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動くモフモフ、陸自の「偽装」技術 ペイントだけではない、戦場での身の隠しかた

6/13(水) 6:21配信

乗りものニュース

動くモフモフ、その正体は…?

「なんだあれは」――筆者の目前で、ススキの生えた大きな茂みが動いていました。

 ここは千葉県にある習志野演習場。毎年1月中旬に行われる陸上自衛隊第1空挺団の降下訓練始めでのできごとでした。訓練開始と共に現れたススキのかたまり。なんと1/2tトラック全周に偽装として、ススキを巻いていたのです。

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 この「偽装」とは、陸上自衛隊で一般的に行われる行為で、敵の監視の目から自分たちの姿を隠すことを目的に行われています。クルマに対してはもちろんのこと、人や武器などにも偽装を施します。周囲に溶け込むということは、その場の植生などに合わせた偽装材料を手に入れる必要があります。もしそこが牧場なら牧草を、お花畑なら、咲いている花を使う必要があるでしょう。

 こうした偽装材料は、1か所から多く収集してしまうと、その部分だけ不自然な状態になってしまいます。すると、あとから来た敵に「ここに部隊がいた」という情報を与えることになります。そういったことを避けるために、偽装材料を集める際には、極力広い範囲から少しずつ持ってくる必要があるのです。

準備に4時間、本番は30分

 実際の訓練では、クルマ全体を覆うような偽装は滅多にしないのですが、駐屯地一般開放日には、見た目のインパクトを狙ってか、冒頭のような偽装過多なクルマを見ることができます。一部のファンからは「モフモフ」などと呼ばれており、製作にはとんでもない時間が掛かっています。

 某駐屯地祭で取材したときに、この偽装の製作時間について聞いてみたところ、1両あたり4時間ほど掛かっているそうです。さすがに、これだけの草を集めるのは大仕事で、集めた草をクルマに巻きつけるのは更に大変なのだそうです。慣れればもっと早く作れるといいますが、それでも3時間以上はかかるとのことでした。それほど頑張って作っても、一般開放日の訓練展示は長くて30分ほどです。訓練展示終了後は、演習場の奥でひっそりとススキを取る作業が行われます。

 では実際のところはどうなのでしょうか。偽装は、手をかければかけるほど効果が高まるように思えるかもしれませんが、前述の「モフモフ」のようにあまりに大量の草などで覆ってしまうと、少しでも動いたら簡単にバレてしまいます。効果的という意味で現実的なラインとしては、クルマの輪郭を隠し、色の反射も抑えることができれば、敵に見つかる可能性は少なくなります。ただし、エンジンや排気の温度だけはごまかせないので、隠れている最中はエンジンを切っておく必要があります。専守防衛に専念する自衛隊の作戦行動からすると、動かず待ち伏せするのは得意です。

 それでも敵に見つかったとわかったらすぐに移動して、攻撃を避ける必要があります。そうしたときにも、あの巨大なモフモフが動いては、どこに行こうにも、どこに隠れようにもすぐに見つかってしまいます。そのため、あれだけのモフモフはイベント時のパフォーマンスと見ておいて間違いではないでしょう。

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