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畑違いの分野なのにペット事業に参入したシャープの勝算

6/11(月) 17:39配信

ITmedia ビジネスオンライン

 シャープは6月11日、犬と猫の健康管理ビジネスに参入すると発表した。ペット関連ビジネスのノウハウが豊富とは思えないが、どんな勝算があるのだろうか。

猫の寿命は延びている

●尿の量で健康状態を把握

 まず、猫向け健康管理ビジネスの概要を解説しよう。

 シャープは7月30日から「ペットケアモニター(HN-PC001)」(2万4800円、税別、以下同)を発売する。どこにでもあるペット用トイレのように見えるが、飼い猫の尿の量や回数、体重、滞在時間などを計測できるようになっており、クラウドで記録・解析したデータを飼い主のスマートフォンに通知できる。

 ペットケアモニターを使うには、専用アプリ「COCORO PET」をスマホにインストールする必要があり、月額300円のサービス使用料が別途かかる。また、多頭飼いしている飼い主向けに、最大3頭まで対応できる「個体識別バッジ(HN-PM001)」(3980円)もそろえた。

 このサービスを利用することで、飼い主は「尿の量が多い」「(トイレの)滞在時間が長い」といった異変を察知できる。同サービスを共同開発した鳥取大学農学部共同獣医学科の岡本芳晴教授は「飼い主がいち早く異変を感じ、猫を動物病院につれてくれば早期治療につながる」と解説する。

 岡本教授によれば、ここ30年で猫の平均寿命が増え続けた結果、これまでは発症することの少なかった泌尿器系の疾患が増えているという。異常を早期に発見して適切な治療をすれば「あと5年は平均寿命を延ばせる」(岡本教授)と見込んでいる。

●犬の緊張状態を数値で把握

 次に犬向け健康管理ビジネスの概要を解説しよう。

 「犬向けバイタル計測サービス」という事業で、7月1日から犬の自律神経バランスを数値化する技術を企業や研究機関に提供する。具体的には、犬にハーネス型ウェアラブルセンサーを着用させ、体温や心拍数などを計測し、犬が緊張しているのか、それともリラックスしているのかを分析する。ペット関連商品やサービスを開発する企業に向けてデータの計測・解析サービスを、研究機関には計測システムのレンタルサービスをそれぞれ提供する。

 サービス費用は、ペット関連企業向けには受託内容に応じて決める方式をとり、研究機関向けには8頭分で月40万円から提供する。

 このシステムをシャープと共同開発した大阪府立大学獣医臨床科学分野・獣医臨床センターの島村俊介准教授は「日常の環境で健康状態を把握すれば、飼い主が動物の異変に早く気付くことができる。将来は予防医療に発展させたい」と語った。猫のサービスと同様、ペットの健康状態を気遣う飼い主向けには一定数の需要があると考えている。

●シャープがペット事業に参入する理由

 シャープでIoT事業などを統括する長谷川祥典専務執行役員はペット事業に参入した狙いについて「国内で犬・猫の飼育頭数は15歳未満の子どもの数を大きく上回っている。8割以上が室内飼いをしているというデータもあり、ペットの家族化が進んでいる。ペットも加えたスマートライフを実現したい」と説明する。ペットは家族ではあるが、言葉を話すことができない。ペットの健康を気遣う飼い主に対して、IoTを活用したヘルスケアのサービスには需要があると判断したわけだ。

 シャープにはペットビジネスのノウハウが豊富にあるわけではないが、健康状態を数値化してしまえば、IoT関連のビジネスとして展開できる。同社が実施したモニター調査によると、健康状態を数字で把握することに魅力を感じ、継続してサービスを利用したいと考える顧客がいたという。国内に1800万頭いるペットの飼い主のなかには、ITの活用に興味を持つ層は一定数確実にいるはずで、事業として将来性がある。

 長谷川専務は記者会見で「製品とサービスを一体化させて新しい事業をつくりたい」と意気込んだ。製品を売りっぱなしにするのではなく、関連するサービスも提供することで、消費者と継続的な関係を継続できる。また、長谷川専務は「国内でノウハウを蓄積すれば、海外でも同じサービスが展開できる」という見通しを立てている。

 シャープにはペット関連ビジネスのノウハウはないが、他社に先んじてサービスを展開することで、ノウハウを蓄積する狙いがあるのだろう。