ここから本文です

障害者ETC割引「半額」悪用相次ぐ 悪質ドライバーが増えれば制度見直しも?

6/13(水) 9:01配信

産経新聞

 高速道路料金が半額となる身体障害者向けのETC割引制度を悪用し、正規料金の支払いを免れるドライバーが相次いでいることが12日、分かった。阪神高速道路会社(大阪市)が今年4月末までの1年間で約20人の不正を確認した。兵庫県警は2月、同社の情報をもとに過去5年で130万円以上を“踏み倒した”とされる男を逮捕したが、今後も不正が続けば、身体障害者全体の利便性に悪影響を及ぼす恐れもある。(木下未希)

 「障害者の割引制度を悪用している車がある」。昨年12月、同社からこんな相談を受けた県警は不正な車の捜査に乗り出した。運転していたのは兵庫県内で自動車整備会社を営んでいた男(65)。今年2月、電子計算機使用詐欺などの疑いで男を逮捕した。

 県警によると、男の妻は身体障害者で、10年ほど前に妻名義で高速道路料金の割引制度の適用を福祉事務所に申請。割引を受けるのに必要なETC車載器とカードを登録した。

 同制度は身体障害者が登録した車を自ら運転するか、重度の障害者を乗せて別の人が運転する際、高速道路料金が半額になる。男は制度を悪用しようと、仕事で使うレッカー車に車載器を移設。登録したETCカードで過去5年間、阪神高速道路を2400回以上も不正通行した。不正に免れた正規料金は約130万円以上にのぼった。

 県警の調べに対し、男は「安い料金で通行したかった」などと身勝手な理由を供述した。なぜ、不正は5年以上も発覚しなかったのか。阪神高速の料金は昨年5月末まで「普通車」と「大型車」の2つに区分されていたが、男のレッカー車は中型車。料金区分上は普通車に含まれ、車載器を移し替えて登録カードを使えば自動的に割引が適用された。事故を起こして警察沙汰にでもならない限り、不正を見つける手立てがなかったのだ。

 ところが、同社は同6月に料金区分を改正し、中型車と普通車を分離した。男はこれまで通りレッカー車でETCレーンを通行したが、レーンの機器が車種を判別できず、エラーが生じたことで不正が発覚した。

 昨年の料金区分の改正を機に同社が調査を進めたところ、約20人のドライバーが男と同じ手口で割引制度を悪用していたことが判明した。同社はこれらのドライバーについても警察当局に被害を相談するなどしており、現在も捜査は進行中とみられる。

 ETCが導入された当初、身体障害者が割引を受けるには、料金所で職員に直接料金を支払う必要があった。だが、利便性向上の観点などから平成16年以降、登録した車載器とカードを使えばETCレーンを通行できるようになり、これを機に同様の不正が始まったとみられる。

 同社の担当者は「悪質ドライバーが増えれば、障害者のETC割引制度が見直される可能性もある。今後も不正には毅然と対応していく」。

 NPO法人「兵庫障害者センター」の井上義治事務局長は「ETC割引制度は高速料金が半額になるとはいえ、障害者を抱える家庭の負担を考えれば支援額としては不十分。それなのに一部の人が制度を悪用すれば、制度自体の存続が危うくなるだけでなく、障害者への支援全体に対し厳しい目が向けられることになる。一刻も早く根絶しなければならない」と話している。

最終更新:6/13(水) 20:32
産経新聞