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ソニー試聴室を訪問!音作りの神髄はココにあり。AVアンプ制作の舞台裏(1)

6/7(木) 17:02配信

Stereo Sound ONLINE

 月刊『HiVi』誌で連載している記事「AVセンターあけていいですか」で、ソニーの取材をした時(記事は月刊HiVi 2月号と3月号に掲載)に、音作りについていろいろ話していたら「よろしければ一度、ソニーの試聴(視聴)室に来られませんか?」とありがたいお誘いを受けた。

【画像】内部をさらに詳しく

 社交辞令とも思ったが、これはチャンス。ぜひステレオサウンドオンラインで記事にしてソニーの製品作りをさらに掘り下げて紹介したい。そこで、思い切って「試聴室取材の件ですが......」と相談したところ、快く取材の了解を頂いた。さすが、ソニー。懐が深い。というわけで、ソニーファンのみならず、オーディオビジュアルを愛するすべての人にとって気になる、彼らの物づくりへのこだわりを余すところなくお届けしよう。



 場所は大崎駅からすぐのソニーシティ大崎。ここにはソニーのオーディオビジュアル製品の開発部門が、ほぼ集結していると言って差し支えない。まさにソニーのモノづくりにとって最重要拠点に他ならない。

 建物内もとても近代的な作りで、さながら外国ドラマに出てくるような研究所の様相だ。取材を受けてくれたのは、前述の月刊『HiVi』誌面にも登場してもらった、ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社 V&S事業部 商品設計部門の渡辺 忠敏氏である。

 通された部屋は渡辺氏がAVアンプの製品開発に用いるテストルーム(以下、試聴室)だ。他に用途や製品ごとにたくさんの試聴室が用意されているらしいが、これらはまたの機会に取材してみたい。

 この試聴室は2011年のビル竣工に前後して構築が始められた。2012年に一応の完成を見るも、引き続きいくつかの調整を施して現在の環境に落ち着いていたそうだ。


■この部屋の響きにかかわるカーテンの奥にあるものとは?

 試聴室のコンセプトを訪ねると「基本的には以前の試聴室(編注:旧オフィスの品川的のロジーセンター内にあった)と同じ様にルームサイズと音響特性、システムの配置にしています」とのことだった。なお部屋の縦方向に伸びた長方形で、サイズは幅(横方向)6.6m、奥行(縦方向)8.3m、高さ2.8mとなっている。

 部屋に入ってまず感じたのは、音響的にデッド気味な部屋であること。話す声の響きはかなり少ない。ちょっとしたサウンドの変化にも敏感に反応しそうだから、製品作りに大いに貢献しているのだろう。

 同じ音響を再現するため、部屋の内装はもちろん、無造作に床に置いてある物やラックの上の物まで、かつての試聴室と一緒にしてあり、以前の試聴室をそのまま引っ越したかのように配慮したという。「部屋に置いてある物ひとつ違っても音は変わってしまいます。これまでの部屋と音があまりにも変わってしまうと製品開発時にその差分を考慮しなくてはならないので、可能な限り以前と試聴環境を揃えました」。

 なるほど製品開発に集中したいとの考えなのだろう。これは以前紹介したパイオニアの試聴室取材でも同じようなコメントであったので、音作りをする上で部屋の要素がいかに大きいかがお分かりいただけるだろう。

 部屋の概要を説明しよう。部屋の大きさは先ほどお伝えした通り、幅(横方向)6.6m、奥行(縦方向)8.3m、高さ2.8mで、各壁には吸音層が設けられている。床は浮き床構造。その上に米松合板を10枚重ね、さらにカーペットが敷いてある。これは低音の質感を良くするためにこうした対策がされているようだ。ユニークな手法だと思ったので話を聞いてみると、引越し当初は「以前の試聴室と低音の違いが気になって仕方なかった」らしい。さらに調べを進めると、床材に使う米松合板がその原因で、品川の試聴室で使っていたのが日本製だったのに対し、こちらでは海外製だったのだという。

