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スポーツの価値を高めることが私の仕事/伊藤華英

6/13(水) 16:10配信

日刊スポーツ

私のライフワークになりつつある、事業を紹介したい。

現在、JOCが行なっているハローオリンピズム事業だ。その中のコンテンツで「オリンピックデーラン」地域の方たちとランニングをしたり、参加オリンピアンのトークショーを行なったりするものと、「オリンピック教室」がある。その他の事業もあるが今回はこの2つに絞って紹介したい。

2011年から始まった事業で、近代オリンピックの創始者ピエール・ド・クーベルタンは、人間本来の資質を高めるために、スポーツと文化と教育の側面を持つオリンピックの価値を広めることがふさわしいと、オリンピックムーブメントを広めて来たと言われている。そのため、JOCもこのムーブメント事業を推進している中でのコンテンツが「ハローオリンピズム事業」だ。

もうこれまでに何度、参加したかわからないが、10日に群馬県太田市で行われた「オリンピックデーラン」の際に改めて感じたことがある。

デーランの内容は、そのタイトルの通り、参加者とランニングをするものだ。子供たち、大人たち、さまざまな年齢層の方たちと一緒にランニングをする。2キロから4キロ弱の距離を思い思いに走る。ゆっくりでも速くてもいい。自分のペースで走りきる。

そんな中で感じたことは、やはりスポーツは会話を生むということだ。

「人生の醍醐味は人間関係の充実」もあると考える私にとっては、スポーツこそがコミュケーションを生むツールであると心から思う。

「スポーツは言語だ」。よくこの言葉を多くのスポーツ現場で聞く。

私自身も感じる観点だ。言葉が通じなくてもスポーツをするとなぜか会話が生まれる。人と人との間にケミストリーが生まれる。

私はこの瞬間がとても好きだ。

少し前まで知らなかった方たちと交流ができ、その人がなぜこのイベントに参加しているのかを聞くと、その裏には多くのドラマがあったりする。もちろんスポーツという場面なので、ほんのり汗をかいて清々しい気持ちになる。

私は、子供たちに負けないように頑張って走るので、汗だくだく。

一生懸命にこちらもやると、特に子供たちは思いっきり応えてくれる。いろんな質問もしてくる。これがとても面白いのだ。

「嫌いな食べ物は何?」

「何歳?」

「好きで大切にしている言葉とかあるの?」

絶対適当には答えない。でも、軽い感じで答えるようにしている。

子供たちとスポーツを通して触れ合うと、本当に未来を感じる。

「資源は人材だ」

心からそう思う。

また、「オリンピック教室」では、中学2年生を対象にオリンピックの歴史をベースにオリンピックのバリュー(価値)を伝える。

・卓越(excellence)

・友情(friendship)

・尊敬(respect)

このバリューをオリンピアンたちが、それぞれの経験を通して伝えていくものだ。

オリンピックは単なるスポーツの祭典ではない。身近なものでこのバリューは生活にも生きているのだと伝えるのだ。

中学2年生は真剣な姿勢でいつも授業を受けてくれる。最初は、ふざけて聞いていた生徒たちも、オリンピアンの全てを懸けて戦った話を聞いてふざける生徒はいない。

先日も、オリンピアンの方たちの一人一人の話を聞いていたら、司会をしている最中に涙が出そうだった。

それぞれの思いがあって、それぞれの形がある。

私は、アスリートが引退しても輝く未来でなければいけないと思った瞬間でもあるし、この価値を高めることが最重要だと思う。

そのためにやることは、多くある。

スポーツが広い概念を持つこと。

スポーツが社会のプラットホームになること。

いつも地方に行くと質問されることがある。

「地方の学校で東京2020のためにできることはなんですか?」

私は、今すぐできることは、子供たちがスポーツを好きでいることだと思う。

だから私は、多くの人とスポーツを通して触れ合うことができるイベントは必ず行くようにしている。

「スポーツで育ってきた。今度は何かを返して行く。」

そんなことを思いながら。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)

最終更新:6/13(水) 18:06
日刊スポーツ