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街から水が消える? 水不足がさらなる格差を生んでいる、ケープタウンの現状とは

6/10(日) 20:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

・大規模干ばつに喘ぐ南アフリカのケープタウンは、水の供給がなくなる「デイ・ゼロ」を迎えようとしている。

【画像あり】ケープタウンの様子

・市民が1日に使用できる水の量は50リットルしかない。トイレを流すこともできず、シャワーの使用は3分以下、農業も深刻な打撃を受けている。

・筆者はケープタウンを訪れ、干ばつがもたらす経済の低迷や格差の拡大といった重大な社会的影響を見てきた。

南アフリカでは、拡大する格差とそれを助長する水の危機に苦しむ2つの都市の話で持ち切りだ。

2017年5月、筆者は深刻な水不足に直面するケープタウンを訪れ、2週間滞在した。天然資源が枯渇する世界初の近代都市になろうとしている、400万人近くが暮らす街の現状を見てきた。

環境条件はケープタウンを脅かし、何百万もの人々がパニックに陥っている。清潔な水はケープタウンの人々から奪われるかもしれないが、多くの貧しい黒人たちにはその人権すらなかった。

国際連合は2010年、「全ての人権の完全な享受のために不可欠である人権としての安全かつ清潔な飲料水と衛生に対する権利」を認めた。

南アフリカは経済成長著しいBRICSの1つだが、10年前の世界金融危機からの回復に苦戦している。失業率は27%、1人当たりの年間所得は1万3400ドル(約147万5000円)だ。これらの数字には、南アフリカの経済格差という大きな問題が隠れている。

「格差は“水“によく表れる。ケープタウンの危機的な現状は、その一例となりつつある」自然保護団体ネイチャー・コンサーバンシー(Nature Conservancy)のグローバル・マネージング・ダイレクター、ジュリオ・ボカレッティ(Giulio Boccaletti)氏は言う。

水が不足している理由の1つは、大幅な人口増加だ。その数は、30年前から2倍近く増えた。住民たちは、農村部から都市部へやってきた人々が都市部の資源を枯渇させていると話す。移民--中でも他のアフリカ諸国から移ってきた人々--も大きな要因と見られていて、それが“アフリカ合衆国“という神話を打ち消し、外国人嫌いに拍車をかけている。

水の問題はケープタウンだけのものではない。アメリカの情報機関が共同で作成した報告書は、2030年までに世界の水に対する需要が供給を40%上回る可能性があると指摘している。

水をめぐる危機に直面するケープタウンの様子を紹介しよう。

南アフリカの都市ケープタウンは、世界で初めて水が枯渇する大都市となりそうだ。沿岸部に位置するこの都市では当初、全ての水の供給がストップする「デイ・ゼロ」が4月にも訪れるといわれていたが、使用量が減り、供給量が増えたことで、2019年に後ろ倒しされた。

住民の水の使用は1日50リットルに制限され、市は制限内でどうやりくりすればいいのか、ガイドラインまで示している。ちなみに、アメリカ人は平均して1日約300~380リットルの水を使用している。

世界銀行によると、南アフリカのジニ係数が世界で最も高いという。つまり、所得格差が世界で最も大きいということだ。そして、水不足は持つ者と持たざる者の溝をさらに広げている。

ケープタウンでは、供給する水の多くが6つの貯水池から引かれている。残りわずかとなった水位が、その干ばつの深刻さを物語っている。ケープタウン最大の貯水池には一時期、貯水能力の13%しか水がなかった。

3年連続で降雨量の乏しい状況が続いていて、ダムの水位は低い。ケープタウンが、これほどまでの渇水を自然と経験するのは数百年に1度の確率だ。

南アフリカは政治的にも厳しい局面にある。ズマ大統領が最近辞任したことで、白人農家は政府が彼らの土地を奪うのではないかと懸念している。

一部世帯は水不足の解決策を見い出しているが、価格がケープタウンの人々のそれを阻もうとしている。井戸の掘削には6000ドル(約66万円)が必要で、空気中の湿気を飲料水に変える機械を買うには2000ドルが必要だ。こうした手段を選ぶ人もいるが、多くの人は手が届かない。

