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ネットが創造する新しい社会 シェアリングエコノミー、多分野で拡大

6/13(水) 11:30配信

SankeiBiz

 広い家に住みたい、かっこいい車に乗りたい、誰にでも物欲はある。実際マイカーやマイホームを手に入れることは私たちが働く最大のモチベーションだった。だった、と過去形にしたのは最近欲しい物を購入するのではなく、必要な時にだけ借りればよい、または他人とシェア(共有)して使えばよいという考え方を持つ人たちが増えてきたからだ。インターネットを利用して貸し方借り方両者をマッチングし、相互の信頼関係まで担保する新しいサービスも生まれている。(実業家・平松庚三)

 空き家や空き部屋を短期間貸す米Airbnb(エアビーアンドビー)は国内でも民泊として定着しそうだ。個人ドライバーが自分の車で他人を運ぶウーバー・テクノロジーズも瞬く間に世界に広がった。日本では「白タク」などと呼ばれ普及は遅れているが、都市部ばかりでなくタクシーやバスが少ない地方ではウーバーは必須のサービスになるだろう。

 モビリティー、つまり人の移動に起因するシェアリングサービスはウーバー以外にも続々と誕生している。Lyft(リフト)は移動希望者と同じ方面に向かうドライバーとのマッチング、つまり相乗り仲介サービスである。知らない人の車に乗って長距離を移動するなど危険だという声もあるが、SNS(会員制交流サイト)を介してのサービスなので両者とも事前に相手の個人情報をある程度把握できる安心感もある。

 RelayRides(リレーライズ)は車庫で眠っている個人の車を貸し借りする仲介サービス、つまり個人間のレンタカーまたはカーリースだ。日本には6000万台の登録乗用車があるが、使われているのは年間時間換算にして8%以下である。減価償却、保険、税金など維持費のかかる車を所有しないで他人の車を必要な時だけ使う方がはるかに経済的である。が、車は究極の嗜好(しこう)品であり「好きな車を持ちたい」欲求が今のところは経済合理性に勝ってはいる。

 ウーバーやカーシェア、自動運転、EV(電気自動車)、コネクテッドカーなど「MaaS (モビリティー・アズ・ア・サービス)」(車を所有せずに使いたい時だけお金を払って利用するサービス)の流れが加速することは世の中の車の数が減ることである。自動車メーカーは大変だが車の数が減れば当然環境対策にもなり、渋滞も解消されよう。シェアリングエコノミーがMaaS化への第一歩であることは間違いない。

 シェアリングエコノミーとはいえ、私たちにとって物の貸し借りは何も新しいものではない。われわれはもともと、みそ、しょうゆからお金に至るまで足りないものや必要な物を隣人や知人と貸し借りしてきた。ここで言うシェアリングエコノミーも基本的に同じ考え方だが、貸し借りは隣人らとではなく知らない人同士で行うことが最大の違いだ。

 そしてその中心媒体となり知らない人同士を結びつけるのがインターネット、取引の安全性と安心を担保するのがソーシャルメディア、そしてその道具がスマートフォンである。消費のパラダイムが大きくシフトし、消費者が耐久消費財を買わなくなる時代が来る。アメリカではLendingClub(レンディングクラブ)という知らない者同士の金銭の貸し借りを仲介するサービスまである。自動車会社や銀行は今後どうなるのだろう。



【プロフィル】平松庚三

 ひらまつ・こうぞう 実業家。アメリカン大学卒。ソニーを経て、アメリカン・エキスプレス副社長、AOLジャパン社長、弥生社長、ライブドア社長などを歴任。2008年から小僧com社長(現職)。他にも各種企業の社外取締役など。72歳。北海道出身。

最終更新:6/13(水) 11:30
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