理由を聞かれた。「婿養子なの?」「芸能人じゃないんだから」「相手の家がお金持ちなの?」――。

 「なぜいちいち自分の信条を、よく知らない人に説明しないといけないのか」とストレスがたまった。

 さらに、自分の本当の名前は日に日に奪われていくような気がした。

 役所からの郵便物、銀行や病院、自宅にかかってくる電話――。妻の姓がどんどん侵食してきた。「他の人の名前で自分が呼ばれている」「もう一人の自分が設定されている」。そんな感覚に襲われていた。

一縷の望みも崩れ

 男性の苦しみを、妻は理解しようとしてくれなかった。

 妻の口から出る「受け入れたのはあなたでしょう」「そんなに大変なら、私が変えてもよかったのに」といった言葉に、大きな溝を感じた。

 一縷の望みは、2011年に始まった「選択的夫婦別姓訴訟」だった。夫婦同姓を義務付ける民法が憲法違反かどうかを争う裁判。世界や時代の流れは確実に夫婦別姓も選べる方向にあったため、「裁判でやっと法律が変わる」と男性の期待は膨らんだ。

 ところが、2015年12月、最高裁は憲法違反とは判断しなかった。「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」という判決文に、絶望した。

 「国会での議論が進まないから司法に訴えたのに、議論されるはずがなじゃないか――」。その日のうちに、妻に「離婚します」と切り出した。

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最終更新:6/9(土) 9:34
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