 「そこで日本製の米松材を取り寄せて、床の上に重ねて試聴を繰り返しました。その結果、現在の枚数になったのです。入り口付近を見て頂くと分かりますが、ドアの関係上あそこだけは枚数を増やせなかったので、斜めに傾斜を付けて対策をしました」と話してくれた。この部屋の音響を試行錯誤している間、どこで製品開発をしていたのかというと、旧試聴室がまだ残っていたので部屋の調整が終わるまでそちらで作業していたとの話であった。

 壁にカーテンが掛けられているのも他の試聴室では見られない手法だ。一般的な試聴室やスタジオは、吸音層の上にサランネット素材を張った木枠を壁にしていて、吸音効率を高める作りになっているからだ。

 筆者はルームチューニングマニアでもあるので、どうしてもカーテンの中の仕組みが気になって仕方なかった。遠慮気味に「中はどうなっているのですか?」と聞いてみると、渡辺氏は「ここはですね……」と言いながらカーテンを開けてくれたのであった。筆者には禁断の扉が開かれたような気分であった。

 そこには吸音ボードの様なものが天井から吊り下げられていて、一部は壁のまま状態になっていた。恐らく反射面と吸音層をバランスよく配置しているのだろう。なお吸音ボードはソニー特注品とのこと。さらに低音の溜まりやすい部屋の四隅には、ボックス状の吸音層が設けられていた。


■スピーカーはフロントからトップまでB&Wで統一

 試聴室のシステム構成について紹介する。この部屋のスピーカーは基本B&Wのスピーカーで統一されている。通常のサラウンドで使用する7ch分はB&Wの「MATRIX 801S3」で、トップスピーカー、フロントハイトはB&W「MATRIX 805」で統一されている。7ch分のスピーカー配置は、電気通信における規格策定を行なう国際機関のひとつであるITU(国際電気通信連合=International Telecommunication Union)の無線通信部門、ITU-R(ITU-Radiocommunication Sector)が、サラウンド音声を評価するための音響条件を示した「ITU-R BS775-1」に乗っ取っており、距離はほぼ同じである。

 トップスピーカーはフロント・ミッド・リアと配置されていて、こちらはドルビーのガイドライン合わせて配置しているのだけれど、設置にはかなりの苦労があったようだ。「トップスピーカー設置後に、2chオーディオを聴くと設置前とかなりの違いを感じました。そこでバスレフポートに詰め物を入れたりして、音の調整を行いました。これはフロントハイト設置時にも起きた事なのですが、その時は設置場所の調整で対応しています」。

 スピーカーは動いていない時は吸音箱になってしまうので、数が増えるほど音に影響を与える。そこでこうした配慮が必要なのだろう。

 ソース機器は聴くディスクによっていくつかを使い分けていた。CD再生は、CDトランスポート「CDP-R10」(1993年発売)とD/Aコンバーターに「DAS-R10」(同)を組み合わせていた。SACDプレーヤーには「SCD-XA5400ES」(2008年発売)を使用。映像ディスクはUHD BDプレーヤー「UDP-X800」(2017年発売)と、BDプレーヤー「BDP-S5000ES」(2008年発売)を使い分けていた。ファイル再生用のミュージックサーバーにはfidataが使われている。

 なお、取材時に試聴したのは、AVアンプ「STR-DN1080」なので、スピーカー構成は5.1.2chとなっている。

 そして、プロジェクターはソニーが誇るSXRD 4Kネイティブパネルを搭載したフラッグシップモデル「VPL-VW5000」(2016年発売)である。作動時のファンノイズが気になったので、専用の箱を作りその中に設置がされている。部屋の説明が長くなってしまったので、続きは次回。試聴室のサウンド傾向についてお届けする。

Stereo Sound ONLINE / 木村雅人

最終更新:6/13(水) 16:45
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