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なぜ、陰謀論がはびこるのか? 本気で論破しまくる本を出した歴史学者が語る怖さ

6/13(水) 6:04配信

BuzzFeed Japan

“本能寺の変に黒幕は......いない!” 歴史本にありがちな陰謀論の数々を、学者が本気でボコボコにする本が最高に痛快だ。

「大人げないと私もわかってます。でも、誰かがマジレスしないといけない」

ベストセラー『応仁の乱』(中公新書)の著書であり、『陰謀の日本中世史』(角川新書)を3月に上梓した気鋭の歴史家・呉座勇一さんに話を聞いた。

なぜ、マジレスが必要か。なぜ、陰謀論がはびこるのか。【BuzzFeed Japan / 伊藤大地】

――歴史学に照らして「トンデモ」と呼ばれるような説を、マジレスでバッサバッサ斬っていますね。この本を書くきっかけは?

本屋に行って歴史コーナーを覗くと、フィクションだかノンフィクションだかわからない「歴史エンタテイメント」が山ほど積まれている。そしてそこには、「隠された真実」「メディアが決して報じない」などと帯文が書かれている。

徳川家康が明智光秀と提携して織田信長を討った、という「家康黒幕説」があります。丹念に史料を読めば、まるで論理が成り立っていないことがわかる、この説をあつかった本が、出版社の公称で30万部も売れているんです。

さすがにまずいんじゃないか。歴史学からのマジレスが必要だ、ということでこの本を書いたんです。Twitterでは、「プロボクサーが喧嘩自慢の不良を殴っている」なんて言われますが、歴史学からすれば事実とはとうてい言えない陰謀論がこれだけ支持を得ているのだから、仕方がないと思っています。この点は本気です(笑)

――たしかに、「本能寺の変の真実」と言われると、私も興味をつい惹かれてしまいます。

私たち学界にも、陰謀論が出回るようになった責任の一端はあると思っています。

そもそも「歴史的事実」が社会でイシューになるのは、近現代の事象が多いんです。南京大虐殺論争や従軍慰安婦問題は、その最たるものでしょう。それは未だに国際政治に影響をもたらす重要事項だからですね。それに比べると前近代の陰謀論については、歴史学者はあまり関心を寄せない。

では、なぜプロの研究者たちが学会で「本能寺の変」を取り上げないかというと、明智光秀が謀反を起こした理由を明確に語った信頼できる史料が存在しないからです。決定的な新史料が出てこない限り、光秀の動機は「わからない」し、まして黒幕・協力者がいたかどうかなんて、検討しようがない。史料が少ないので議論は既に出尽くしてしまい、研究のフロンティアがないんですね。

だから、歴史学のプロが「本能寺の変」について語ることがなかった。もちろん想像を交えれば、いくらでも話は作れますが、それはもう学問ではありませんからね。

しかし、日本史上屈指の英雄である信長がなぜ死ぬことになったのか光秀の後ろで糸を引いた黒幕はいるのか、いるとしたら誰なのか、というのは国民的な関心事なんですね。そこにプロと一般との間に、大きなギャップがあるんです。

ミステリーとして「何か裏があるんじゃないか? 真相を知りたい」という需要につけこんで、「みんな騙されているんです。これが本当の歴史なんですよ」と囁き、「みんなが知らないことを知っている私」と読み手を自己満足させるために、ビジネスとして絶えず燃料を投下する。

読者の欲求に応えるものを提供しているという意味において、ある種のポルノや、自己啓発本とも近い構図だと思っています。

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最終更新:6/13(水) 6:04
BuzzFeed Japan