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在日コリアン、雪解けに願う未来

6/13(水) 17:04配信

カナロコ by 神奈川新聞

【時代の正体取材班=石橋 学】出掛ける直前までテレビ画面に見入っていた。「2人が固く握手をしていた。あれほどののしり合っていたのに」。在日コリアンが数多く暮らす川崎市川崎区の趙(チョウ)良葉(ヤンヨプ)さん(80)は米朝首脳の対面に破顔し、虚心に喜びを表現した。

 痛む膝を押して向かった市役所。地元選出の市議を前にヘイトスピーチ対策を訴えた。「国籍が違うというだけで差別される。罪のない孫やひ孫がその現実を知ったときの絶望を思うと、かわいそうすぎる」。3日にも「ウジ虫、ゴキブリ、日本から出て行け」と叫ぶヘイト集会が開かれたばかりだった。

 「いまさら出て行けと言われるくらいなら、死んでしまいたい」。憤怒にそんな言葉が口を突いたこともあった。物心がついた孫が街中で「ハルモニ!」と呼んでくれなくなったことに「あのひどいヘイトスピーチにどこかで触れ、自分の母方が朝鮮人であるということを否定的に受け止めてしまっているのではないか」と心を痛めてきた。

 母に抱かれ、生後6カ月で朝鮮半島から日本へ渡った。日本による植民地支配という歴史の荒波に苦難を強いられてきた。米ソ冷戦下の朝鮮戦争を経て、姉は帰国事業で嫁ぎ先の家族と北朝鮮へ渡り、音信が途絶えて久しい。日本社会にも南北分断の悲劇は刻まれていた。

 北朝鮮に対する日本政府の敵視政策に後押しされ、「朝鮮人をたたき出せ」というヘイトスピーチは、朝鮮半島情勢が揺れるたび勢いを増してきた。二重三重の錯誤の背景にのある米朝対立。その雪解けに願う未来がある。

 「国が動き、世界が動いている時代。今まさに仲良くしましょうと話し合っている。日本から、アジアから差別をなくしていけば、どれだけいいか」

 平和への一歩にまだ見ぬ安寧を重ねた。