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「一億総忖度社会」の日本を覆う「気配」とは何か? 自ら縛られていく私たち

6/11(月) 15:12配信

BuzzFeed Japan

政治問題を忘れ去ることを急ぎ、ヘイトスピーチの萌芽を受け流し、被災地は「前を向いている」という声に簡単に染められてしまう。

なぜ私たちは、力の強い者が支配する「空気」をやすやすと受け入れるのか。「空気を読む」だけではない。さらに病状は進み、「空気」が生まれる前から、その「気配」を先回りして察知して、自らを縛る空気を作り出していないか? 

様々な政治状況や社会事件、個人のコミュニケーションなどを材料にそんな問いを投げかける『日本の気配』(晶文社)を、フリーライターの武田砂鉄さんが4月に出版した。

森友学園の土地取引を巡り、大阪地検特捜部が財務省の38人全員を不起訴処分にしたニュースが新聞一面に並んだ6月1日、インタビューをした。
【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】

積極的に気配に縛られようとする私たち

(「空気」と「気配」は、何が違うのでしょうか)

日本人の特性で、「空気を読む」「空気を読め」とは言われますが、「気配を読め」とは言われませんよね。日本人のコミュニケーションにおいて、「空気を読む」とか「忖度する」は、すっかり当たり前のことになっています。

でも、とりわけ今の政治状況を見ていると、それよりもっと深刻な事態になっているのじゃないかと思わざるを得ません。空気ができあがる前段階、つまり「気配」を察知し、権力者たちのメッセージに先んじて隷従しようとしてないかと。

数日前、加計学園の一連の問題を巡って党首討論がありましたが、朝日新聞は「議論は平行線」という見出しをつけていました。

中継動画を見たり、全文の文字起こしを読んだりすればすぐにわかることですが、あの討論は、野党の質問に対して誠実に答えているとは言い難い。真っ当な質疑応答ではないのだから、平行線であるはずがない。それをメディアはいつもの手癖で、「議論は平行線」と書いてしまう。

この見出しだけ見たら、「ふーん、野党の質問も煮え切らなかったんだな」「この問題、いつまで続けるのかな」「そろそろ幕引きなのかな」と察知してしまう。幕引きに加担してしまいます。

(関連する話で、財務省の福田淳一前事務次官のセクハラ問題について、麻生財務相の発言を、読売新聞が「麻生節」と表現したことにも怒っていらっしゃいました)

そうですね。財務省が文書でセクハラを認定した事案について、それを再びひっくり返そうとするような適当な発言を重ねていた麻生大臣の発言を「麻生節」とキャラづけして、「あの人はああだから仕方ない」と解放してしまうわけです。

そんなの、国家を運営している側から見れば、「え? キャラ化してくれるの、マジでラッキー」と思うはずです。「ここで追及しなくてどうするの?」という場面で、なぜか引いてしまう。そうやって自主的に追及を引き下げていく様子が頻繁に見受けられます。

党首討論後の記者会見でも、加計学園問題についての関与が疑われてきた萩生田光一・幹事長代行が、「何かを答えても、なかなかそれを了としないところの繰り返しがなされているんじゃないかなという印象を受けましたので、なかなか着地点と言いますか、最終形が分かり難いところがあるのかなと思います」と答えています。

なぜ着地点や最終形を野党が出さないといけないのでしょうか。山積した疑惑を払拭して最終形を提示すべきは政権側です。「なんか野党物足りないよね」と思わせておいて、それに対して怒る力が弱い。政治問題に向かう国民の執念のなさが露呈してきたなと感じます。

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最終更新:6/11(月) 15:40
BuzzFeed Japan