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G7サミット 輸入制限巡り非難の応酬 兄弟喧嘩の中でほくそ笑むあの「大国」

6/10(日) 13:27配信

産経新聞

 カナダ東部シャルルボワでのG7首脳会議は、トランプ米政権が発動した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限など通商政策をめぐり非難の応酬となった。既存の経済大国が自らの利益をかけてせめぎ合う中、安倍晋三首相は忍び寄る真の脅威の存在を挙げてクギを刺した。

 「ジャスティンがカナダと米国の間の全ての関税、貿易障壁をなくすことに同意してくれたことは非常に喜ばしいことだ」

 トランプ米大統領が8日、カナダのジャスティン・トルドー首相との会談で「冗談」を口にして記者団の笑いを誘うと、トルドー氏は複雑な笑みを浮かべた。トランプ氏はその後のサミットで「関税ゼロ」を主張しており、なかば本気の発言だったようだ。

 サミットは米国の輸入制限発動に欧州連合(EU)やカナダが7月からの報復措置を表明する緊迫した雰囲気の中、開幕した。批判に直面するトランプ氏が貿易に関する討議で「カナダは乳製品に270%の関税をかけている」と仕掛けると、トルドー氏は「そんなことはない。米国は農業に補助金を出している」と反論。双方が数字をあげて激しい応酬を展開した。

 G7など多国間の枠組みやWTOの紛争解決能力に信頼を置かず、2国間のディール(取引)で勝負したいトランプ氏と6カ国の摩擦は会議前から強まっていた。

 「大統領はG7メンバーや他の同盟国との対話や協力を歓迎するが、米国が不公正な貿易慣行を受け入れる時代は終わった」

 トランプ政権のナバロ通商製造政策局長はサミット開幕当日、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)への寄稿で米国が抱える貿易赤字に強い不満を表明。他の6カ国に市場開放を要求して挑発した。ホワイトハウスは寄稿をサイトに転載しており、政権の強硬姿勢は鮮明だ。米国は追加関税適用を視野に、輸入車の調査も進めている。

 一方、ロイター通信によるとドイツのメルケル首相は米国とEUの貿易摩擦に関する評価や対話の枠組みを提案。2週間以内に創設される見通しだという。7月からの報復措置をにらんで問題を先送りしたとみられるが、11月の中間選挙を控えるトランプ氏と合意に到達する保証はない。

 フランスのマクロン大統領はツイッターに「米大統領は自分が孤立することを気にしていない。そこが大問題だ」と書いたが、対立の弊害はG7内部にとどまるわけではない。

 「G7が貿易制限措置の応酬に明け暮れていることはどの国の利益にもならず、不公正な貿易慣行を続ける国を利することになりかねない」

 安倍首相はサミットでこう述べ、その国が国有企業優遇や知的財産侵害で市場をゆがめているとも指摘した。世界第2の経済大国、中国をほのめかしたのは明らかだった。

 G7の結束を呼び掛ける日本は米国による鉄鋼・アルミの輸入制限についても、カナダやEUの対応とは一線を画している。カナダとEUはすでにWTO提訴の手続きに入ったが、日本は対抗関税の準備をWTOに通知したのみ。日本の高品質な鉄鋼製品は輸入制限でも大きな影響を受けていないという事情も背景にして、慎重に米国の出方をうかがっている形だ。

 しかし米国が検討する自動車の輸入制限については日本も神経をとがらせる。実際に発動された場合の影響が鉄鋼の比ではないためだ。雪崩を打って各国がWTO提訴に踏み切れば「米国はWTOから脱退するかもしれない」(政府関係者)といった不安の声もある。(ケベックシティー 加納宏幸、ワシントン 塩原永久)

最終更新:6/10(日) 13:27
産経新聞