わたしたちが宿泊したホステルには、節水を呼びかけるポスターが貼られていた。ホステルや街中のトイレには「小ならそのまま流さずに」と書かれたポスターも。シャワーは2分半で止まる。流れ出た水を再利用すべく、シャワー室には空のバケツが置かれていた。

これまでケープタウンを訪れる人々は水道水を飲んでいたが、わたしたちは3ガロン(約11リットル)入りの水のボトルを購入するよう指示された。わたしたち12人で、1日あたり約5本を消費した。アメリカの平均的な家庭では、1日300ガロンの水を使用している。

世界保健機関(WHO)は、安全な飲料水の欠乏は特定の病につながるとして、水と衛生へのアクセスの改善を勧告している。公共の場の中には石けんが置かれていないところもあり、人々は手洗いなど考えることもなくトイレを後にしていた。

2015年、南アフリカ人の69%は安全が確保された飲料水にアクセスできた。これは、世界全体の平均を少し上回る、サハラ以南のアフリカでは最も高い数字だった。

この花は、ケープタウンにあるカーステンボッシュ植物園の花だ。この植物園は、市からの水の供給がなく、110メガリットルのダムから水を引いている。水の使用を制限をしていて、希少植物の多くが危機にさらされている。

植物園の木の下にあるこの小さなため池は、ケープタウンにおける水の重要性を思い出させてくれるものの1つだ。ケープタウンは環境保護と水質保全に関する賞を複数受賞してきたが、にもかかわらずなのかその結果なのか、干ばつに陥っている。

井戸を掘り、水の供給量を増やすというケープタウンの取り組みは、生態系を破壊し、希少種を危険にさらしている。

農村部の学校のこの庭では、食費を節約するために野菜を育てていた。南アフリカは、農産物を自給自足できる食料の純輸出国だ。しかし、農村部の農民たちは、市の6つのダムからの水の供給を最大で87%カットされている。

また、ケープタウンにはコンスタンシアやステレンボッシュといった数多くのブドウ園やワイナリーもある。南アフリカは世界第8位のワイン生産国だが、干ばつでその生産量は20%減少している。

アパルトヘイト時代、黒人を住まわせるために郊外に作られた黒人居住区では、今も経済的に最も困窮した人々が暮らしている。こうした地域は、人口密度が高く、清潔とは言えず、共同給水所以外にもさまざまなものが不足している。

こうした旧黒人居住区には、安全な飲料水へのアクセスが基本的に存在しない。一方で、コカ・コーラは、ビールやスピリッツと同じように大量に出回っている。アルコール依存症は、旧居住区に住む貧しい黒人だけでなく裕福な白人をも苦しめる、人種や経済の垣根を越えた南アフリカの問題だ。

家にトイレがないので、旧居住区の住人は仮設の共同トイレを利用している。性的暴行や暴力を恐れる女性や子どもたちは、夜中にトイレへ行くのを怖がる。

ケープタウンで長年暮らしている住民たちは、これまで経験したことのない天候パターンを引き合いに、干ばつは気候変動のせいだと考えている。かつてはその豊富な降雨量で知られたケープタウンだが、その量は急激に減少している。今までに例のない洪水がナイジェリアやケニア、他のアフリカ諸国に、長期にわたる干ばつとともに壊滅的な被害を及ぼしている。

海に近く、水に囲まれているものの、ケープタウンは生命の維持に欠かせない資源が危険なほど枯渇している。

干ばつが悪化させるケープタウンの経済格差が解消される日は遠そうだ。

[原文:http://www.businessinsider.com/cape-town-day-zero-photos-inequality-2018-2]

(翻訳:Hughes、編集:山口佳美)

最終更新:6/10(日) 20:10
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