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ストレスの多い職場、「オレキシン」増? 仮眠などでコントロールを

6/13(水) 11:53配信

西日本新聞

【産業医が診る働き方改革】<5>

 「上司とトラブルがあった」「同僚と折り合いが悪い」…。そんなストレスから心身の不調を訴える社員が絶えないと、大手家電メーカーの専属産業医を務める後輩のA先生が、研究室にやってきました。

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 リフレッシュを勧めたり、上司との話し合いを促したりしてはいるが、対症療法に終わっているのではないか、と言います。ストレスを感じると、脳の中で何が起こっているのかを少しでも理解したいと、熱意にあふれていました。

 私は長年、生理学の研究に従事しています。ストレス研究はトピックスの一つ。早速、A先生は時間をつくっては私の研究室に足を運び、「オレキシン」という物質に着目して研究を始めました。

ストレスを感じる環境に置いたラット、オレキシン増加

 オレキシンは、脳の奥底にある視床下部の神経細胞で産生され、睡眠や食欲を制御します。例えば、オレキシンが増えると、食欲が増し、脳の覚醒状態が続きます。逆に、オレキシンが欠損すると、日中に過度の眠気と脱力発作を生じるナルコレプシーという睡眠障害を引き起こすことが分かっています。目がぱっちりする、血圧が上がるなど、生理学で「闘争か逃走」と呼ばれる生体反応にも大きく関与しているのです。

 A先生はラットでの動物実験で、狭い空間などストレスを感じる環境に置くと、オレキシンが増え、高血圧や過食・食欲低下などの反応を引き起こすストレスホルモンを分泌させることを突き止めました。この結果から、ストレスの多い職場で働く人の脳内でも、オレキシンが増えているのではないかと考えています。

 こうした成果を共有しようと、A先生は看護師や保健師、人事担当者、安全衛生委員会メンバーなどとの勉強会を始めました。ストレスについての理解を深めることで、より効果的な対策を目指しています。

 快適な労働環境を整えたり、仮眠を取ったりすることで、オレキシンをコントロールできるかもしれません。漠然とストレスに不安を抱く人も多いようですが、例えばオレキシンという物質のバランスを良くするには…と考えれば、対策が浮かんできませんか。

(上田陽一=産業医大教授)

西日本新聞社

最終更新:6/13(水) 11:53
西日本新聞