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【ハイ檀です!】大蒜すだれ

6/9(土) 7:55配信

産経新聞

 福岡地方は、例年に比べ梅雨入りが早かった。梅雨入りしたという発表があってから2日ほど雨が落ちて来たものの、後は降りそうで降らない天気が続いている。我が家のすぐ脇にある水田の持ち主は「田植えを済ませたバッテン、雨が来てくれんと稲が育たんとバイ」と、天を仰いで深い溜息をついていた。だがこの数日、ようやくにして梅雨らしい雨がシトシトと落ちている。このような梅雨を、陽性の梅雨というらしい。しかし、災害になるような雨だけは降らぬことを願う。

 昨今は数多の報道がライブ感覚になり、災害が生じると直ぐ現地に報道陣が入り、克明な被害状況を報じてくれる。平成23年の3月11日に起きた、東北地方太平洋沖地震の報道はリアルであった。悲惨な状況を茶の間で眺めていてよいものかと、胸が苦しくなった。ところがこうした報道に触発され、ボランティアに参加を考えていた多くの人々の、背中を押したことは紛れもない事実。

 被災者の方には申し訳ないが、つらい出来事から話を逸(そ)らそう。我が菜園の6月の収穫はタマネギの出来がイマイチだった。その代わり、ニンニクの出来栄えが素晴らしかった。こんなことが持続出来れば、余生はニンニク栽培農家として自立、などと思い違いするほどの仕上がり。そんなニンニクは、能古の食卓には不可欠な食材。毎年、悶え苦しみながらの栽培であった。が、今年になりどうやら掴(つか)めたような気がする。今までは、大手の種苗会社のカタログを見て、有名な品種、ホワイト六片の暖地用を購入。しかし、どうにも安定度が低い。そこで今シーズンは、熊本産のニンニクと、壱岐辺りで栽培されている島ニンンクの2種類を植えたところ大成功。やはり、植物は逞(たくま)しいとは言うものの、慣れ親しんだ風土があってこその生命であることを痛感。

 ニンニクの歴史は、4世紀辺りに漢方薬として日本に渡来したようだ。中国の漢から直接伝播(でんぱ)したものか、高句麗経由で渡来したかは定かではない。ニンニクのことを、当初は『葫』と表していたらしいが、いつの間にか『蒜』に変化したとある。日本には『野蒜(のびる)』という、ラッキョウのようでニンニクような野生の植物があり、貴重な食材となっていた。そこで、ニンニクは『大蒜』と記し、『野蒜』と区別をしていたとの説もある。また、余りにも強烈な匂いなので、堪え忍ぶ薬であるという意味合いで『忍辱』としたという出典もある。『大蒜』と『忍辱』2通りの表記、僕はどちらかと言うと『大蒜』が好みだ。

 我が菜園の大蒜、梅雨の晴れ間を効率よく利用して収穫。育った畝(うね)の上に2日ばかり並べ太陽に晒(さら)す。乾燥させた後に麻ひもで2本づつを括(くく)り、上から下へとぶら下がるように組み上げる。この状態で、風通しの良い軒下に並べて吊り下げる。この時は、直射日光と雨に当たらぬよう注意して、風のみを当てる。この仕掛けにより、5カ月くらいの間はおいしく食べられるから、本当に有難い。

 檀家のニンニクの消費量は、一般家庭の3倍くらいだろうか。その理由は、中華風の料理が多いことと、スペイン風の料理にしてもイタリアンでも、ニンニクの出番がかなり多いのではないか。面白いのは、世にはニンニク信仰に近いものがあって、朝から生ニンニクをポリポリ食べたり、どんな料理にも擂(す)り下ろして召し上がる輩がおられる。だが、生ニンニクには強力な殺菌作用がある反面、腸内の善玉菌をも死滅させるし、嫌われる口臭の原因ともなる。という次第で、血液をサラサラにするというものの、食べ過ぎると胃潰瘍の原因になったり、血が止まりにくくなるのは恐い。また腸内の善玉菌が減少すると、便秘になり易いとか。生ニンニクは勿論(もちろん)、火を通しても食べ過ぎには要注意。しかし、ニンニクのない料理はねぇ…。

 もう一つ、ニンニクを育てる過程で、花芽が伸びて来る。スーパーなどで売っている、ニンニクの芽がそれ。花芽を摘んで豚肉などと合わせてピリ辛に炒めて味わうと旨いが、粒のニンニクを調味料として用いるのがよいものか、これが悩み。茎にも香りがあるから不必要な気もするが、根と茎では香りが違う。ともあれ、軒下に大量の大蒜を吊るし、暖簾(のれん)というか『すだれ』風にしている。これを、ベランダの出入り口に吊るせば、虫は来ないし優雅に見えるが、忍辱の匂いが大きな問題である。

最終更新:6/9(土) 7:55
産経新聞