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“欲を言えばあとちょっと”を加えた「AQUOS sense plus」 シャープ流SIMフリー市場での戦い方

6/13(水) 6:05配信

ITmedia Mobile

 中国メーカーや台湾メーカーの独壇場だったSIMフリースマートフォン市場だが、その情勢も徐々に変化している。ここ最近、急速にシェアを拡大しているのが、AQUOSシリーズでおなじみのシャープだ。同社は2017年に「AQUOS sense」シリーズの派生モデルとなる「AQUOS sense lite」を投入。この端末がMVNOから好評を博し、SIMフリー市場でシェアを大きく伸ばすことに成功した。

AQUOS sense plusの背面画像

 調査会社MM総研によると、2017年度のSIMフリースマートフォン市場では、Huawei、ASUS、Appleに次いで、シャープが第4位につけている。キャリアモデルのブランド刷新に加えて、SIMロックフリースマートフォンが伸びたことで、スマートフォン全体ではAppleに次ぐシェア2位を獲得。これまでAndroid端末で首位の座を守っていたソニーモバイルを抜き去る結果となった。

 SIMフリースマートフォン市場で手応えを得たシャープは、夏に同社初となるSIMロックフリー専用モデルの「AQUOS sense plus」を発売する。同モデルは、AQUOS senseシリーズのスペックを高めた端末で、おサイフケータイや防水・防塵(じん)といった特徴はそのままに、プロセッサやディスプレイなどを強化。細かな点では、AQUOS sense liteで非対応だった5GHz帯のWi-Fiもサポートする。

 では、シャープが今、SIMロックフリースマートフォンを強化する狙いはどこにあるのか。AQUOS sense plusを開発した経緯と合わせて、同社の通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長 小林繁氏と、AQUOS senseシリーズを手掛けるパーソナル通信事業部 商品企画部 主任の坂口昭夫氏に話を聞いた。

●SIMフリー市場はコストパフォーマンスの勝負

―― AQUOS sense plusは初のSIMフリー専用モデルとのことですが、AQUOS sense liteなどがあったため、発表時には「あれ? 初めて?」と思いました。なぜ、このタイミングで専用モデルの開発に踏み切ったのかというところから、聞かせください。

小林氏 確かにハードウェアレベルでは(キャリアモデルなどと)共有化を図ってきてはいましたが、“ハードウェアとソフトウェアの両方をSIMフリー専用に設計したモデル”としては初になります。実際、発表時のスライドにもそんな「注」がついています(笑)。

 SIMフリースマートフォンのマーケットが爆発的に伸びるという論調もありますが、本音ではそうは思っていません。昨年(2017年)末ぐらいから料金プラン的にも、通信品質的にも、MNOが優位になってきているのは事実で、ここから突然MVNOが2倍、3倍に増えるとは考えにくい。ただ、かつてガラケー(フィーチャーフォン)時代にシャープの携帯電話に先進感を感じて選んでくれた人が、今、SIMフリーの顧客になっていますし、新しいものを求める層も一定数います。その方々は発信力が高いという側面もあります。

 AQUOS sense liteのときもそうでしたが、AQUOS senseの発表から時間がたってからAQUOS sense liteが出てきて、さらに(話題の)ピークが上がりました。MVNOごとにたくさんのカラーバリエーションを出しましたし、総数ではすごい数になりましたが、出るたびに話題になり、AQUOS senseブランドの認知拡大にとっては有効に働きました。こういったお客さまに「AQUOS sense liteはいいぞ」と言っていただいたことで、回りまわってAQUOS全体の認知拡大や、ネットでの推奨度向上につながる、いい循環が出てきました。

 ただし、SIMフリー市場は特別だとも思っています。戦略的な観点で見ると、戦い方が非常にグローバルで、それに伴って値段の付け方もグローバル市場のようになっています。コストパフォーマンスの勝負だともいえ、「今までAQUOSがよかったから、次も」というようなことがあまり通用しません。その意味では、日々戦いになっています。

―― なるほど。キャリア市場とは戦い方も違ってくるということですね。

小林氏 ちょっと違いますね。一定層のお客さまは安心感を求めて(継続してAQUOSを)買われているのは事実ですが、SIMフリーの中から(他と比較して)選んだという方も多いですね。とはいえ、もしかしたら将来的にはこの戦いが、市場の全てになっている可能性もあります。ここで勝てなければ、携帯電話メーカーとして生き残れません。ですから、ここでブランド力を上げ、一定のプレゼンスを作ることに注力しています。

●AQUOS sense plusで実現した「欲を言えばあとちょっと」とは?

