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氾濫する「歯磨き情報」にまつわる5つの誤解 歯科医が解説

6/8(金) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 最近、歯磨きにまつわる医療情報が氾濫している。「歯磨き粉は必要ない」というものから「歯磨き自体が必要ない」「いや歯を磨いてはいけない」など、かつての医学常識から見ると驚天動地の話も多い。どう受け止めればいいのか? 自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。

【1】食事の後すぐに磨いてはいけない

 これまで歯磨きは「1日3回、食後3分以内に、3分間」が常識とされた。しかし、真っ向から反対する歯科医師もいる。

 唾液は虫歯菌や歯周病菌などの口腔内細菌を除去してくれるうえ、食後に軟らかくなった歯を30~60分かけて元に戻す働きがある。食後の歯磨きはその大切な唾液を洗い流してしまうので、逆に口腔内細菌が増殖しやすくなるというのだ。

「唾液に殺菌作用があるのは本当です。まれに歯磨きをしなくても虫歯一本ない人もいます。だからといって誰もが歯磨きをしないでいい理由にはなりません。そんな人でも、加齢や飲んでいる薬の種類や睡眠不足などで唾液の量は減り、質も落ちる。そうなると、食後に歯磨きしないと、すぐに虫歯や歯周病になります」

 第一、虫歯や歯周病になるのは歯と歯の間や歯ぐきのくぼみなど。すでに虫歯の原因菌であるミュータンス菌が歯の表面にプラークをつくっていれば、歯磨きで破壊しなければ、いくら強力な抗菌作用のある唾液の持ち主でも歯の再石灰化ができず、意味をなさない。

【2】口臭は間違った磨き方をしているから

 歯と歯の間や歯周ポケットに食べかすが残って腐敗することもあるが、口臭には寝起きや空腹時など誰にでも起きる生理的口臭もある。ほかに飲酒や喫煙やニンニクなどの飲食物・嗜好品による口臭、虫歯や歯周病、鼻、のど、消化器などの病気が引き金になる病的口臭、ストレスが原因の口臭がある。見逃せないのは舌苔の臭いだ。

「舌の表面は角質が伸びて硬くなり、そのすき間に細菌や食べかすがたまった舌苔は卵が腐ったような強い臭いがします」

【3】「磨いた気にさせる」歯磨き粉は不要

 歯磨き粉には、虫歯予防や歯周病予防などの目的に応じていろいろな成分が入っている。歯磨き粉のしっとり感を保つ「湿潤剤」、口の中を泡立てる「発泡剤」、茶渋やたばこのヤニを落とす「研磨剤」、爽快感や香りをつける「香味」などだ。

「これらの成分は歯ブラシを短時間使用しただけで十分磨いた気にさせるものもあります。その意味では歯磨き粉はかえってマイナスかもしれません。しかし、フッ素入りの歯磨き粉はプラークの細菌の活動を抑え込み、溶けたエナメル質の修理、歯質の強化など、虫歯の発生を予防するために効果がある。歯ぐきが下がり歯根が出ている中高年はとくに必要です」

【4】電動歯ブラシは中高年に向かない

 パワーがあり、手磨きのように力加減がうまくできないため、歯の表面や歯ぐきを磨き過ぎてかえって傷めてしまう。こうした理由から敬遠する人は多い。しかし、最近はセンサーを搭載してスマホアプリを見ながら使う「スマート歯ブラシ」が登場、中高年でも安心して使えるようになった。

「歯科医師が利用者の口腔内を見て、歯並びや歯垢のたまっている場所をチェック。それを電動歯ブラシに登録、この情報をもとに理想的な歯磨きが行えるようになりました。歯磨きの最中に設定した角度や力から外れると本体のランプが点灯して間違いを正してくれるものもあります」

 中には歯磨きが終わった後に、正しい歯磨きができたかどうか、アプリが成績を表示してくれるものも。

「そもそも電動歯ブラシは手磨きでは難しい場所まで磨いてくれるわけで、使い方を歯ブラシ自体がリードしてくれるのなら利用すべきです」

【5】プラークがたまりやすい歯と歯の間はデンタルフロスや歯間ブラシだけでいい

 プラークがたまりやすいのは「歯と歯の間」。歯の表面を磨くことが多く、こうした場所は磨きにくい歯ブラシの代わりに、デンタルフロスや歯間ブラシを使う方がいい。ならばデンタルフロスや歯間ブラシを使えば、歯ブラシは必要ないとの意見がある。

「歯ブラシだけでは歯と歯の間や歯の付け根は60%程度しか磨けませんが、デンタルフロスや歯間ブラシを併用すると90%近くのプラークを取り除ける。それなら、デンタルフロスや歯間ブラシだけでよさそうに思うかもしれませんが、それだと歯の表面の汚れや、歯と歯ぐきのくぼみなどの掃除はできません」