―― 確かに、キャリア市場もdocomo withを筆頭に、分離プランの割合が増えていますし、今後、SIMフリー市場のようにならないとも限りません。そんな中でAQUOS sense plusを発表しましたが、この特徴を改めて教えてください。

坂口氏 特徴は大きく「液晶がきれいで見やすい」「レスポンスがいい」「定番の防水やFeliCaに対応している」の3つです。AQUOS senseシリーズということで、普通に使いやすい端末を目指しました。AQUOS sense liteのときも「こういうのを待っていた」という声があった一方で、「欲を言えばあとちょっと」という声も聞こえてきました。そういう後者の方々に向け、あとちょっとの余裕を実現するという意味で、「plus」と名付けています。

 一番の特徴は見ていただければ分かる通り、18:9のディスプレイです。ナビゲーションバーを隠すという条件はつきますが、アプリの表示領域は5型、フルHDのモデルから23%もアップしていて、一覧性が上りました。画面の美しさにも、近年の取り組みになる「リッチカラーテクノロジー」を入れています。

 また、レスポンスのいい端末ということで、CPUにはSnapdragon 630を採用しました。これは、2016年度のハイスペックモデルと比べても、処理速度で約2倍のスコアが出ています。メモリ(RAM)も3GBに増やしました。レスポンスという意味では、通信速度も向上していて、キャリアアグリゲーションや256QAMにも対応しています。あと、地味に「いいよね」と言われるのは、Wi-Fiの5GHz帯対応ですね。

小林氏 (5GHz帯が非対応だった)AQUOS sense liteのときは、「田舎で企画するから5GHz帯が載らない」などとも言われてしまいましたが、広島にもマンションはあります(笑)。5GHz帯は、確かにそういった集合住宅では必要かもしれませんが、その分コストが上がってしまいます。今回はplusということで、そこにもキッチリ対応しました。

坂口氏 防水・防塵やおサイフケータイにも対応していて、ここは海外メーカーとの差になるところでもあると思います。実は本体の幅もAQUOS senseと同じで、背面をぎゅっと絞って持ちやすくしているといった特徴もあります。

―― おサイフケータイ対応のSIMフリー端末は、意外と増えないですね。もっと海外メーカーも載せてくると思っていました。

小林氏 おサイフケータイはサーバ側の対応も必要になり、SIMフリーモデルだとメーカー自身がやらなければなりません。SIMフリーの場合、シャープも自分たちで実装していますが、これができているのも長年フェリカネットワークスとのお付き合いがあったからです。また、一定以上の規模も必要になってくるので、そう簡単にはいかないと思います。

 ただ、SIMフリーだから何か機能を犠牲にするというのは、あまり健全ではありません。スマートフォン業界全体が冷めてしまうのが一番よくないと考えています。

●SIMフリースマホは値段もスペックの1つ

―― 価格はいくらぐらいになるのでしょうか。

小林氏 まだ発表していませんが、AQUOS sense liteと比べてどうかというと、フラグシップモデルほどの高い金額は出せないが、そこそこいいものが欲しいという方、AQUOS sense liteだとちょっと物足りないと思っているような方を狙っています。ちょうどこのゾーンの端末があまりなく、今はMNOでハイエンドの端末を買うか、MVNOで安い端末を買うかになっています。AQUOS R CompactもSIMフリーとして販売していますが、あれでもちょっと高価だという声が聞こえてきます。そこにAQUOS sense plusを入れ、お客さまの要望に応えていきたいと考えています。

 価格未発表の段階で言うのもあれですが、僕は部内で、SIMフリースマートフォンは値段もスペックの1つだと言っています。あと一歩だけよくなるスペックアップだったら、それは入れないで値段を下げてほしいというニーズの方が強いと見ています。

―― AQUOS sense plusでは、もうちょっとお金を出して、スペックを上げたいというところを狙っているわけですね。そういうニーズは増えているのでしょうか。

小林氏 傾向として増えていると思います。これは、SIMフリーからSIMフリーへの買い替えが出てきているからです。SIMフリー1年目として新モデルを買うというのではなく、もともとSIMフリーを使っていて、2年経過してSIMカードだけを差し替える方も増えています。もともとSIMフリースマートフォンを使っていたり、キャリアモデルをMVNOで使っていたりする方の受け皿は、あるようでありません。先ほど、CPUの比較で2年前のハインエンドと比較していたのも、そのいうところに理由があります。ミドルレンジでも、2~3年前のフラグシップより進化させなければいけないのです。

―― まだAQUOS sense plusの価格が出ていないので、何とも言いづらい部分はありますが、AQUOS sense liteでは、「値段もスペック」ということがよく表れているように思えました。あのスペックで、あの値段(約3万円)は安いと感じます。

小林氏 これはパッケージングの妙だと思っています。より高い価格の部材を使えば、より価値は高く見えますが、実はここが正比例していないことがあります。例えば、ちょっと上がっているとすごくよく見えたりする部分がある一方で、コストをかけた割に高く見えないということもある。例えば、AQUOS sense liteではワンセグを犠牲にしていますが、お客さまから見るとオマケ程度に見えても思った以上にコストがかかってしまうものもあります。通常の作り方をすると、載せないと不安になってしまうんですけどね。

 その意味で、パッケージングを極める活動をしています。これが入っているから安心という売られ方とは考え方が違っていて、そこにどうやって真正面に取り組めるのか。(グローバルメーカーに)勝っているとは思っていませんが、迫るところまでは来ていると考えています。

―― そういう意味だと、18:9にはなりましたが、ノッチもAQUOS sense plusにはありませんね。

小林氏 まさに価格とバリュー感の違いで、IGZO、フルHDまでは一発で決まりましたが、そこ(19:9ディスプレイで、インカメラが液晶側に食い込んだ形状)はお値段との比例関係がありませんでした。もちろん、AQUOS sense plusも安い部品を使っているわけではありませんが

●鴻海傘下になったことも大きい

―― 鴻海(ホンハイ)傘下になったことの影響もあるのでしょうか。

小林氏 社内では「スーパーマルチSKU戦略」と呼んでいますが、1つの設計で、なるべく多くのお客さまに届けることをやっています。AQUOS senseシリーズも、あれだけのカラーバリエーションやSKUを作れたのは鴻海の力です。例えば、ラインごとにキーが微妙に違ったりするのを作り分けるのは難しいのですが、そういった制御には鴻海の力が効いています。調達面でもそうですね。

―― その意味では、基礎体力がついたということでしょうか。

小林氏 日本人が企画して日本人が作っていますが、力的にはグローバルですね。調達力は圧倒的なので。

―― 結果として、シェアも急激に伸びました。

小林氏 正確な数値は言えませんが、おかげさまで“ウン倍”という感じで伸びています。これはAQUOS sense liteのパッケージングがよかったからだと思います。その前の「AQUOS SH-M04」あたりから伸び始めてはいましたが、一気に上がりましたね。ブランド力が上って、AQUOSでこの値段なら安いと感じられることも、あると思っています。

―― その意味では、かなり思い切ったことをしたなという印象です。

小林氏 賛否両論ありましたが、エントリーモデルは大事なゾーンです。AQUOSは回復基調にはありますが、ブランド認知度や推奨度で、トップブランドとタメを張れるとはまだ思っていません。まだまだ回復途上で、フィーチャーフォン時代の圧倒的なブランド力には程遠い。そういう方々が戻ってくるときに、選びやすいモデルがあることが重要だと考えています。

―― AQUOS sense plusが出た後も、AQUOS sense liteは併売していくのでしょうか。

小林氏 違うものとして併売します。AQUOS sense plusは、AQUOS sense liteよりお値段も上になるので、売り分けていきます。

―― AQUOS senseシリーズは息が長い端末になっていますが、今後のロードマップはどうなっているのでしょうか。1機種のライフサイクルを教えてください。

小林氏 市場との会話が必要で、お客さまがどういう反応をされるかを見ていきたいと思います。SIMフリーモデルなので長く売れますが、定期的に新商品を投入するというアイデアもあります。求められていないのに提供を続けていても意味がないので、SIMフリー専用モデルについては、よく見て、よく聞いて考えていきたいと思います。

●取材を終えて:キャリアモデルの作り方から発想を転換したことが功を奏した

 AQUOS Rでブランドを統一し、存在感が一気に増したシャープのAQUOSシリーズだが、実はミドルレンジも2017年から戦略的を大きく転換させている。小林氏の述べていた「スーパーマルチSKU戦略」はその1つで、AQUOS senseはベースモデルを中心としながら、本体の素材やカラーを微妙に変えながら、幅広いキャリア、MVNOで販売されている。

 搭載する機能の取捨選択も絶妙になった。キャリアモデルの作り方から発想を転換したことが功を奏したようだ。グローバルメーカーとの戦いに真正面から挑んでいったことで、シャープの企画力、開発力がさらに向上していると感じた。

 AQUOS sense plusにも、その選球眼が生かされている。筆者もAQUOS senseを試してみたとき、値段はもう少し高くてもいいから、レスポンスを上げ、5GHz帯のWi-Fiには対応してほしいと感じていたが、AQUOS sense plusでは、これらの不満が見事に解消されていた。

 坂口氏がインタビューで述べていた通り、「『欲を言えばあとちょっと』を実現したモデル」に仕上がっているのだ。今後発表される価格次第ではあるが、AQUOS senseに続き、SIMフリースマートフォンの有力な選択肢になりそうな予感がする。

最終更新:6/13(水) 19:32
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